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迷い家の夜 3


 ……とっても美味しいお寿司(一部お寿司じゃあなかったけど)を、堪能した。


「うち……はまずしより、くらずし派……」


 幸子ちゃんが夢心地で、仰向けに寝ている。

 お腹が膨れてて、ちょっと可愛い。


「マジでこのちびすけ、なんなの……? 意味わからないことばっかりいうし……」

「? 幸子ちゃんは、幸子ちゃんですよ?」


 ひのわ様はズズズ、と緑茶をすすりながら、尋ねてくる。

 なんだっていわれても、この子は幸子ちゃん。


「私の友達で、それ以上でも、それ以下でもないですよ」

「……妖魔じゃん」


「ええ、それが……?」

「…………ほんと、あんたって変わってるわ。変わってるって言うか、凄いというか……」


「凄い?」


 どういうことだろう……。

 幸子ちゃんが顔を上げて、私に言う。


「極東人は、妖魔に対して、強い嫌悪感を抱いている。それは、生まれ持ったもの、本能って言ってもいい」

「本能……」


「人が肉食獣を、無条件に恐れるように、極東人は妖魔を本能で恐れる」

「そうなんだ……」


 ……妖魔を恐れる、か。

私はよそ者だから、恐れないのかな。幸子ちゃんは、幸子ちゃんだ。怖いなんて、思ったことは一度もない。


 ぷにぷに、と私は幸子ちゃんのほっぺを突く。


「むにゃ……えーあいとれーす……だめ……絶対……」


 幸子ちゃんが寝言を言う。可愛い、としか思えない。


「……ねえ、ひのわ様」

「なぁに?」

「本当に、怖いでしょうか。妖魔って。幸子ちゃんは、怖いとは思わないでしょ……?」


 腹一杯ご飯を食べて、眠くなったので寝る。この……可愛い子を見て、そんな風に恐怖は抱かないはずだ。


「そりゃ……こいつは特殊でしょ」

「んにゃ……かみえしになるほうほう……ひとつ……かみえしの腕……食べる……」


「それにほら、怖いこと言ってるわよ?」

「これに意味はないんだと思います」


 幸子ちゃん、たまに意味不明なこと言うし。

「なんであんた、そんなに妖魔の肩を持つわけ?」

「別に、そういうわけじゃあないんです。ただ……友達を、怖がらないで欲しい。良い子だって、わかって欲しい。それだけです」


 幸子ちゃんも、つぐみさんも、タオさんも。皆良い子たちだ。

 霊亀である守美さまだって、いい人。


 ……全員が全員、良い妖魔だとは思わない。でも……。


「妖魔は全て、恐ろしいものって、怖がるのは……ちょっと違うのかなって」

「……ぐしゅぐしゅ」


 そのときだ。

 どこからか、鼻をすする音がしたのだ。


「われら、かんげき。あめあられ」

「え……?」


 テーブルの上には、小さな……緑色の、かえるみたいなものがいた。


 いや、かえるではない。背中には甲羅、頭にはお皿が載ってる。


河童かっぱよ!」


 ばっ、とひのわ様が臨戦態勢を取る。

 河童……。そういえば、武良水木妖怪図鑑に載っていた。


 水の妖魔だって。

 ……でも、図鑑で見たのより、小さいし、ぷにぷにしてるし、丸っこい。


「火車!」


 しーん……。


「ちょ、火車!? どうしたのよ!」


 火車の異能が発動しないのだ。

 どうして……。


 一方で、河童が、こちらにやってくる。

 そして、ぺこりと頭を下げる。


「われら、かんげき。あめあられ」

「えっと……どちら様?」


「われら、この屋敷につかえる、ようま……【小毬カッパ】でしゅ」

「小毬カッパ……」


 確かに、小さいし、毬みたいに丸々しているけども。

 この屋敷に仕えるってことは……。


「神霊につかえてるってこと?」

「はいでしゅ。われら、つかえてるでしゅ。おりょうりとか、つくってるでしゅ」


「まあ……。それじゃあ、この美味しい料理は、あなたたちが?」

「はいでしゅ。よろこんでもらえて、うれしいでしゅ」


 小毬カッパさんたちが、このお寿司を作っていたんだ。


「妖魔の手料理……うぷ……」


 ひのわ様が、口元を手で押さえる。……嫌悪感を覚えてるのだろう。


「あれが、ふつうのはんのうでしゅ」


 小毬カッパさんが言う。


「あなたはちがったでしゅ。おいしいっていってくれたでしゅ。うれしかったでしゅ。よーまがつくったもの、おいしいっていってくれたから」


 ……作ったモノを、美味しいと言われて、嬉しいと思う。それは……とても人間的な反応だった。

 ……妖魔は、やっぱり、私にとって理解不能の化け物ではない。


 私は背筋をただして、頭を下げる。


「美味しいお寿司、ありがとう、小毬カッパさん」

【☆★おしらせ★☆】


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― 新着の感想 ―
はまでもくらでもなく、かっぱ寿司だったw
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