【Side】一条悟
俺は一条家の当主、一条悟。
この度、王より信濃へいき、山神を助けるよう依頼を受けた。
……山中に、突如として現れた屋敷。
そこに留まることになった俺たちだったのだが……。
俺たちは、屋敷に入った瞬間、バラバラになってしまったのだ。
……正確に言うと、レイと、レイ以外で。
俺、ひのわ、真紅郎の三人は同じ場所へ飛ばされていた。
俺たちは屋敷の中で、まとまって動いてる。
レイの霊力が、感じられない。と言っても、レイだけのものではないが……。
それ以外の、たとえば目の前のひのわの霊力も、感じられないのだ。不思議なことにな。
「ああ、レイ……」
「…………」
ひのわが俺をじっと見つめている。
「レイのこと、ほんとに好きなのね」
「? 当たり前だろう?」
ひのわが小さく息をつく。
「……妬けちゃうわ」
「なんだって?」
「なんでもないわ。速く、レイを探して合流しましょう」
「そうだな。真紅郎、何か分かったか?」
真紅郎の周囲に、無数の蝙蝠が集まっている。
アレは、真紅郎の異能、【吸血鬼】の能力の1つだ。
眷属である蝙蝠を召喚して、周囲を探索させていたのだ。
「どうやら、我々は閉鎖空間に閉じ込められてるようです」
「ほぅ……閉鎖空間?」
「文字通り閉じた空間です。なので、どれだけ進もうとしても……元に戻ってきてしまう。決して、空間の外へは出られないのです」
なるほど……。だから、先ほどから歩いているのに、一向にレイにはあえないし、外にも出れないわけだ。
「脱出法は?」
「この空間に穴を開けるしかありませんね」
ひのわが【火車】の異能を発動させ、そして、壁を殴りつける。
どがんっ! という大きな音とともに、爆発が起きる。
……が。
壁はびくともしていない。
「閉鎖された空間の壁は、かなり強固に作られてるようです」
「みたいね。全力で殴ったのに、傷1つついてないわ」
……なるほど。
「これは……レイを見つけるしかないな」
「ですね。この空間も異能でできてるようですし」
「だな。速く合流しよう」
真紅郎とうなずきあう。
一方で、ひのわは首をかしげる。
「あんたたち……レイが心配じゃあないの?」
……ひのわが首をかしげる。
「心配? どうして」
「だって……妖魔、あるいは呪詛者がいるかもしれないじゃあない? ここ。そいつにレイが襲われて、危険にさらされているかも……とか考えないわけ?」
……ふむ?
俺と真紅郎は首をかしげる。
「大丈夫だよな?」
「そうですね。お嬢様は最強ですので」
「なんだったら俺より強いしな」
3つの異能を兼ね備えてるだけでなく、呪禁、そして呪禁存思まで使える異能者は、レイくらいだ。
「それに幸運の大妖魔もついてますので」
「幸運の大妖魔……? ああ、あのちんちくりんの変な妖魔ね」
レイが幸子と呼ぶ妖魔は、座敷童だ。
幸運の力を持つあの子がそばに居る以上、命を落とすような不運に見舞われることはないだろう。
「まあ、たとえ座敷童がいなくても、レイなら大丈夫だよ」
「ふぅん……信頼してるのね、あの子のこと」
「? 当然だろう。レイが、一体どれほどの、悲劇を回避してきたと思ってるのだ?」
レイはああみえて、度胸もあるし、異能者としても一流だ。
「俺が居なくても、脱出できるだろう」
「…………そう」
「どうした、ひのわ?」
ひのわが俺を見つめていう。
「ねえ、あんたがレイを選んだのって、あの子に強い力があるからってわけじゃあないのよね?」
「? 当たり前だろ。俺がレイを選んだのは、レイが……優しくて強い子だからだよ」
「……だよね」
どこか、わかってるような、そんな感じでひのわが言う。
「いきま……」
しょ、と言い終わる前に、ひのわが目の前から消えたのだった。
「!? どこへ……」
「恐らく、別の場所へ飛ばされたのでしょう」
まあ、ひのわも強い女だから、大丈夫だろう。
俺もあいつの強さについては、十二分にしってるからな。
「急いで彼女らと合流するぞ」




