【Side】タオ(饕餮《とうてつ》)
……我、名をタオという。
レイの体内妖魔の一匹だ。彼女の、異能殺しの力を担当している。
我の宿主は、とても純粋で優しい子だ。
我ら妖魔を、一個人として扱ってくれている。とても希有で……それでいて、愛らしい存在。
そんな彼女のことを、我は常日頃から、守ってあげたいと思っている。
彼女の役に立てることなら、何だってする所存である。
さて。
レイは今回、山の神を救出に向かっている。その道中、神霊のもとで修業を行った。
結果、彼女は神域を会得し、またそれに伴った【神格】の上昇も行われた。
神格。神としての、格付けのこと。等級、レベルのことだ。
レイの魂はすでに下級の神霊と同等となった。
レイは度々人間ではないと評されるが、そのとおり、そもそももう彼女は人間ではないのだ。
彼女の魂はすでに神に等しいところまで来ている。だから、魂より発露する霊力の量も増えているのだ。
……と。
なぜ、このちびすけは教えてやらないのだろうか……。
「めえ」
我は、友人たるちびすけ、もとい、幸子に話しかける。
彼女は今、レイに肩車して貰っていた。
「ん? なんだいマイフレンド」
「めええー……」
おまえはどうして、レイに必要な情報を与えぬのだ、と伝える。
「ふふふ、さぷらーいず」
……この阿呆は、あとで言って、レイを驚かせようと考えてるようだ。本当に阿呆だ。
「めえ」
それと、我はもう一つ、言っておきたいことがあった。
指輪のことだ。
「ゆびわ?」
井氷鹿からもらった指輪のことだ。
なに……自分の手柄みたいに言ってるのだ?
井氷鹿にレイのことを伝えたのは、我ではないか。
「はてな? そうだっけ?」
こいつ……。
レイのあふれ出る霊力を、我一人では抑えきれないと思った。
だから、我が幸子経由で、井氷鹿に現状を伝えたのだ。
「でもメッセンジャーは、うち」
それは……まあそうなのだが。
「うちの手柄。総取り」
「めえ……」
めえしか言えない……。くそっ。
こやつめ。レイに褒めて欲しくって、都合の良いところしか伝えてないっ。
「めえ!」
我だってレイに感謝されたいのだ。
「ほほほ、悔しかったらめえ以外も言ってごらん?」
我はムカついたので、空間にあなをを開ける。
ひゅごおぉおおお! と、幸子が穴に吸い込まれていく。
「ぬわぁあああああああああああああああ」
幸子が穴のふちで踏ん張って、吸い込まれないようにしてる。
「ごめんて、まじで、ごめんって。あやまるから」
「めえ……」
まったく……。
ぱっ、と我は異能を解くと、穴が消える。
我の毛皮の上に、幸子が乗ってくる。
「ちょっとした冗句じゃん。いっつあじょーく。おこっちゃやーよん」
……まったく、調子の良い妖魔だ……。
こんなのが、レイの前世だなんて信じられん……。




