表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/265

山の路 3


 ひのわ様が異能、【火車】を使って、樹木子を倒した。

 ……これで解決、かと思ったのだけど。


「! 危ない……!」


 私はひのわ様を突き飛ばす。

 樹木の枝が、凄いスピードで、地面に突き刺さったのだ。


『ちぃ……勘の良い女だ……』


 樹木子じゅぼっこ……。

 さっき、ひのわ様が倒したはずなのに……。

「……油断した。すまない。山のは手強いのだ」


 白夜さまもそうおっしゃっていた。


「……山のは集団で来ることが多いのだ」

「なるほど……では、こいつは、さっきひのわ様が倒したのとは、別の個体ということですね」


 樹木子じゅぼっこが集まってくる。1体、2体……どころの話ではない。

 周りには10体以上の樹木子じゅぼっこが集まっている。


 ひのわ様が私の前に立つ。

 黒いコートから、尻尾が伸びる。


「【火車】……【彩色柳】!」


 ぎゅんっ、とひのわ様の尻尾が、10本に分裂し、樹木子じゅぼっこに絡みつく。


 どががががんっ、と連鎖的に爆発していく。

「ぜえ……はあ……はあ……」


 がくんっ、とひのわ様が膝を突く。


「大丈夫ですかっ?」


 私はひのわ様に近寄ろうとする。

 が、ひのわ様が首を振る。


「油断するな! 樹木子じゅぼっこはまだ居る!」


 がさささっ、と樹木子じゅぼっこがさらに集まってくる。

 ……これが、山の


 1体倒しただけでは終わらない。確かに、街に出てくる妖魔とは、別方向の強さを持っている。


「【火車】……【花雷はならい】!」


 周囲に、黒い砂が広がる。ばんばん! と雷のような音を出しながら、強い光が発する。

 周囲にいた、樹木子じゅぼっこ達が木っ端微塵になって砕け散った。


「はあ……はあ……戻るぞ……ぐっ!」

「ひのわ様!」


 ひのわ様の体から、湯気が立っている。

 肉が焼ける音がする。


「コートの下、どうなってるんですか……!?」

「触るな!」


 ひのわ様がにらんでくる。


やつがれに……触れるな。木っ端微塵になりたいのか……」

「え? それって……どういうことですか……?」


「……やつがれの異能は、【火車】。体から火薬を生成し、それを自在に操る異能……」


 ……!

 異能の正体を、おしえてくださった……。


 向こうから……。


「……やつがれの肌から、火薬が生成されるのだ。肌に触れれば、貴様とて無事では済まない」

「…………」


 すごい、異能だ。火薬を作り出し、自在に操るなんて……。

 でも、じゃあどうして、ひのわ様はこんなに苦しそうな表情をしてるのだろう……。


 ……まさか。


「ひのわ様。もしかして……異能をコントロールできてないのではありませんか?」


 ひのわ様の表情がこわばる。やっぱりそうだ……。

 この極東では、異能者はいくつかのタイプに分けられる。


 とりわけ、寄生型の能力者は、自分の力を制御できずにいるとうかがった。

 多分……ひのわ様もそうなのだ。


 ご自身の、火薬を作り出す【火車】の異能を制御できていない。だから……自分の肌を焼いてしまってる。


 じゅうじゅう、と肉を焼く音と、嫌なにおい……。


「……可哀想」


 ぽつり、と私の口から零れ落ちたのは、同情の言葉だった。

 ぎんっ、とひのわ様が私をにらみつける。


 黒コートから黒い尻尾が伸びて、私の体に巻き付く。


「貴様! やつがれを……あたしをバカにしたな!?」

「バカに……? 何を言ってるのですか……?」


「今あんた、あたしを女として可哀想だって……そういったじゃない!」


 ……あたし? 女として?

 

「何言ってるのですか……? 私はただ、人のために力を使っているのに、その都度痛い思いをするなんて。可哀想……そう思っただけです」


「…………」


 ひのわ様が目をむく。


「な、によ……それ。バカにしてるわけじゃないの?」

「? どうして、バカにするんですか? ひのわ様は立派な御方ではありませんか。王命を、忠実に実行していらっしゃいますし」


 私を守れと、白夜様からの王命を、ちゃんと守っている。

 使えば肌を傷つける、自分の異能を使っても……。


 本当に、立派だと思う。


「……ほんとにそう思ってる?」


 ひのわ様が私の目を見て、尋ねてくる。

 私は嘘偽ることなく、うなずく。嘘なんてつく必要はない。


 だって……本当ににそう思ってるのだから。 

「…………そう」


 ひのわ様が、黒い尻尾をおさめる。


「悪かったわね」

「いえ。むしろ……こちらこそすみません。足を引っ張ってしまって」


 樹木子じゅぼっこに狙われたのは、私のせいだ。

 妖魔たちは、どうやら私を欲してるようだし。


 私が樹木子じゅぼっこを集めてしまったのだろう。

 そのせいで、ひのわ様に、要らぬ戦闘をしいてしまった。


「……あんた、変な子ね」

「そうですね。あっちでも、こっちでも……良く言われます」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ