【Side】日車
わいは火車の日車。
五十嵐ひのわの体内妖魔や。
今までひのわは、わいの声に耳を傾けることを一切せんかった。
勝手に力を使うて、勝手に強くなっていきよった。わいは……めっちゃムカついた!
ひのわの力は、こんなもんやあらへんで!
ってことに。
別にな、ええねん。わいを無視しても。そこはええねん。
いっちゃんいやなのは、わいのひのわが、他人から低く評価されることや。
ひのわは、ハッキリゆうて天才や。
わいの真名を知らんのに、それで極東五華族トップを張れてるんや。
元々、異能者は女のほうが強いんや。
なんでかって、どちらも陰の気を持つからな。せやから、男の異能者より、本来なら女の異能者のほうが強いねん。
ひのわもな、女やから、より強い異能が使える。せやけど……!
わいの力をまっっったくといっていいほど、使いこなせとらん!
わいにとって、ひのわは……まあ、本人には絶対言わんけど、絶対言いたないけど、可愛い娘みたいなもんなんや。
ちっこいころから、わいはひのわのことを見てきた。
あの子は辛い過去を背負いながらも、頑張っとった。
性別を偽り、好きな子ぉへの思いをひた隠しにしながら、がんばっとった。そんないじらしいすがたに、わいは感動したんや。
力、貸したいって、ずぅっとずぅっとおもっとったんや。
なのに!
あのバカ娘、わいに力を借りるっていう発想がそもそもなかったようや。
まあ、しゃーない。
極東人たちは、体内妖魔を道具としかみてへんからな。
極東の生まれである、ひのわもそういう思想を持ってても、仕方あらへんのはわかる。わかるけど……むっちゃむかつくんや!
わいがどんだけ、ずっとずっと、おまえのために、何かしてやりたいっておもっとったか!
おまえは知らんやろうな。ったく、むかつくわ。
そんなとき、あの嬢ちゃん……レイちゃんがやってきた。
レイちゃんは、不思議な子ぉやった。
まあ体内に三匹妖魔入れてる時点で、ばけもんやけどな。
でも……不思議なんは、あの子が、あんだけの力を持ちながらも、いっさいおごり高ぶってないところや。
普通、強い力をもってたら、周りからちやほやされるもんや。で、性格がひねくれる。それが普通や。
せやけど、あの子は違う。強い力をもっとんのに、とっても謙虚で良い子や。
幸子が喜んで、力を貸すのもうなずけるわ。
それに……妖魔を一個人とみてくれとった。
極東人にはない考え方を、あの子はもっとった。
強い力と優しい心。その二つを持った、女異能者なんて、わいは初めてみたわ。
(守美はんも確かに近い存在や。でもあの人の場合は本人が前世妖魔やったしな)
せやけどな、うちのひのわも負けてへんで。これであの子はわいの真名を知った。
こっからや。
ひのわ。おまえも十分強くなれるで。おまえには才能があるんやからな。
わいが保証するで。……まあ、あれや。それを本人には絶対言えへんけどな。
だ、だってそんなこと言ったらはずいやん?
ああ、違う! 違う! うぉっほん。
わいは、強い力をもったせいで、破滅したやつらをぎょーさんみてきたんや。
せやから、ひのわにも、そんなふうに増長し、自らの輝かしい可能性の芽をつぶさんでほしいんや。
せやから、調子のらないでほしいんや。
レイちゃんのように、強く美しい、謙虚な子ぉになってほしいんや。




