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異能の修行 4


 ひのわ様は幸子ちゃんと修行中。

 一方で、私は……神域を、どうやって作るか考え中。


「「駄目だ……」」


 ひのわ様と同じセリフを、同じタイミングで吐いてしまう。

 ひのわ様も上手く行ってないようすだ。


 地面にへたり込んでぐったりしてる。

 疲れていそう。いやしてあげたいな。


 私は立ち上がって、彼女のもとへ向かう。呪禁じゅごんを使い、体力を回復させる。

「あんがとね」

「いえいえ」


 呪禁じゅごんは、上手くいくのに……。

 神域については、本当に上手く行かない……。

 どうしてこうなんだろう、私って駄目な子……。


「レイ」

「あ、はい。なんでしょう?」

「そんな暗い顔しなくていいのよ? できないのが当然なんだから」

「………………」


 いったい……何を、ひのわ様はおっしゃってるんだろう。

 できないが、当然……?


「できないことは、駄目なことですよね……?」


 ……私は実家で散々言われ続けてきた。

 何でこんなこともできないんだ。

 お前は駄目な奴だなと。


「そんなことないでしょ」


 ひのわ様は先に立ち上がり、手を差し伸べてくる。


「あたしはできないことが、悪いことなんて思わない。できないことが、当然……一般的なんだ、って思う」

「!」


 できないことが、当たり前?

 一般的……。


「そんな……でも……」

 

 ひのわ様が私の手を掴んで、引っ張り上げてくださる。


「できないことを、否定したら、余計辛くなるだけでしょ。だったら、できないことは一般的なんだ。だからできなくったって当然なんだ、って肯定してあげる」

「…………」


「その方が、辛くない。でしょ?」

「……………………ええ」


 自己否定をするたびに、私はツラい気持ちになっていた。

 人から否定されて、自分でも否定されて……。


 生きるのが、どんどん辛くなっていった。

 

「レイは、アレね。できないこと=駄目なことって言われ続けてきたのね」

「ど、どうしてそれを……?」


 ひのわ様が苦笑する。


「あたしもそうだったから。五十嵐家は、強さこそ正義。強くないと駄目。弱いお前は駄目だってさ」


「……わ、私の……私の家も、そうです。魔力の無いおまえは、駄目だって」


 それで自分で、自分を駄目な奴だって決めつけていた。でも……。


「あたしは駄目な奴って言われて、むかついたわ。だから、誰より強くなってやる! ってね」

「……すごい」


 ひのわ様は、私と同じ境遇にいたはずだ。

 でも……私は自分を弱い奴だと、駄目な奴だと決めつけて、いつまでも落ち込んだままだった。


 サトル様に手を差し伸べてもらうまで、自分の足で、立つことができなかった。

 けれど、ひのわ様は……違う。自分で自分を慰めて、立ち上がり、辛い現実に立ち向かう強さがある。


「ひのわ様は……お強いです」

「あんたも強いわよ」

「いえ……私は……ひのわ様ほど……強くないです。私なんか……」


 ぶにっ、と。

 誰かが、私のほっぺたをつねる。


「さちこひゃん……?」


 右肩に載った幸子ちゃんが、私のほっぺをひっぱっているのだ。


「その、【私なんか】っていうの、やめない……?」

「そーよ。そのおちびの言うとおりよ」


 ぷに、とひのわ様が逆側のほっぺをつまむ。

「レイは十分凄いわ。神域の展開なんて、それもう人間ができる技じゃあない。あんたは困難に立ち向かってる。勇気のある、強い娘よ」

「そう、だから、レイは……自分を否定しちゃあ、だめ」


 二人が、私を慰めてくださる。 

 なんて、優しい人たち……。


「幸子ちゃん、ひのわ様、ありがとう……」


 すると、ひのわ様が手を離して、そっぽ向く。


「あ、あのさ……。様、つけるの、やめてよ」

「え?」

「そのおちびには、ちゃん付けするんだから。あたしもその……様は、やめてよ」

「ひのわ……さん」


 ひのわさんがニッと笑う。


「それでいいのよっ。レイ」


 少し、肩の力が抜けた。駄目でも、いいんだ。駄目なことは、悪いことじゃあない。


 心が少し、楽になった。これなら、何回だって、挑める。

 そう、私は何度も失敗してるんじゃあない。私は困難に立ち向かってるんだ。

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