年の瀬 2
年の瀬のお祝いを、皆ですることになった。
皆さんが笑顔で食事を食べてる……なのだけど。
「お嬢様、今年一年お疲れ様でした!」
黒服さんたちが、私にお酒をついでくるのだ。
しかも……ものすごい行列ができてる……!
「お疲れ様でした。あ、あの……もうお酒は十分すぎるほどいただきましたので、ご自分達のお食事に集中した方がいいかと……」
全員が私にお酒をついでくるのだ。
食事の席に、私だけ飲み食いしてるばかりなので、なんだか申し訳ない……。
「れいたぁん♡」
「さ、サトル様……!?」
隣に座るサトル様が、がばっ、と私に抱きついてきたのだっ。
え、ええ!?
「れいたんれいたん♡」
「さ、サトル様……! どうなさったのですか!?」
……よく見ると、サトル様のお顔は真っ赤だった。
どうやら、私と同じように、お酒をつがれまくった結果、酔ってしまわれたらしい。
「れいたん、ちゅー♡ ね、ちゅーしよちゅー♡」
「なっ!? なにをそんな……」
ぐいぐい、とサトル様が顔を近づけてくる……!
「人が居る前は嫌だって言ったじゃないですかっ!」
「よいではないか、れいたん……ちゅー」
「だめっ! お、お義母さま、た、たすけて……」
私たちから少し離れた場所で、守美さまが静かに食事をしてる。
ぎろり、と守美さまがサトル様をにらみつける。
「悟」
ああ、良かった。サトル様は守美さまに頭が上がらないのだ。
助かった……。
「いけいけ~♡ おしたおせ~♡」
「お義母さま!?」
よく見れば、守美さまも顔が真っ赤だった!
「お義母さまっ、サトル様を止めてくださいっ」
「やーだぁ……」
やーだぁ……って。
「わたくし……ひっく……孫娘の顔……みたいんだもん……」
もん……て。
「悟! いけー! おしたおせー!」
「れいたーん!」
ああもうっ!
すると朱乃さんがサトル様の襟首を掴んで、背後にぶん投げる。
「サトル様!?」
大きな音を立てて、サトル様がふすまをぶち破り、外に放り出される。
「朱乃ぉ……! にゃーにしてるのれすかぁ……!?」
守美さまがキレるも、朱乃さんは呆れたようにため息をつく。
「守美さま、少々飲み過ぎです。今日はもうお休みになってください」
「やーだー! わたくし、れいたんとお酒のーむー!」
すすすす、と守美さまが移動してきて、私にしなだれかかってくる。
「ねーえ、れいたん~。孫の顔がみたーいの。おねがい」
お願いって……。
「そ、そんなこと言われましても……」
「うぇーん! れいたんはわたくしに孫の顔をみせてくれないんだー!」
「い、いや……いつかはと思ってますけど……」
すると軒下からサトル様が顔を覗かせる。
「いつやるのだ、れいたん? 今でしょう!」
がばっ! とサトル様が起き上がって、私に抱きついてきたっ。
サトル様と守美さまに、抱きつかれてる私。
「あ、あのお二人ちょっと飲み過ぎですよっ」
ちゅっ、ちゅっ、とサトル様と守美さまが、私にキスをしてくるっ。
「さとるんが嫌なら、わたくしと作りますか?」
「何を言ってるのですか!?」
「何を言ってるのだ母上っ!」
酔っ払ったサトル様が怒る。
「れいたんは俺と子供を作るのだっ。100人くらい」
「そんなに作れませんっ」
すると守美さまが目に涙を浮かべる。
「わたくしの可愛いれいたんとさとるんの、100人の……孫……」
さすがにバカすぎて、呆れるのかと思ったら……。
「最高じゃないですか~♡」
守美さまの知能も著しく低下していらしたっ。
「二人ともお酒弱すぎですっ」
「まあ、親子なので」
朱乃さんが二人の襟首を掴む。
「はいはい、あっちで酔い覚まししましょうねー」
ずりずりと、朱乃さんがサトル様たちを引きずっていく。
「やだー! れいたんともっとちゅっちゅしたーい!」
「れいたんはわたくしと100人の孫をつくるのー!」
……もうめちゃくちゃだ……。
というか、守美さまってあんなお酒弱いんだ……。
残された蒼次郎君が、隣にやってくる。
「大変だったね」
「うん……。まさか、二人があんなにお酒に弱いなんて」
「ねー、ぼくも初めて知ったよぅ」
あれ……?
「そうなの?」
「うん。そもそも、二人があんなにたくさん、楽しそうにお酒飲んでるとこ、初めて見たし」
「そうなんだ……」
普段あまりお酒を飲まない人たちなんだな……。
でも、なんだって今日は、あんなになるまで、お酒飲んだんだろう。
「てゆーか、レイちゃんって……全然酔っ払ってないね」
「そう言われると……そうね」
さっきからかなりの人たちから、お酒を飲まされてる。けど……全然酔っ払う兆候がない。
「レイちゃんウワバミだね」
「うわばみ……?」
「お酒めっちゃ強い人のこと」
「へー」
そういえば、私こっちに来るまで、全然お酒のんだことなかったな。
だから、知らなかった。こんなに、私がお酒強いだなんて。
「じゃあお嬢様っ」「お酌の続きをっ」
黒服さんたちが、またずらり、と私の前に並ぶ。
「え、えっと……その、私につぐんじゃなくて、皆さん一緒に飲みましょう?」
ぱぁ……! と皆さんが笑顔になる。
「では、私も」
真紅郎さん、朱乃さんが戻ってくる。
私と百目鬼三兄妹、そして黒服さんたちは、一緒にお酒を飲む。
……だれかとこうして、お酒飲むのって……うん、とっても楽しいなってそう思ったのだった。




