【Side】蛟《みずち》
……おらは蛟。この迷い家の主である、水の神霊だに。
今日、わが迷い家に珍客が来た。しかも、連続して。
一人は、武良という妖魔画家の男だに。
長く絵描きをしてて、色んな妖魔を書いてるって言っていた。
おらのことも書きたいと言ってたので、許してやったんだに。
そして、もう一組やってきた。
一条家の坊と、その花嫁、そしてその付き人たち。
そいつらはどうやら、山の神を助けに、信濃へ行くという。
おらも、信濃が危機的状況なのは承知してる。
お隣だからな。
でも……それは仕方ないことだに。形あるモノはいずれ滅びる。それが自然の摂理。
自然の、あるべき姿だに。
……そう思っていた。けれど、今日、配下として雇っている小毬カッパが、毒によって滅しかけた。
そんとき、おらは気づいた。
いや、思い出したと言ってもいい。
近しいものが死ぬのは、怖いと。
神霊として長くこの地に居続けたせいだろうか。
感情が薄くなっていたんだに。
人が死ねば悲しい。そんな当たり前の感覚を、忘れていたのだ。
おらの友達が、消えかけていた。もう駄目だと思った。
妖魔を助けてくれるものなど、この世には居ない。
霊界のご意見番だった、守美ですら、妖魔を助ける術を持ち合わせていなかったのだから。
……カッパ達は死んでしまうのか。そう思われた。
そんなとき、レイが、現れたんだに。
レイ、アレは……何者だに?
妖魔を滅することなく、妖魔を治療する?
そんなことできる異能者は、一人も見たこと無かっただに。
神霊でも、できる奴は極限られてる。
妖魔の治療ができる奴は、いはする。でもそいつは、神霊だに。
……レイ。この子は本当に何者なんだに……?
彼女は、神霊なのかや?
いやでも、人間だに。人間の……優しい、女の子だに。
……参ったな。
おら、気づいたらレイのことばかり、考えてるだに。
あの子のこと……おら……もしかして……ぽっ。
い、いや……ないない。ない……うん。ない。
それにレイには婚約者がいるという。
じゃあ、オラじゃあ無理だに。
……いやでも、一〇〇年もすれば肉体は滅びて、魂だけになる。
婚約者も、死ぬ。そしたら……レイの魂と結ばれれば……。
いやいや。キモい。その考え方はキモいだに!
あー! ……だめだ。やっぱおら今普通じゃあない。
……井氷鹿と眼鏡丸が、レイに入れ込む理由が、ちょっとわかった気がするだに。




