迷い家の夜 2
用意された、お料理の数々。
これが、本当に美味しいのだ。
「うっま! なにこの天ぷら! 美味すぎだわ!」
ひのわ様が、バクバクと天ぷらに舌鼓を打っている。
確かに、ぷりっぷりの歯応えに、さっくさくの衣。
噛めば噛むほど、甘みとうま味が広がる。
「このお寿司も……最高です! 特にこの、えびの上に、緑の野菜? と白ソースがかかったやつが……!」
私の好物である、お寿司。
マグロなどの、オーソドックスなメニューが並んでいる。
その中に、極東ではまず見たことない、寿司ネタがあった。
今私が食べているものも、その一つだ。
「れい、それ、えびあぼかど、じゃ」
幸子ちゃんがご飯で頬を膨らませながら言う。
「えび、あぼかど……?」
えびは、わかる。海産物のそれだ。アボカドって……?
「えびと、アボカドっていうお野菜。そこに、マヨを乗っけてるやーつ。うまし」
「まよ……? アボカド? なによ、それ」
ひのわ様が尋ねると、幸子ちゃんがフッ……と意味深に笑う。
「君たちが、食べたことないだろう、未知のくいもん」
「はぁ!? だ、大丈夫なの、そんなのたべて」
「もーまんたいよ。おいしいよ」
確かに、美味しい。しょう油を付けて食べるエビよりも、まろやかな味わいだ。
「こっちの、あぶりちーずべーこんも、うましよ?」
「あ、あぶり……? ちーず? ベーコン? 一体何を言ってるのよあんた……」
焼いたお肉が、お寿司の上に乗っかっていた。なんだこれ……。
「寿司って言えば、お魚でしょ? お肉が合うわけないじゃん」
「ふふふ。まあまあ、食べてごらんよ」
ひのわ様が疑いの目を向けてくる。
幸子ちゃんが美味しいっていうんだったら、美味しいものなんだろう。
私はあぶりチーズを食べる。うんっ!
「これ、めちゃくちゃ美味しいですよっ」
「ほ、ほんとにぃ?」
「はいっ。確かにお肉に寿司って合うのか、心配でしたが、これが、意外とあいます! 甘塩っぱくって、美味しいです!」
ベーコンとチーズの油が、ご飯と合う。しかも、さっきまでさっぱりしたものばかりだったから、余計に、このあぶりチーズの美味しさが際立つ。
「ふふふのふ。油ものの寿司、おいしかろ?」
「くっ……。確かに美味いわね」
ひのわ様も気に入ったようだ。
「てゆーか、変わったお寿司が出てくるわね。こんなのほんと見たこと無かったわ」
「ここ、迷い家。ですからな」
「? どういうことよ」
ひのわ様が尋ねると、幸子ちゃんが言う。
「迷い家は、うちらが普段いるところとは、隔絶した世界。神域でもある」
「神域……?」
「神の、りょーいき。神様の支配する領域。領域内では、神様が想像できるものを、創造できる」
「「へえ……」」
つまりこの変わったお寿司は、この迷い家を作っている神様が、考案したネタということらしい。
「こんな美味しい寿司ネタを思いついて、作り出すんだから、寿司の神様でも住んでるのかしらね」
「どうでしょう……」
それにしても、神霊って本当にたくさんいるんだな。山の神様だったり、井氷鹿さまだったり。
「お、新しいお寿司はこばれてきたぞよ」
いつの間にか、テーブルの上に、お寿司のお皿が出現していた。
……………………え?
「なっ!? 何よ、これぇ……!?」
ひのわ様が、新しく出てきた【おすし】を指さす。
「これ、寿司じゃあないわ! うどんじゃあないの!」
……そう、お寿司の皿の上に、茶碗がのっていて、その中には確かにおうどんが入ってるのだ。
「お寿司が出てくるんじゃあなかったの!?」
「ふふふのふ。すしやで、うどん。普通にでてくる」
「はぁ!? 極東でそんなとこ、見たことないわよ!」
「きょくとーでは、ね」
「またこの子は意味深な、意味不明なこと言って……」
おうどん……。でも、とても美味しそう。
私はふらふら、とおうどんに手を伸ばしてしまう。
「れ、レイ……やめときなって。変よ絶対」
「大丈夫です、邪気は感じないので。……ちゅるり」
こ、これは……!
美味しい……!
「普段食べてるうどんより、美味しいです!」
「そーでしょーとも。ご飯物を食べてると、口が汁物を欲する。そこで、うどんを提供するのですよ」
「なるほど……幸子ちゃん、物知りですね」
「まあ、ながくいきとりますからな」
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