力の飛躍 5
「うわわーん、おらの神域が~」
蛟さまがおいおいと涙を流していらっしゃる。
私のせいで、蛟さまの住処である、迷い家(神域)を壊してしまったのだ。
「ぼくたち、いえなきこ?」「かわいいうえにふびんとか」「さいきょうでは?」
小毬カッパたちも、しゅん……としょぼくれている。
皆さんの住む家、すぐに、直してあげないと。
「私がすぐに直してみせます!」
「それは無理だに……」
しおしおになった蛟さんが首を横に振る。
「神域をゼロから構築するのは、とんでもない霊力が必要だに……。神霊のおらでさえ、作るのには1ヶ月はかかる」
小毬カッパさんたちも、主と一緒にしょぼんと肩を落とす。
するとサトル様が「大丈夫です」と堂々とおっしゃる。
「レイならできます」
……はっきりと、そう言ってくださった。私のことを信頼してくれてるのがわかる。
「そりゃ確かにレイは特別だけど……神域って神でも構築に1ヶ月かかるんでしょ?」
とひのわさんがサトル様に尋ねる。
「問題ない。俺のレイは、霊力量なら誰にも負けない。そうだろう?」
「はい、できます。やれます!」
見栄を張ってるのでは無い。できる、という強固な確信が私の中にはある。
サトル様が私を信頼してくれたことで、より強く……できると思えるようになったのだ。
異能は思いの力。
感情の高ぶりが、異能を強くする。
サトル様に信頼して貰った私は、今、とても心が高揚しているのだ。
「【鵺】さん」
私の隣に、和服美人が現れる。
「鵺の、霊源解放だとぉお!?」
鵺である、つぐみさんの出現に、蛟さまがとても驚いていた。
体内妖魔を顕現するのはかなりの高等テクであるらしい。
でも……ひのわさんの霊廟の中で修業した結果、私はコツを掴んでいた。
「つぐみさん。お力をかしてください」
「いいわよぉ~♡」
鵺には、食べた異能を模倣する力がある。
その鵺さんの、真名を使うとどうなるか……。
「「神域展開!」」
私の霊力が、つぐみさんを経由し、アウトプットされる。
まばゆい光が当たりを包み込む。
バサササッ……! と森の鳥たちが慌てて逃げていく。
「いや……これは鳥では無い。山の怪たちだ!」
サトル様が霊力感知をしたのか、そう声を張り上げる。
「なんという凄まじい霊力出力だに!」
蛟さまがその場にへたり込んでしまう。小毬カッパたちが震え、蛟さまにしがみついてる。
それほどまでの霊力の放出が、しかし唐突に止む。
目の前に現れたのは、迷い家だ。
しかも……私たちが最初に見た、古風な平屋ではない。
「うぉおお! でっけえー!」
蛟さまが、新しくなった迷い家を見て叫ぶ。
極東風だった家屋は、西の大陸風になっていた。
ゲータ・ニィガではよく見る、大きなお城へと変貌を遂げていたのである。
「西出身のれいちゃんが作ったからこーなったのねぇ……」
つぐみさんもまた、新しく立てられた迷い家に驚いてる様子だ。
「えと……すみません、勝手に見た目かえちゃって」
「いいんだに! こんな立派でおっきい家にしてくれて、ありがとう、レイ!」
蛟さまが私の手をぎゅっ、と握る。
「お気に召していただけたでしょうか?」
「うん! 完璧だに! ありがとぉ~!」
ホッ……良かった。家を直すことができて。
「…………」
「あれ? ひのわさん、どうしたんですか?」
ひのわさんは三角座りして、しょぼくれていた。
「あたし、ちょっと強くなったと思ったのに……。レイに、こんな差を付けられちゃった……へへっ」
『あほぉ!』
ふにゅんっ、と日車さんがひのわさんの頬に、猫パンチを食らわせる。
『なにへこたれとんねん!』
「でも……」
『レイちゃんは正直規格外や! こんな化け物と比べたらあかんで!』
ば、化け物……?
そんなにだろうか……。
『ひのわは普通に凄いんや! 自信持つんや!』
「日車ぁ~」
ひのわさんが日車さんを抱きしめる。良かった……仲、深まったみたい。
「さすがですな、レイ」
「幸子ちゃん」
つぐみさんに抱っこされながら、幸子ちゃんが言う。
「複数の問題を、いっぺんに解決してしまった。すごい」
「ありがとう。でも、すごいのはつぐみさんの異能だよ? まさか神域まで模倣しちゃうなんて」
「前から思ってたけど、こやつ……かみにーさまと一緒や!」




