水の神霊 2
……蛟。それが、この屋敷の主である、神霊さまの名前のようだ。
「ま、立ち話もあれだし、座って座って」
「は、はい……!」
私、サトル様、真紅郎さまの前に、蛟さまが座る。というか……。
「あー、どっこいしょ。ん? どうしたんかや? もっと楽にしていいだに?」
楽にしていいって言うけど……。
蛟さまは、ちょっと楽にしすぎのような……。
「「「えっほえっほえっほえっほ」」」
小毬カッパたちが、私たちの前へとやってくる。
お茶を淹れて、持ってきてくれたようだ。
カッパ達が湯飲みを差し出してくる。
「ありがとうございます」
「「「「えっほえっほしてた、ぼくら、可愛い?」」」」
「え、ええ……まあ」
「「「「やったー!」」」」
小毬カッパさんたちが飛び跳ねて喜んでいる。
自分から可愛いって聞かなくても、普通に可愛い見た目をしてるんだけどな。
蛟さまは横になった状態で、お茶をすする。
すっ、と手を差し出す。
「「「えっほえっほ、蛟さまにお煎餅運ばなきゃっ、えっほえっほえっほ」」」
カッパ達がお皿を運んでくる。
そこに載ってるお煎餅に手を伸ばし、ばりぼりと、蛟さまがむさぼる。
「体もんでほしいだに」
「「「えっほえっほ、マッサージしなくちゃ、えっほえっほ」」」
……なんだか、ご主人様と召使いみたいな感じになってる。
「あの……」
「どうしたんだに?」
「蛟さまは、どうして我々をここへ招いたんですか?」
「我々、っていうか、おらはあんたを招きたかったんだに。他の連中はついでにだ」
私を招きたかった……?
「どういうことですか?」
「眼鏡丸と、井氷鹿を助けた女が、どんなものか、見てみたかっただに」
眼鏡丸とは、淺草、淺草寺でであった、眼鏡をかけた神霊。
井氷鹿さまは、淺草にやってきた、氷の神霊。
どちらも困っていたので、助けたことがある。
「二人が、淺草で美人の神の子を見つけたっていうから、気になってたんだに」
「神の子……?」
「神因子を持った人間のことだに」
「……神因子」
「平たく言えば神の力だに」
本当にざっくりしすぎてる……。
「矢張りレイには、神の力が宿ってるんですか? 蛟さま」
サトル様が尋ねると、こくんと、蛟さまがうなずく。
「神の力……。これを、どう使えば良いでしょうか」
「ん? 別に、好きに使えば?」
「好きにって……」
「思うがままに使うがいいだに」
「でも……強い力を与えられたってことは、なにか強い使命があるってことじゃ?」
「んなわけねーだに」
くわ……と蛟さまがあくびをする。
「おらも確かに強い力を持ってるだに。でも、別に何かしてる訳じゃあない」
「で、でも……小毬カッパたちを、雇ってあげてるんじゃあないですか。それって、神霊と妖魔との、架け橋的なことをしたいから……」
「いや、そんな大それたこと考えてねーだに。カッパどもを保護したのは、お手伝いさんが欲しかったから」
お手伝いさんが欲しかったからって……。
「それでいいの、あなたたち?」
今もなお、蛟さまの体をマッサージしてるカッパたちに尋ねる。
「「「いい」」」
「そ、そっか……」
蛟さまはじっと私を見つめる。そして言う。
「ああ、やっぱり。あんたは真面目だに。真面目すぎるだに。気負いすぎてる、って言い換えてもいいだに」
「気負い……ですか?」
こくん、と蛟さまがうなずく。
「レイ。最近何か悩んで居るんだろう?」
「は、はい……。妖魔との付き合い方について……。私は、この強い力は、妖魔と人間とを、つなぎ合わせる的な力なのかと……」
「んなわけねーだに」
「ち、違うんですか……?」
「力は力だに。どう使うかは、力を持ってるやつが決めていい」
「好きにしていい……って言われましても……」
……正直、困る。何をしていいのかわからない。……この力で、こうしろと、言われたほうが楽だ。
「それは甘えだに」
ずず……と蛟さまがお茶をすする。
「なあ、レイ。あんたは何がしたいんだい? これから。そこの一条家の坊ちゃんの花嫁になって、それからは?」
……花嫁になった、その後のこと。
……私は、何も考えていなかった。
サトル様の花嫁になること。それは王命だ。私の意志ではない。
花嫁になった、その後は?
……私は、何がしたいんだろう。
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