表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/265

ひのわの事情 1



 ……ひのわ様は、女性でした。色々と彼女には、事情がおありのご様子だ。

 女性なのに、男性として生きる。それは、どれほど辛いことだろう。


 私の想像できない、なにか、とてつもない辛い目にあってきたことは、容易に想像ができた。だから……私は彼女を放ってはおけなかった。

 ……私もまた、辛い目にあってきたからだ。


「お着替え終わりましたか?」

「……うん」


 自動車の扉が開くと、シャツにズボン姿の、ひのわ様が現れた。

 真紅郎さまの衣服をお借りしたのだ。


 私の持参した服は、ひのわ様には小さすぎるのだ。それに、どれも和服なので、それを着たら女性とバレてしまう。だから、真紅郎さんのをお借りしたのだ。


「……ありがとう、レイ」

「いえ、しかし……このままではバレてしまいますね。お胸が……」


 ひのわ様はかなり立派なお胸を持っていた。これでは一発で、女性だとバレてしまわれる。


「サラシを巻くからいいわよ」

「さらし?」


 ひのわ様が鞄から、包帯のようなものを取り出す。

 シャツを一度脱いで、くるくると、サラシを巻きだした。なるほど、そうやって胸を、圧迫することで、隠すということか。


「お手伝いします!」

「……い、いいわよ」

「いえ! お任せください!」


 私はひのわ様からサラシを奪って、くるくると巻く。けど……。


「凹凸が、目立ちますね……」


 さらしを巻いてもなお、ひのわ様のお胸は隠れない。


「おかしいわ……さっきまではこれでごまかせてたのに……」

「胸がおっきくなったのでしょうか?」


 そのときだった。


「せつめーしよー」

「幸子ちゃん」


 私たちの間に、幸子ちゃんがにゅっ、と現れたのだ。本当に神出鬼没な子……。


「ひのわは、肉体を欠損してた」

「肉体の欠損?」

「そー。ばくはつで、肌や、肉を、欠損させてた」

「なるほど……呪禁で肉体の欠損を直したから、お胸がおっきくなったんですね」

「そーいうこった」


 じろり、とひのわ様が幸子ちゃんをにらみつける。


「……なんであんたがそんなこと知ってるのよ?」


 フッ……と幸子ちゃんが意味深に笑う。


「マブに、おしえてもらった」

「まぶ?」

「しんゆー。なんでもしってる。すげーやつ」

「へえ……そんなすごい妖魔と、お友達なんですね?」

「のん」


 のん?


「よーまじゃあない。でもうちの友達。こないだあった」


 こないだあったのに、友達……?


「まー、こまかいことはきにすんな。な?」


 ぽんぽん、と幸子ちゃんがひのわ様の肩を叩く。


「ぱいたっち」

「ぎゃぁあ……!」


 幸子ちゃんが、ひのわ様のお、お胸を触った!?


「なにすんのよ……!」


 ぶん! とひのわ様が幸子ちゃんの頭を殴ろうとしたので、私が結界で防ぐ。


「かった! 硬すぎでしょ……」

「すみませんでした、幸子ちゃんが失礼をして……。悪い子じゃあないんです。だから、どうか許してあげてくださいまし」

「……まあ、命の恩人の頼みなら」


 ほっ……良かった……。


「幸子ちゃん、いたずらがすぎますよ。めっ」

「レイもマブのママとどーよー、甘いね」


 マブの……ママ?


「とりあえず、もっとさらしをキツくまかないとね。レイ……お願いしていい?」

「はい!」


 ぎゅぅうううううっ、と強くさらしを巻く。

 それでようやく、ひのわ様のお胸が、平らに見えるようになったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ