五十嵐の当主 4
信濃へは、自動車で向かうことになった。
後部座席には、サトル様とひのわ様が一緒に座っている。
「ひ、ひのわよ……」
「……なんだ?」
「その……近いのだが?」
……ひのわ様は、サトル様にぴったりとくっついていらっしゃった。
「……気のせいだ」
「いや気のせいじゃあないような……。逆側、すごい空いてるじゃあないか。そんな詰める必要がどこにあるのだ?」
「…………」
「無視は良くないとおもうのだが……?」
確かに、不自然にくっついていらっしゃる……?
どうしたのだろう……?
……それに、何故だろう。
ひのわ様とくっつく、サトル様を見ていると……心がもやりとするのだ。
……どうして、もやっとするんだろう。
「ゆー、それは、恋です」
「幸子ちゃんっ?」
いつの間にか、私の膝の上に、ザシキワラシの幸子ちゃんが座っていた。
「さいつぇん、レイ」
「さ……? 久しぶりですね、幸子ちゃん」
「うむ。今まで。れい。れーりょく。たりず。うち、でれんかった。でも……解消された」
呪禁存思の反動で、幸子ちゃんたちの力が使えなかった。
当然、幸子ちゃんがそとに出ることもできない状態が続いていた。
でも……。
「れい。いま、れーりょくまんたん。うち……ふっかつした次第」
「なるほど……」
幸子ちゃんがぴょんっ、と後ろの席へ移動。
サトル様と、ひのわ様の間に座る。
「……なんだこの子供は?」
じろり、とひのわ様が幸子ちゃんをにらみつける。
「うち、ザシキワラシ。よろしゅーな」
「!? 妖魔……!? なぜここに!」
「あんしんしろ。うち、いい妖魔。れいの体内妖魔」
「はぁ……!?」
ひのわ様が私を見やる。
「ちょっと!? どういうことよ!」
あ、あれ……?
さっきまでと、ひのわ様、雰囲気違うような……。
「えっと、なんだか知らないですけど、幸子ちゃん自由に私の中から出れるんです」
「そんな……。霊源解放の奥義まで使えるの……?」
「れ……? え……? あの……」
はっ、とひのわ様が我に返ると、ごほんと咳払いをする。
「……その妖魔は、滅さずとも良いというのか?」
「は、はい。悪い子じゃあないので」
幸子ちゃんがうんうんとうなずく。
「うむ。うち、良い子だから」
両手の人差し指で、自分のほっぺたを指す幸子ちゃん。可愛いポーズだけど、なんだろうそのポーズ……。
「……信じられない。霊源解放まで使えるなんて。異能者として、ここまで差が開いてるなんて……あたしじゃ……勝ち目ないじゃん……」
「え? なんて……?」
「……なんでもない」
ぶすっ、とひのわ様が不機嫌な表情で、そっぽを向く。
一方、幸子ちゃんがひのわ様の肩をぽん、と叩く。
「昨今のラブコメ市場、ツンデレヒロイン、流行らないみたいだぞ?」
「……何を言ってるのだ、ザシキワラシ貴様……?」
「ツンデレはいいものだ。けど、令和にツンデレヒロインは需要ないぞ、ってことだ」
「意味わかんないんだけど……?」
えっと……。
「すみません、迷惑かけて。幸子ちゃん。戻って」
「のん。うちも、レイを守る。しゅごきゃらなので」
もう……言うこと聞いてくれないんだから……。
「すみません……」
「……ふん。かまわない。さっさと車をだすがいい」
真紅郎さんがうなずくと、アクセルペダルを踏む。
……こうして、四人+妖魔1で、信濃に向かうことになったのだった。
「ツンデレより、素直になったほーが、よきよ。ひのわ」
「……鬱陶しいぞ、貴様。なんなんださっきからっ」
ぎゃあぎゃあ、と二人が言い合いをしてる。
「これ四人乗りの車なのだが……」
とサトル様がぐったりするのだった。




