【Side】一条 悟
……俺の前に現れたのは、母上を殺した張本人……一条 家嗣。
俺の大事な人の命を奪った男。
本来なら、怒りで我を忘れて、無謀にも襲いかかっていっただろう。
……けれど、だ。
「なんだ、存外おまえ、冷静じゃあねえか」
家嗣が不満そうにつぶやく。
多分やつには、俺を怒らせ、正常な判断を奪おうって魂胆があったんだろう。
「当然だ」
俺が自分勝手に突っ込んでしまったら、だいじな人たちを傷つけてしまう。
やつにここを突破されれば、次に狙われるのは、レイだ。
家嗣は白面と内通してる。
その白面が、レイを欲してる。ならば……家嗣の次の行動もわかっている。
俺を倒し、レイを奪う。
「俺はレイを守る」
「…………そうかい」
家嗣の手には何も獲物がない。
……だが、俺は知ってる。やつは異能が使えないだけの、強者であることを。
家嗣は一瞬で消える。
だが俺は結界でガードしない。やつは異能をすり抜けることができる。
その場でジャンプし、家嗣の攻撃を回避する。
そして、同じく素手でやつの後頭部を思い切り殴りつける。
ずがんっ! という激しい音とともに、家嗣が吹っ飛ぶ。
「チッ……!」
家嗣の表情から余裕が消える。
やつは、俺が異能を使ってガードすると、思っていたのだろう。
だが、俺はレイとともに過去と向き合った。
この男の強さを、知った。だから……俺はこいつ相手に侮る事はしない。
「全力で、お前の邪魔をする」
殺すのではなく、レイからこいつを遠ざける。それが、俺の役割。
「……ムカつくなぁ」
家嗣のほうが、怒っているのがわかる。
「ほんっと、おまえはムカつくよ! おまえも、おまえの母親もよぉ!」
家嗣は、一条の異能である、霊亀を引き継げなかった。それゆえに、家を継ぐことができなかったという。
……だから、霊亀をその身に宿す俺や、霊亀そのものである母上を、憎んでいるのだ。
ダンッ……! と強く地面を蹴り、家嗣が接近。
俺に向かって強烈な跳び蹴りを放ってくる。
俺は異能ではなく、体術で、やつの蹴りをさばく。
「せやぁ……!」
がら空きの後頭部に打撃を当てる。
家嗣はまたも吹っ飛んでいく。
大きな音を立てて、地面に激突する。
だが、俺はわかっている。やつがこれくらいじゃあ、倒れないと。
「起きろよ、家嗣。見せてやろう、貴様が捨てた一条の力を」




