霊道の中 1
蛟さまの元で修行を終えた私たち。
いよいよ、霊道を通って、山の神のもとへ向かう。
霊道。上位存在たちが通れる、特別な道。
蛟さまが目の前の空間に、大きな穴を開けてくれる。
「こっから入るだに」
「これ大丈夫なの……? 入っても」
ひのわさんが若干引いていた。
何も無い真っ暗な闇が、穴の向こうに広がっている。
「大丈夫だに。死ぬけど」
「なんてとこ入らそうとしてるのよぉお!」
ひのわさんが日車さんの異能を使おうとしてる。
私はどうどう、と彼女を抑える。
「気の早い嬢ちゃんだに。生身で入ったら死ぬってだけだに」
んが、と蛟さまが口を大きくあける。
ぽぁ……とそこから大きなシャボン玉が出てきた。
シャボン玉がひのわさんを包み込む。
「なにこれ……?」
「おらの張った水の結界だに。それがあれば、霊道に入っても死ぬことはない」
蛟さまが全員に、シャボン玉の結界を付与していく。
「さて……」
「あの……私には……?」
私以外全員、結界で包まれている。
「あー、大丈夫、レイちゃんは大丈夫だから」
「どういうことですか……?」
「レイちゃんはレイちゃんだから、大丈夫」
い、意味がわからない……!
「まあレイだものね」「お嬢様ですから」
ひのわさんと真紅郎さんが納得したようにうなずいてる。ええー……私ぜんぜん納得できないんですけど……。
「安心しろ、れいたん」
サトル様が微笑みながら私の肩に優しく手を載せる。
自分がいるから大丈夫……って言いたいのかな。
サトル様本当に頼りになる……素敵……。
「れいたんは人間離れしてるから、大丈夫」
「さとるんまでっ。も~!」
どうやらサトル様に揶揄われたようだ。
この人って本当に、好きな子に意地悪するんだからっ。
私じゃあなかったら今頃大変ですよっ。
私はわかってるからいいですけどっ。
「冗談はさておき。レイちゃんは例外的に、生身で霊道に入っても死なないだに。けど、他の人たちは普通に危ないので、気をつけるだに」
「気をつけるって何によ」
「結界から出ないよにってことだに」
「出るわけ無いじゃん。死んじゃうんでしょ?」
ひのわさんが不思議そうに首をかしげる。
一方で、私はなんとなく、蛟さまの言いたいことを理解できた。
「霊道内で襲撃に遭う可能性も、あるのですね」
「そーゆーことだに。上位存在なら誰でも霊道入れるからね」
……山の怪が霊道に入って、私たちに攻撃してくる危険性もあるってことだ。
「途中で霊道から脱出することってできないの?」
「できるだに。ただ、そうなるとどこに飛ばされるかわからなくなるから、できれば目的地に着くまでは、霊力の流れから外れないようにしてほしいだに」
霊道の中は川みたいに、霊力が出口へと流れているそうだ。
「んじゃ、皆。気をつけてなぁ~」
私たちは蛟様に頭を下げる。
色々と良くしてくれた、とても親切な神霊さまだった。
用事を終えたら、ちゃんとお礼をしにいきたいなと、思った。




