霊道の中 6
ひのわさんの異能で、貉は滅せられた。
……説得、できなかったな。
「…………」
妖魔も、人も、同じ生き物。
話せば理解し合える……って思っていた。
けれど、貉とは話が通じなかった。
……私の力不足だ。
「れいたん、君が気に病む必要は無いよ」
「さとるん……」
サトル様が近づいてきて、抱きしめてくださる。
沈んでいた気持ちも、彼が抱きしめてくださることで、少し……マシになる。
「人間だって、全員と友達になれる訳じゃあないだろう? 良い奴もいれば、悪い奴もいる」
「そーよ。良い妖魔と、悪い妖魔もいる。どうやったってわかり合えない奴もいて、当然なのよ」
サトル様とひのわさんがうなずく。
……そのとおりだ。
皆が優しいわけじゃあない。
現に、無能の烙印を押し、海の外へ追いやった人たちがいるではないか。
色んな人たちがいて、当たり前なんだ。私の意見を聞いてくれる人、聞いてくれ無い人。
たくさんの人たちがこの世界には生きている。
その全員を、説得できると思うほうが……間違いだ。傲慢も、良いところだった。
「ありがとうございます、ひのわさん、さとるん」
間違った方へ進もうとしていた。
ふたりは、それをただしてくれたんだ。
「私……これからも、妖魔に歩み寄ってみます。それでも、駄目な場合は……」
ぎゅっ、と拳を握りしめる。
「【霊亀】!」
私は霊亀の結界で、サトル様たちを覆い尽くす。
瞬間、周りから、数え切れないほどの貉が降り注いできた。
「二の命か!」
強い妖魔は、二つの命を持っている。
先ほど、ひのわさんが倒したのは、一の命。
「数が多いわ……! どうしよう……」
「大丈夫です。【日車】さん!」
私は日車さんに霊力を注ぎ込む。
日車さんの体から、大量の黒色火薬が吹き出す。
それは無数の触手となって、貉の体を縛り付ける。
「滅してください」
ずががががあああん!
貉たちが一斉に大爆発を起こす。
結界内にいる私たちは無事だ。
『相変わらず……異能を扱う才能はピカイチやな……レイちゃんは』
「異能を同時に二つ使うなんて、人間業じゃあないわよ……まあ、そもそも異能は一人一つだけどさ」
今回は、しょうがなかった。貉は、話が通じる相手ではなかったのだ。
滅しないと、私のだいじな人たちに被害が出るところだった。
話し合いを試みて、それでも、駄目な場合は……戦うしかない。
これからも、私はそうしていこう。
「進みましょう」
「そうだな」
私たちは霊道を進むのだった。




