力の飛躍 3
変化妖怪。
相手を食らうことで体の情報を得て、変化する魔物。
目の前に居るのが、西の大陸に生息する変化妖怪と同じなら、こいつはサトル様を食ったということになる。
……絶望するのは早い。まずはこいつの中に、サトル様がいるかどうかを調べるんだ。
「【百目】」
五華族が一人、四月一日 百春さまから模倣した異能、百目の異能を使う。
鑑定スキルと同等の力を用いて、変化妖怪を見やる。
……ああ、良かった。こいつの中にサトル様はいない。
「おれを殺すと、お、おれの中の大切な男が死んで……」
ぼっ……!
「ひいぃ! 腕がぁあああああああああああああ!」
変化妖怪の腕が消し飛ぶ。
饕餮の異能を用いて、腕を食らったのだ。
「れ、霊源解放!? だと!?」
私の隣には、タオさんが顕現してる。
体内妖魔を顕現することを、霊源解放というんだっけ。
どうしてタオさんが顕現してるんだろう。
タオさんがつぶやく。
『哀れな妖魔よ。貴様は竜の逆鱗にふれたのだ』
ああ、そうか。
これは、怒りだ。この体からほとばしる、激しい感情の正体。
怒りの強い感情が、タオさんに流れているのがわかる。
『レイ殿。貴女は優しいお人だ。しかし陰の気を司る女性にとって、その優しさは己の力をセーブしてしまう』
……私、力をセーブしていたの?
『そうだ。貴女の力の本質は、陰の気。怒り、悲しみ。それらが、貴女の力をさらに飛躍させる』
サトル様を侮辱されたことに対する、激しい怒りが、霊源解放させたのだ。
でもそうだ。
水虎がサトル様を襲ったときも、私は体内妖魔を顕現させていた。
……激しい感情の高ぶりに呼応して、異能は強くなる。
『な、なんだ……!? あの女の霊力が、跳ね上がった!?』
変化妖怪がその場にへたり込んでしまっている。
私は知らず、右手を前に出す。
『れ、霊剣だと!?』
私の手には、自分の霊廟である、霊剣が握られていた。
前はサトル様にキスして貰わないと、取り出せなかった。
……今ならわかる。どうして、キスしたら霊剣を取り出せたのか。
愛する人にキスして貰った時に感じた、喜びの感情。
強い心の高ぶりに反応して、霊廟武装が顕現したのだ。
ならこれ以上に強い、感情の高ぶりを見せれば……。
キィイイイイイイイイイイイイイイン!
『お、女の持ってる霊剣の刃が、振動しだした!?』
刃にヒビが入る。そして、砕け散る。
私は知らず口を開いていた。
「神域展開」




