山の上の戦い 3
ひのわさんが、虫怪を滅した。
……意志のないとはいえ、彼らもまたこの世界に生きる生命のひとつ。
私たちが生きるために、傷つけてしまって、ごめんなさい。
「れいたんは、優しいな」
側に立っているサトル様が、私を抱きしめ、頭を撫でてくださる。
「俺にはないよ、その気持ち。まだ……俺は母上以外の妖魔は敵だと思ってる」
「存じております。人はひとりひとり、違うのですから」
「ああ、れいたん……おまえは本当に、賢くて素敵な女性だ……」
「……ひのわさんが戦ってるのに、おふざけはおやめくださいまし」
「は、はい……」
サトル様も悪気があったわけじゃあないとは、承知してる。
いちゃつくのは、この状況を打破してから、いくらでもできる。
『妙や。妖魔の気配がまだするわ』
日車さんが周囲を見渡す。
目で見える範囲には、虫怪の姿は見えなかった。
私も妖魔の気配を探ってみる。
「! 下です! 地中に虫怪の気配です!」
ばっ、とひのわさんが飛び上がる。
サトル様は私をお姫様抱っこしてジャンプ。
残されたのは、真紅郎さんだけ。
「真紅郎さんっ! 逃げて!」
「大丈夫ですよ、お嬢様」
真紅郎さんは微笑みながら、右手の指の腹を、自分の爪で切る。
ぽた……ぽた……と血が地面にしたたり落ちる。
「いったい真紅郎さんは何を……?」
「異能を使ってるんだ」
サトル様は真紅郎さんの力を知ってるらしい。
ずずずっ、と地面が盛り上がる。
地面の穴から虫怪達が這い出る。
が、出た瞬間……。
ザシュッ……! と、地面から何かが飛び出して、虫怪を串刺しにする。
……虫怪を際してるのは、真紅の槍。しかしよく見ると、その槍は血でできていた。
「真紅郎の異能は血液操作。やつは自分の血液を自在に操る。血液を硬質化し、槍に変換して、串刺しも可能なのだ」
なるほど……。さっき血を滴らせてたのは、罠を張っていたわけなんだ。
湧き出る虫怪たちは、その瞬間に、血の槍に貫かれて滅されていく。
かなり大規模な異能だ。というか、あの量の血を体内から失ったら、普通に失血死しちゃうんじゃ……。
「ご心配なく、お嬢様。私は己の血液に、霊力をながすことで、血液量を増やすことができるのです」
あ、なるほど……。
だから自分の血液は、少量ですむんだ。すごい異能だ……。
それに真紅郎さんは、通常の異能でこれだけ強い。
まだ真名を使ってないし、霊源解放も使っていない。
さらに、強い異能を彼は使えるということ……。
「真紅郎さんって、凄い強いおかたなんですか?」
「ああ。俺たち一条家の黒服のなかで、トップの実力者だからな」




