【Side】百目鬼 朱乃【一条家使用人】
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
あたしは百目鬼 朱乃。
一条の家に古くから仕える、百目鬼一族の長女さ。
あたしたち、百目鬼家は、一条家で生まれ、育っている。
だから……わかるんだ。
……今が、一番幸せな時期だってね。
「れいたん」
淺草寺から、一条家の屋敷に戻る途中。
悟様は、お嬢様の手を握ってる。
「れいたんはやめてください」
「なんでだ、れいたん」
「人が居る前では嫌でございます」
前を歩く二人が、仲睦まじく会話してらっしゃる。
「人前でなければいいんだな?」
「……それは、まあ」
「言ったな。よし、では帰ったら……」
「…………はい」
ふふふ、朱乃は嬉しいですよ、悟様。
このところ、あなたはずっと笑っていらっしゃる。
悟さまは、過酷な運命を背負って生まれた御方だ。
幼い頃、実の母が、父親に殺さた。
その後、幼いながらも、たった一人で、東都の街、そして一条の家を守り続けた。
そのつらさ、重責を……彼は決して表に出さなかった。
弱さをさらけ出す相手が、居なかったのだ。
……でも、レイお嬢様が来て、変わった。
彼の弱さを受け止めてくださる人が、現れたのだ。
そして……お嬢様。
貴女は、出会ったときから、謙虚な御方だった。
強い霊力を持ち、三つの異能を裡に宿し、極東最強の大能力者の一角となった。
けれど……その力を誇示することもなく、弱っている人のために使い続けた。これは、だれにもできることじゃあない。
増長しても、いいはずなのに。
彼女は周りに決してその力を、自慢することはなかった。
いい女性と、悟様は巡り会えた、と心からあたしは喜んだ。でも……。
お嬢様は、どこか悟様に遠慮なさってる様子だった。
心の中に秘めたる思いを、表に……出せないで居るようだった。
普通の恋人がするように、イチャイチャしたい、手をつなぎたい、接吻をしたい。そういった……人間らしい感情……欲望を、彼女はずっと胸に秘めていたように思える。
悟様は、鈍い御方だ。お側にずっといたあたしは、わかっている。
……お嬢様は、悟様がいないとき、いつもため息をついていた。それは、無意識のものなんだろう。
……彼女は、ずっとさみしがっていたのだ。もっと、仲良くなりたがっていたんだろう。でも、それを表に出すことは一度も無かった。
……彼女は自分に自信を持てないおかただ。そういう、自分の欲望というものを表に出してしまったら、きっと、悟様に嫌われてしまう。そう思って……言えなかったんだろう。自分の欲望を。
言いたくても、言えなかったんだろう。それは、自分の出自にも関係あるのかもしれない。
お嬢様は、ずっと家でゴミ屑扱いされてたようだから。本当の気持ちを、言えないでいたのだろう。
……でも。
やっと今日、レイお嬢様は、式を通じて、悟様に本音をぶつけることができた。
胸の中に仕舞っていた欲望を、さらけ出していた。
それをサトル様は真正面から受け止め、受け入れた。そうやって、二人はさらに仲良くなったように、あたしには思える。
……良かったですね、悟様。レイお嬢様。……そして、守美様。
「なんですか、朱乃?」
あたしの隣を歩いていた、守美さまが、首をかしげる。
「一条の家に来たのが、お嬢様で良かったな、と思ったところです」
「ええ、わたくしもそう思います。悟の隣に立つ女性が、レイさんで良かった」
……お嬢様とサトル様が楽しそうに会話する、その後ろで……あたしたちは話してる。
この会話は、お嬢様には聞かれていない。
守美さまも、あたしも、本気で……レイお嬢様がいて良かったとそう思ってるのだ。
「さて、朱乃。帰ったら家の者たちに命じなさい。……今夜は二人の寝所に、決して近づいてはなりませぬと」
?
ああ、なるほど……。そうか。ついに……。
「わかりました。ですが……さすがに見張りが居ない状態なのは、よろしくないのでは? 白面にお嬢様が狙われてるわけですし」
「わたくしが一晩中結界を張っておきます」
「それは……」
まあ、守美さまならそれくらいできるか。
「良いですか、二人は今良い雰囲気なのです。だれも邪魔してはいけませぬよ」
「わかっておりますとも」
「いいですね? 決して二人の寝所に近づいてはなりません。わたくしは早く孫の顔が見たいのです」
「わかっておりますってば」
「孫……レイさんの孫……絶対可愛い……孫……」
孫ほしがりすぎでしょこの人……。
まあ、それだけ、守美さまがお嬢様のことを、溺愛してるということだろう。
しかし、そうなると……。
「今夜が、一番東都の守りが手薄になりますね」
悟様が夜廻りに参加しないとなると、妖魔討伐効率がどうしても落ちてしまう。
「その辺抜かりありません。手は打っております」
「なんと。すでに準備をしていたと」
「ええ、この日のために」
どれだけ孫を心待ちにしていたんだろうか……。
まあ、何はともあれ、悟様、レイお嬢様、頑張って。
我々は、あなた様たちを、全力で支える気概がありますゆえ。
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