異能の訓練 1
翌朝。
「そんなことあったのね……」
客間にて、私たちは朝食を食べている。
ひのわさまは昨日ぐっすり眠ってしまっていたのだ。
「ごめん、皆が大変なときに、ぐーすか寝てて……」
「いえ、呼び出されたのは私だけでしたので」
この場には私、サトル様、真紅郎さん、ひのわさまがそろってる。
蛟さまは居ない。
「で、蛟はどこにいるの?」
「ごしゅじんさまは、いつも昼までねてましゅ」
小毬カッパが近づいて言う。
朝から美味しい食事をだしていただいてる。
鮭に、白米。そして味噌汁に香の物。その他、おかず。どれもシンプルながら、とても美味しそうだ。
「昼まで寝てるって……とんだ寝坊助ね」
「ごしゅじんさまを悪く言わないでほしいでしゅ」
「……もしかして、夜、妖魔が来るのを防いでてくれたとか……?」
……そういえば、この屋敷に来てから、妖魔の襲撃は無かった。
もしかして神霊である彼が、守ってくれてたとか……。
「いえ、毎日おひるまでぐーすかねてましゅ」
「やっぱり単なる寝坊じゃあないのよ!」
「こわいでしゅ~。レイしゃま~」
小毬カッパが私に近づいてきて、ぎゅっ、としがみついてくる。
なんとも愛らしい。
「大丈夫ですよ、ひのわさまは怖い方ではないので」
「でもぼくらをにらみつけてきたでしゅ。もしや、あれはぼくらの可愛さを妬んでんでしゅ?」
びきっ、とひのわ様が切れかけていた。
「ま、まあまあ……」
「すみませんねっ。可愛くなくて!」
「ひのわ様は可愛らしいですよ」
辛くても、一生懸命に仕事をしてるところとか。
「そ、そぉ~……♡」
でへへ、とひのわ様が照れたように頭をかく。
「ああ。ひのわは可愛いな」
「……………………あっそ」
なんだか、サトル様に褒められてもぶすーっとしてしまっていた。
「どうしてそんな機嫌が悪いんだ?」
「別に。ただ……そんなこというなら、レイがいうまえに言えっつーの……ったく……」
多分機嫌が悪いわけではないと思う。
異能の尻尾が出てきて、ぶんぶんと左右に嬉しそうに振るっているから。
「なに?」
「いえ……可愛いなと」
食事を取り終えた後、サトル様が言う。
「これよりいよいよ信濃入りだ。妖魔がこれまで以上に強くなる。気を引き締めていこう」
山の怪は通常の妖魔よりも強いと聞く。
昨日戦った妖魔も、普通に強かった。あんなのがこれからも出てくるのか……。
気を引き締めないと。
「ろーほーでしゅ~」
小毬カッパが手を上げる。
「ろーほー?」
「ごしゅじんさまが、山の神の居場所への秘密ルート、使わせてもらえるようになったでしゅ~」
「秘密ルートっ?」
そんなモノが存在するの……?
「もしや、霊道ですか?」
「れいどう?」
真紅郎さんがうなずいて言う。
「文字通り、霊の通り道です。高位の霊のみが使うのを許された道です」
「そんな……。本当に使ってもよろしいのですか?」
高位の霊でもなんでもないんだけども、私たち。
「ご主人様いいっていってました」
「なんと……ありがとうございます」
「ただ……」
びしっ、と小毬カッパがひのわ様を指さす。
「おまえ、駄目」
「はぁ!? なんでよ!?」
「ひぃ……。こわいでしゅぅう~……」
小毬カッパが半泣きで、私にしがみついてきた。よしよし。
「どうしてひのわ様は駄目なんですか?」
「雑魚だから」
雑魚……?
「は? 五華族が一つ、五十嵐家の当主に向かって……雑魚ですってぇ……?」
本気で、ひのわ様がぶち切れてるのがわかった。
一方で、小毬カッパがいう。
「おまえ、よわすぎ。この先いっても、やられるだけ。そっちの眼鏡も」
真紅郎さんのことも言ってるのだろう……。
「どうしても、ついてきたいなら、つよくなってだって」
「強くなるって……どうやってよ?」
すると小毬カッパが可愛らしく首をかしげる。
「さぁ?」




