初日の出 1
……ゆっくりと、私は目を覚ます。
まだ薄暗い部屋の中。
けれど……寒さは全く感じない。いつも朝は、おきてすぐは眠いけれど、この日は違った。
とてつもない、幸福な気持ちが、胸を満たしてる。体の疲れは全くない。あんなにたくさん動いて、汗をかいたというのに。
「…………」
私の隣で、裸身のサトル様が目をつむっている。
熟睡していらした。
「サトル様……可愛かったな……」
弱ってるサトル様なんていう、ものすごい希少な場面を目撃することができた。こんな風に、弱い部分を見せてくださったことが……とても、嬉しい。
「れ、い……たん」
「さとるん。おはようございます」
サトル様が目を覚ます。少し、目の下にくまができていた。
私は彼の額にキスをし、呪禁を発動。陽の気を用いた、回復術。
サトル様の顔色がみるみる元通りになっていく。
「あ、ありがとう……」
サトル様は布団を体に巻いて、すすす、と私から距離を取る。えっと……。
「どうしたんですか?」
「いや……なんでもない」
もそもそ、とサトル様が衣服を身につける。一方で、私も同様に、脱いだ服をいそいそと着る。
こんな姿を、サトル様以外に見られたら、恥ずかしい……。
「レイは……その、あれだな」
「はい? どうしました?」
「いや……なんでもない。なんというか……人は見かけによらないんだな」
「????」
一体何の話をしてるのだろう……。
「れいたんにも、俺の知らない意外な一面があったということだ」
意外な一面……。確かに、昨晩は、サトル様に普段見せてるような態度をとっていなかった……と思う。
ずっと……甘えていた、気がする。
「嫌……でした?」
「まさか」
サトル様は優しく笑って、私を抱きしめてくれる。……ああ、温かい。心地良い。
「より、お前を好きになったよ。あんな風に、もっと俺を頼ってくれ。甘えてくれよ」
「さとるん……」
……知らず、私は彼に寄りかかる。そして、小さくつぶやく。
「……ありがとう、ございます。そう言ってくださって、うれしいです」
サトル様が微笑んでいる。彼の笑みは、見てるだけで、晴れやかな気持ちになる。
「まあその……なんだ。れいたん。次はその……少し間を開けようか」
「え……」
そんな……どうして?
正直、私は毎晩でも……。
「いや、間を開けよう。その……あれだ。その……なんだ。そうだ! 夜廻り! ほら、毎晩母上に負担かけるわけにはいかないだろう? うん」
「あ、た、たしかに……」
サトル様が毎晩行っている、夜の妖魔退治……夜廻り。
今日はサトル様と供にするということで、守美さまから、夜廻り交代を申しでてくださったのだ。
確かに、毎晩夜廻りをやっていただくのは、忍びない。
「そうですね」
ほぉ……とサトル様が大きく息をつく。その息はなんの……?
「次までに、もっと体力を付けておくよ」
「? ええ」
どうして体力の話になるんだろう……。
「さて、れいたん。そろそろいい時間帯だ。外へ出るぞ」
「外へ……? どうしてですか?」
「初日の出を見るぞ」
「はつ……ひので……?」
サトル様が説明したところによると、元日(新年のはじめ)に見る日の出は、初日の出というらしい。
それを見ることは、とても縁起が良い行いなんだそうだ。
……なるほど。今年一年、一条家や、極東の人たちが、幸せに暮らせますようにと、願をかけるわけだ。私もそうしたい。
「わかりました」
「よし、では厚着をして、そとに出るぞ」
サトル様が立ち上がると、その場にぺた……と尻餅突いてしまった。
「さとるん……? どうしたのですか?」
「いや! なんでもない! ほんと、なんでもないんだ!」
「そうですか?」
くっ……! とサトル様が悔しそうにしている。
「……なんて情けない! 異能に頼ってばかりいた弊害がこれかっ。くそっ、次はこんな情けない姿を見せないように、下半身と、持久力を鍛えねばっ」




