山の神 4
私はサトル様、そして五十嵐ひのわ様とともに、信濃へ行き、山の神をお助けすることになった。
白夜様と、りさと姫は、今晩泊まっていくことになった。
夜。
私の部屋には、りさと姫が居た。
「レイ、寝るわよ!」
「は、はい……あの、寝室をご用意しているのですが……」
白夜様、りさと姫のお二人が寝るように、別室に布団を敷いてある……のだが。
いざ寝ようとしたら、彼女が私の部屋に現れたのである。
「レイと一緒に寝たいの! ……だめ?」
「う……」
そんな、潤んだ目でこちらを見られたら、断れない。
「姫。その……」
「なによ、悟?」
……そう、サトル様も、現在この部屋にいるのだ。
サトル様、すっごく気まずそう。
「てゆーか、なんで悟がここに?」
「いやその……」
「なによ。心読むわよ。……って、あ」
かぁ……とりさと姫が顔を真っ赤にする。
そ、そうだ。りさと姫には、覚の異能があった。
相手の心を読む、異能。つまり……その……サトル様の頭の中を、のぞいたわけだ。
「な、ななな、なんてハレンチな! 悟! あ、あんたレイに、こ、こんないやらしいことをさせるつもり!?」
い、いやらしいこと!?
「ご、誤解だ……」
「サトル様、なんですか、いやらしいことってっ」
「そ、それは……言えん!」
言えないような、いやらしいことを、わ、私にするおつもりだったの!?
……。
………………ふ、ふぅん。
「レイもまんざらじゃあないのね」
「はっ……!」
しまった、りさと姫に心を読まれてしまった。
「あ、あのその……まんざらじゃあないってわけじゃ……」
「あたしに嘘は通じないわよ。この、異能探偵りさと姫にはね!」
異能探偵……。か、かっこいい……。
確かに、心を読めるりさと姫なら、探偵に向きそう。
心が読めるんだから、犯人なんてすぐわかっちゃいそう。
「でっしょ~? あたしの前では、どんな事件もまるっと解決! 全部お見通しよ!」
びしっ、とりさと姫がサトル様を指さす。
「悟! あんた……やり過ぎ!」
「や、やり過ぎ……とは?」
「言葉通りよ! この三が日、三日間毎晩その、れ、レイと……ね、閨を供にしてるんでしょ!?」
そこまで読まれてるっ?
「し、しかも……夜明けまでずっとだなんて! は、ハレンチ!」
「い、いやそれは……俺が悪いんじゃあない。れいたんが、寝かせてくれないのがわるい!」
なっ!?
「さ、さとるんだって! もっともっとって言うじゃあないですかっ」
「あ、あれは……しょうがないだろうっ?」
「しょうがないってなんですかっ!」
「だって……」
りさと姫が顔を真っ赤にして、ぱたんと倒れる。
「姫!? どうなされた!?」
「きゅ~……なんて、ハレンチ~……」
……どうやら、私たちのその、夜の営みを見てしまって、羞恥心が限界突破したようだ。
「さとるんが、悪いです。子供に、なんてハレンチな想像を見せてるんですかっ」
「いやそれ、れいたんも加担してるからな……?」
う……。た、確かに……。
そのときだった。
「夜分にすまないね、悟。レイ」
「「!? 王!」」
ふすまの向こうに、白夜さまの人影があった。
彼が中に入ってくると、苦笑しながら、りさと姫に近づく。
「こうなる未来が見えたからね。迎えに参上したよ」
「あ、ありがとうございます……」
私はりさと姫を白夜様に預ける。
「……二人の大切な時間を、我が子が邪魔してごめんね」
「あ、いえ……邪魔なんて思ってないです」
それは本当だ。
「そうかい。そう言ってくれてうれしいよ。りさとは友達が少なくてね。君たちのこと、本当に大切な友達だと思ってるんだ」
……うれしい。私も友達が少ないから。
「これからも仲良くしてあげてね」
「もちろんです」
白夜様は微笑むと、私の耳元でささやく。
「……信濃行きは、大変な旅程となるだろう。だから、夜の営みはほどほどにね」
「……ちゅ、忠告、ありがとうございます」
……そ、そうだ。大変な旅程になるのだ。
体力を使いすぎるのは、良くない。うん……。
白夜様が微笑み、私たちの部屋を出て行った。
……さて。
「れいたん♡」
サトル様が抱きついて、私を布団に押し倒す。
「さとるん。だめ」
「どうして!?」
この世の終わりみたいな顔をする、サトル様。
……これを見て、極東の悪魔なんて思う人は居ないだろう。
「もうすぐ信濃へ行くのです」
「そうだな。だから、行く前にたっぷり……」
「だ、だめ! すとっぷ!」
サトル様が私の首筋に鼻を押しつける。
「ああ……良い匂いだ……。れいたんの匂いは、世界一だ……」
「ちょ、だめ……もぉ……」
世界一なんて言われたら、頭が、ぽーっとしてしまう。
だ、だめ……。もう、信濃に行くまで、時間がないというのに……。
この人は……まったく、もお……。
「れいたん」
「な、なんですか……?」
「俺が、君を守るよ」
急に、真面目な顔をして、私を見てくるサトル様。
「山の怪は強いし、数も多い。ひのわが居るとはいえ、かなり厳しい旅程になるだろう。だが……安心してくれ。大切な君に、だれ一人、指一本触れさせやしないから」
……ああ、だめ。
だめだ。頭が、真っ白になる。ぽーっと、顔が……熱くなってくる。
……彼が、愛おしくて、たまらない。
彼が……欲しくて……たまらなくなる。
……だめ、だめだ……だめ、なのに……。
「さとるん……好き……」
……結局、私はサトル様を受け入れてしまうのだった。




