霊道の中 5
貉に霊力を流し込んだ。
飢えた獣のように、唸り声をあげていた貉が、落ち着いてくれた。
残りの貉たちにも霊力を分けてあげた。
『ぐる……何が目的だ』
貉たちは、私たちに警戒心を抱いているようだ。
私たち、というか、私にか。
異能者は妖魔を霊力で滅するもの。
そんな中、自分たちに霊力を分けてきた、イレギュラーが、目の前にいるのだから。
目的……か。
「できることなら、私は妖魔を無差別に滅したくないんです」
ここ最近、私は妖魔との付き合い方を考えている。
極東のひとたちは、妖魔イコール悪と断定し、滅する。
けれど、私にとって妖魔は、人間と同じだ。
この世界に生きる隣人だと思っている。
『みょうなやつだ』『あやしいやつだ』
貉は普通に警戒していた。それは、仕方のないことだ。
『命助けてもろて、そんな言い方は酷いんとちゃうか?』
日車さんが貉たちを睨みつける。
『レイちゃんは、やろうと思えばおまえらなんて一撃で滅することができたんやで?』
日車さん……私を庇ってくれている。
優しい……
『だからどうした』『にんげんはてきだ』『おれらはおまえらをゆるさない!』
貉たちが光だすと、合体して、巨大化してきた。
そして巨大な前足でこちらに攻撃してくる。
がきぃん!
鵺でコピーした、霊亀の異能で、攻撃を防ぐ。
「どうして、人間イコール敵だと思ってしまうんですか? どうして、そこで思考停止してしまうんですか?」
『うるさい!』『にんげん、おれらをてきっていった!』『なかまおおぜいめっした!』『ゆるせねえ!』
……貉からは、人間に対する強い憎しみの感情が放出されている。
ぐぐぐ、と貉のパワーがます。感情の昂りが、彼らを強くしてるのだ。
「レイ。やるわよ」
ひのわさんは、貉たちを滅してしまうようだ。
「待ってください、もう少し対話を」
「お嬢様」
真紅郎さんが静かに首を振る。
「対話は無駄です。彼らは心から人間を恨んでいます。これ以上放置すると、さらに貉は強くなってしまいます」
自分たちの、人間を恨む心があるかぎり、妖魔は強くなり続ける。
「れいたん、きみの志は立派だ。でも、どうか、守りたいものを見失うわないでほしい」
守りたいもの。
私にとっては、やっぱり、身近な人たちになる。
妖魔よりも……
「『日車』」
ひのわさんの右手の上に、日車さんが乗っかる。
私は、止めなかった。悔しかった。
日車さんは自分の体から大量の黒色火薬を吹き出し、それを操作。
貉の体に巻きつけて、大爆発を起こす。
どごおぉおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!




