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新年の挨拶 3



 ……サトル様が、女性嫌い?


「どういうことですか?」

「もうレイちゃんとここまで仲良くなったし、おしえてもいっかな」


 この場には私と木綿ゆうさん、そして朱乃さんしか居ない。

 朱乃さんは今の話を聞いて、否定してこなかった。……本当に、サトル様は女性が嫌いみたいだ。


 でも……そんなそぶり、今まで一度も見せたことなかった。


「悟はほら、一条家の当主。顔も整ってるし、凄い異能も持っている。家柄、才能、そして……権力。全てを持ち合わせてるからかね、昔から、女から人気者でさ」

「…………」


 西の大陸でも、そういうのはあった。権力者のもとに、嫁ぎたい。そうすれば、楽な生活が送れる。そう……考える令嬢が、居た。

 現に、私の妹や、父でさえも、そういった考えを持っている人たちがいた。


「特に、守美すみさまが死んで、悟が若くして当主となってから、擦り寄る女がまぁ、めちゃくちゃ増えてね。同世代から、ちょっと年上のお姉様方。未亡人や、伴侶がいるのにつきあってくれと近づく女もいたんだよ」


「…………」


 ……醜悪、という言葉が、思わず脳裏をよぎってしまった。

 大事なお義母さま……守美すみさま……を亡くして、傷ついた心の隙間に、女性達が群がる……。


 それはまるで、蜜に群がる虫の群れのようであった。……女性が嫌いになる気持ちは、理解できた。


「で、でも木綿ゆうさんや、朱乃あけのさんたち……一条の人たちは違うんですよね?」

「そうだね。でもだれも、悟の女性嫌いは治せなかったんだ」

「そんな……」


 女性への不信感があったのに、次期当主を産むため、見知らぬわたしを、嫁にすることを受け入れざるをえなかっただなんて……。


 サトル様……お可哀想。


「…………」


 前の私は、ここで、止まっていた。サトル様は可哀想。そこでお仕舞い。

 どこか、他人事に……思えていた。でも……今は違う。


 私はサトル様と結ばれた。それは、彼も、私も……お互いを、受け入れる覚悟を持って、行ったこと。

 私にとって彼は、代えがたい存在。そして彼もまた……私のことを、そう思ってくださっているということ。


 私は、彼の一部。彼の悩みは私の悩みでもあるのだ。だから……。


「生まれてくる子が、もし男の子だったら、同じような悲劇が起きないように……しっかり、サポートしてあげないとですね」


 私がそういうと、二人が目を丸くしていらした。


「どうなさったのですか?」

「いや……まさかレイちゃんの口から、そんな前向きな、強い言葉が出てくるとは思わなかったからさ」


「意外……でした?」

「うん。最初に貴女にあったときは、いっつも下向いてたし、後ろ向きな言葉ばかりいっていたでしょう?」


 ……確かに、こちらに来たばかりのとき、私は実家で、無能と呼ばれ続けていたせいで、自尊心を持ち合わせていなかった。


 自分に、自信が持てなかった。だから、サトル様が困っていても、悩んでいても、何も……できなかった。そもそも、彼に何かしてあげたいと思うことすら、なかったろう。


 でも今は違うのだ。サトル様のために、何かをするのは、当たり前。彼を支えるのは……私の仕事と。そう、思えるようになっていたのだ。


「悟と、順調に愛を育んできたんだね。……ありがとね、レイちゃん」


 木綿ゆうさんが、少し泣いていた。……どうして?


「あたしほら……幼馴染みじゃん。一番あいつの側にいたじゃん。でも……あいつのこと、幸せにしてやれなかったからさ」


 ……もしかして、木綿ゆうさん、昔はサトル様のこと……。

 でも、彼女には許嫁がいたから、その思いが結実することはなかった……とか?


 ……真相は、わからない。彼女たちの過去に、何があったのかは、外から来た私は知るよしがない。


 でも……嫉妬することはない。焼き餅も、焼かない。不安にもならない。


 私は木綿ゆうさんの手を握る。


「サトル様のことは、私に任せてください。木綿ゆうさんは……生まれてくるお子さんと、そして……愛する旦那様を、支えてあげてください」


 木綿ゆうさんが笑うと、ぎゅーっと抱きしめる。


「ほんっと! あんたが一条家に嫁いできてくれて、良かったよ! ありがとね、レイちゃんっ!」


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