【Side】九頭竜白夜【極東王】
私の名前は九頭竜白夜。
ここ、極東の地を治める王をしてる。
年明け、私は悟とレイ、そして、守美たち一条家に新年の挨拶へと向かった。
……そして、悟達に、山の神救出を依頼してきた。
レイ、そして、悟。二人は少し見ぬ間に、二人の絆がより強固になったのが見て取れた。
お互いを、あだ名で呼ぶくらいには、仲が良くなったのだ。
……極東にとって、最も喜ばしいことだ。
そして、さらに喜ばしいことに、彼らはとても、夜の営みに積極的なのだ。
いずれレイは、元気なお子を産むことだろう。
レイと悟。最強の異能者同士の子なのだ、恐らく、とてつもない異能者となるだろう。
未来視を使わずとも、わかることだ。
……さて。
りさとをレイたちの部屋から回収し、自分の部屋へ戻ろうとした時。
私は、縁側で守美を見かけた。
「やぁ、守美。こんばんは」
「あら、九頭竜様」
「……よしておくれよ。そんな、他人行儀な呼び方」
「あら、そう? 白夜。こんばんは」
守美と私は、ほぼ同い年なのだ。
だというのに……。
「守美は、昔と変わらず美しいな」
「そりゃ、そうでしょう? わたくしは、一度死んでいるのですから」
……つい、先日。
レイが、呪禁存思を用いて、守美を蘇生させた。
……その報告を聞いたとき、驚く反面、納得してる自分もいた。
呪禁存思。
死者を蘇生させる禁呪だ。
今まで、呪禁存思を行って、成功できた例は聞いたことがない。
理論を作り上げた異能者以外、だれも。
まして、呪禁は通常、男にしか使えぬ技だ。
どれくらい、女にとって呪禁が難しいかというと、極東最強異能者の守美ですら、使えないほどだ。
その上位版である、呪禁存思を、女性であるレイが使った。
……ありえないことを、なした。
「本当に、レイは……凄いね。君を生き返らせるなんて」
「ええ、凄いわ。あの娘は、神の子よ」
「神の子……か」
神因子を持つ人間を、神の子と呼ぶところもある。
神因子。文字通り、神のチカラを持って生まれた子供。
元々、異能を三つ持ってる時点で、おかしかったのだが。
呪禁存思までしてしまった。本当に、あの子は凄い……なんてレベルを超えた異能者だ。
神の力を持つ、少女。
そんな彼女を、信濃に送り込む。
「本当はね、守美。レイを……信濃に送りたくないんだ」
「それは……どうして?」
私は自分の目を、手で押さえる。
「未来視が、上手く使えないんだ」
「……ハクタクの異能が、使えないの?」
「ああ。どうやら、白面側が、私の異能に干渉してるようだ」
手段はわからないが、ともかく、現状では上手く未来視が発動しないのである。
「百春に調べて貰ったが、強大な妖魔の干渉を受けてる、以外はわからないそうだ」
「……そう」
白面は、確実に動き出してる。
神の子たるレイを、獲ろうと、画策してるのがわかる。
そんな状況下で、山の怪がうろつく信濃に、レイを送るのはかなり危険だ。
だが……。
「レイを送らないと、極東が滅ぶ。山の神が死ねば、山の怪が日本全国にあふれる事態……百鬼夜行となりかねん」
「百鬼夜行……。白面が復活したときも、同じことがおきたわね」
強大な妖魔が、あふれだし、街を襲う。百鬼夜行。
西の大陸では、スタンピードだのモンスターパレードだのと言われる現象だ。
「前回の百鬼夜行……白面復活に伴うそれは、死傷者ゼロで奇跡的に住んだ。でも……あのときは、山の神がご健在だった」
守美が命をかけて白面を倒す間、山の神が、山の怪を押さえてくれた。だから……被害を最小限に留めることができた。
だが、今回は……あのときと状況が異なる。
守美は、自分で霊亀の異能が使えなくなった。
さらに、山の神が病床に伏している。
……百鬼夜行が、行われてしまう可能性は、かなり高い。
「いちおう、百春、道真、鏡也……極東五華族当主たちにチカラを借りて、悟たち不在時の、東都に結界を張るつもりだ」
ここ東都を、妖魔に破壊されるわけにはいかないのだ。
なぜなら……東都の街には、白面が眠っている。
かの悪鬼を封じる殺生石。
それが壊されたら……もう極東は終わってしまう。
「思った以上に、逼迫した状況なのね。悟はわかってるのかしら」
「わかっているだろう。多くは語らなかったが、悟は、聡い子だからね。それに……レイも、なんとなく察しては居ただろう。緊急事態だと」
あのさとく、そして強い二人がいれば……きっとこの難局、乗り切ることができるだろう。
二人は、自覚がないようだが、極東最強の異能夫婦なのだ。
この島国において、彼ら以上に強い異能者はいない。
その強さに見合うだけの、精神的な強さも、彼らは持ち合わせてる。
大丈夫。きっと、彼らなら成し遂げてくれるはず……。
「そうね。あれだけ、毎晩のように、熱く激しく、陰陽を繰り返してるのですから」
「そうだね……ちょっと、陰陽しすぎではないかと思うけど」
聞いたところに寄ると、年末から年明けまで毎晩、彼らは閨を供にしてるようだ。
「二人の濃厚な陰陽のおかげで、霊力は二人とも通常の何倍も高まってるわ」
「……そうだね。まさか、彼らがあんなに激しく陰陽をするとは……」
「意外よね。レイさん。あんな大人しそうな顔をして、意外と激しい陰陽をなさるから……」
「西の大陸では、むっつりスケベというものがあるそうだ。一件大人しそうに見えて、実はかなり好き者という層が一定数いるとのこと」
「なるほど……レイさんは、むっつりスケベと」
まあ、何はともあれ。
レイたちは、この年末年始を通して、かなり……パワーが底上げされてるのだ。
二人は気づいていないようだが。
「レイさんたちに、その旨伝えなくても……いいわよね」
「そうだね。伝えずとも、旅の途中で、自分らで気づくだろうから。妙に強くなってると。それに……レイが照れてしまうだろうし」
まさか毎晩お互いの体を求め、陰陽しまくってるから、強くなった……だなんて。
恥ずかしがり屋なレイに、告げるのは酷というものだろう。
こちらの守りも固めたし、レイたちは強化されてる。
相手は山の怪。一筋縄ではいかないだろう。
それでも……私は、レイと悟なら、必ず、山の神を、そして極東を救ってくれると信じている。




