強くなるための訓練 5
ひのわさんの体内妖魔の名前が、日車さんと判明した。
「日車……それがあんたの真名ってこと?」
『せやで。正真正銘、わいの真名や』
真名とは、妖魔個人の持つ名前のことだ。
真名を使うことで、より強い異能が使えるようなる。
私は、ひのわさんが真名を知って強くなったこともうれしい。けど、それ以上に……。
「よかったですねっ。仲良くなれてっ」
「『はぁ? 仲良くなった?』」
二人が本気で驚いてる様子だった。あ、あれ……? 違うのかな……。
『嬢ちゃん勘違いさせて申し訳あらへんが……。わい、この女のこと、あんますきちゃうわ』
ええっ? 大好きだからおしえたんじゃあないの……?
「あたしだって、別に好きじゃあないわよ、こんなやつ」
『こんなやつってなんや! 失礼やろが!』
しゃー! と日車さんが牙をむく。
「あんたうるさいよ。きゃんきゃんと。耳に障るんですけど?」
『はぁあああん? きゃんきゃんってなんやねん。犬ちゃうぞ!?』
「わかってるわよ、猫よね?」
『火車や! みりゃわかるやろ!』
「あたしからすれば野良猫と大差ないわよ見た目」
『ちゃうわ! あんなんと一緒にすな!』
二人がケンカしてるのを見て……私は知らず、笑ってしまう。
「ほら、仲良しじゃあないですか」
「『仲良く(う)ない……! 断じて!』」
ふふふ、そんなこと言って、息ぴったりだ。
『わいは嬢ちゃんみたいな、お淑やかで別嬪な女の子が宿主であってほしかったわ~』
「あたしだって、レイみたいに優しい子が体内妖魔だったらな~って思ってるわよ」
ひのわさんが私に抱きついてくる。
日車さんが肩に乗っかってきて、すりすりと頬ずりしてくる。
二人ともから褒められてしまった。え、えへへ……。
「レイ」
「どうしました、ひのわさん?」
ひのわさんが顔を赤らめながら、ぷいっとそっぽ向き言う。
「あんがとね。あんたのおかげで、強くなれた」
「ひのわさん……。気にしないでください。私は、自分の心に従って、行動したまでです」
私に優しくしてくれた、ひのわさんに、同じことをしたい。
そうしたいと、私がそう思ったから、そのとおり行動したまでである。
「レイ……その、あのね、お願いが……あるの」
「お願い? なんでしょう」
もじもじ、とひのわさんが身をよじる。どうしたんだろう……。
『はよ言えや、きしょいわ』
「うるさいわね! クソ猫!」
『嬢ちゃんごめんなー。うちのキショい宿主さまは、あんたと不遜にも友達になりたいらしいねん』
「友達……」
私と、友達に……?
「あ、あんたが迷惑じゃあなければ……」
「迷惑なんてトンデモナイです!」
私はひのわさんの手を握る。
「是非っ、友達になってください!」
「もう、こっちが頼んでるのに……」
ああ、友達。また一人お友達が増えたっ。
「おめっとさん、レイ」
幸子ちゃんがぱちぱち、と手を叩いて、祝福してくれる。それが嬉しくて、笑ってしまうのだった。




