信濃の国
濃い陰の気が、信濃のなかで発生してる。
さらに発生した気が、外に拡散していかない。
「四方を山で囲まれてる関係もあるようですね」
と、真紅郎さんが、眷属から得た情報を、私たちに共有する。
「山で囲われてると、陰の気は拡散しないんですか?」
「ええ。お盆を想像してみてください。中に水を入れると、底に貯まるでしょう?」
言われてみると、確かに……。
陰の気は貯まっていくか……。
その貯まった陰の気が山の怪に変化しているのか……。
「それにしても、この陰の気は異常だな。常人なら卒倒してるだろう……」
ちら、とサトル様が私を見やる。
「あたしは女だし、異能者として訓練してるから、ある程度の陰の気への耐性はあるけど……」
ちら、とひのわさんが私を見やる。
「私も常人ではありませぬゆえ……」
ちら、と真紅郎さんも私を見やる。
……三人の注目が、私に集まる。えとえと……。
「どうしたんですか……?」
「「「いや、うん……」」」
なんだか皆さん、私を凝視してるような……。
何かオカシナものを見る目で見てるような……。
「レイってまじ何者なのかしらね」
「俺も、れいたんが可愛いってことしかわからん」
「お嬢様は特別なのでしょう」
皆さんが不思議がってる。私も……自分が何者なのだろうって思うときが多々ある。
でも……私は一つ確かな答えを持っている。
多くを救うために、この多くの力を持って、生まれてきた女なのだと。
「まあれいたんの正体が何者だろうと関係ない」
サトル様が近づいてきて、チュッ……と頬にキスをする。
「れいたんはれいたん。俺の女だ」
「さとるん……」
ああ、駄目だ。つい……彼に寄りかかってしまいそうになる。
でも……今は駄目。
「いきましょう。山の神が、待ってます」
「そうだな」
私たちがうなずき合う。
「で、山の神ってどこにいるわけ? 信濃にいるって聞いたけども」
「幸子ちゃん、何か知ってる……?」
ぽんっ、と私の前にザシキワラシの幸子ちゃんが現れる。
「んも~。また幸子さんの出番ですか? うちはお助けあおだぬきじゃあないんですよ?」
って言いながらも、頼られてまんざらでもない様子の幸子ちゃん。
お助け青だぬきってなんだろう……。
「信濃の北部、北信って呼ばれる場所に、大きな廃寺ある。そこに山の神住んでるなり!」
何でも知ってる幸子ちゃん。やっぱり凄いなぁ。
「廃寺なんかに神がどうしてすんでるのよ?」
「なんか、居心地よいとか」
「ふぅん……寺とか神社ってパワースポット……神有地が多いものね。だから住んでるのかしら」
「多分ね。うちもレイの側、居心地良いし」
幸子ちゃんがスリスリと頬ずりしている。可愛い……。
って? え?
「どういうこと? 居心地良いって」
「れいはほら、歩く神有地みちたいなもんだからさ」
「歩く神有地!? どういうこと!?」
幸子ちゃんがにんまりと笑う。
すぅう……と消えてしまった。
「意味深なことだけ言って消えちゃいました……」
「あのおちびこそ、何者なのよ。レイと同じくらい謎なんですけど」
『ふふふ、しーくれっと、めいくす、あ、うーまんうーまん』




