表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/265

年末の大騒動 4


 淺草寺にて。

 私は……式レイを通して、本当の気持ちを知った。……そして、本当の自分を、サトル様にさらけだした。


「俺も好きだよ、レイ。さっきも言ったとおり、どんなおまえでも、愛してるよ」

「サトル様……」


 彼が、ぎゅっと抱きしめてくださる。

 ……いつもより、私は多幸感を覚えていた。

「しかしレイよ、いや、れいたんよ……」

「え?」


 スッゴく真面目な顔で、サトル様が言う。


「さとるん……だろう?」

「あ、は、はい……その……まだちょっと恥ずかしくて……」


「なんでだ?」

「だって……ここ、お外だし……。人に聞かれるかも……」


「でもさっきはさとるんって呼んでくれたじゃあないか」

「うう……あれはその、その場ののりというか……」

「ノリと勢いがあればレイも外で呼んでくれるんだな? よしよし」

「うう……サトル様いじわるです。そういうの嫌い」


 ……ぷいっ、とそっぽを向く。……今までの私だったら、こんな態度とったら、嫌われてしまうって思っていた。

 でも……今は違う。こんな私も……サトル様は受け入れてくれる。


「すまない、言ったろう? 俺は、好きな子には意地悪したくなっちゃうんだ」

「……そういうの、よくないです。好きな子に意地悪したら、嫌われちゃいますよ?」

「でもレイは俺を嫌いにならないだろう?」


「なんですか、その謎の自信……もう……」

「あはは、照れてるれいたんは宇宙一可愛いな」

「ほ、ほんと……?」

「ああ、ほんと」

「さ、さとるん……」


 私たちは見つめ合う。もうなんか外とかどうでもよくなってきた……。

 サトル様と、ここでイチャイチャしたい……。


「さーとーるー?」


 私たちは、後ろを振り返る。

 笑顔の守美さまが、そこにはいた。隣には朱乃さんがいる。


「は、ははうえ……」


 サトル様から血の気が引く。一方、守美さまからは、なぜだろう、笑顔なのに激しい怒りの波動を感じた。


「朱乃から、ぜーんぶ聞きましたよ? あなたの……不甲斐ない姿を。全部。全て」


 不甲斐ない姿……?

 あ。


「あなた、なに式神に誘惑されてるの? なにあっさり、ころっと騙されてるの?」

「あ、いや! ちちちち、違うんだ母上!」


 珍しく動揺してるサトル様。

 ……ずるい。私はいつも動揺されっぱなしなのに、サトル様の心を揺らすことは一度たりともできたことがない。


 守美さまには、そういうふうに、動揺してくれるんだ。ふぅん……。


「お義母さま」

「れ、レイ! 良かった。レイが言ってくれれば母上の怒りもおさまる……」


「この人、私の偽物に鼻の下を伸ばして、デレデレしてました。しかもれいたん、さとるんってあだ名で呼び合って悦に浸ってました」

「レイぃいいいいいいいい!?」


 ふふ、サトル様、動揺してる。

 やっと、そういう表情してくれた。うれしいな。


「なんでそんな追い打ちかけるようなことを?!」

「あら、事実じゃないですか。れいたん、さとるんって……ずいぶんとデレデレしてましたよね?」


「いやまあ、そうだけどもっ」


 そんな風に話し合う私たちを見て、守美さまは……涙を流していた。


「え、ええっ? お、お義母さま……!? ど、どうなさったのですか!?」


 私はすぐに彼女に近づく。

 

「……いえ、何でもありません。レイさん」


 きゅーっ、と守美さまが私を強く抱きしめる。


「わたくしは、もう感無量です」

「は、はあ……どうしてですか?」


 守美さまは微笑んだままだ。答えてくださらない。

 でも、嫌な感じはしない。本当に嬉しそうにしてる。だから……いいかなって。


「ところで悟」


 極低温の声音で、守美さまが、サトル様に言う。


「おまえ、なに一件落着みたいな感をだしてるのですか?」

「あ、いや……その……」


「式と本物の区別も付かないどころか、あろうことか、本物を差し置いて……いちゃつくなど」


 ごごごごお……と守美さまの体から、黒いオーラのようなものが出ていた。


「違うんだ母上! な、なあレイ! 助けて!」

「いやです。事実じゃあないですか。私と式を間違えたの」

「れいぃ~……」


 情けない、サトル様の姿。そんな姿を、世間にさらけだすきっかけとなったのが、私。

 ……ちょっと、優越感を覚える。


「レイさん」


 守美様が微笑む。


「やっぱり、あなたは笑顔がとても似合ってますね」

「…………」


 笑顔。ああ、そうか。私……笑ってるんだ。嬉しいんだ。サトル様の、言葉が本当だったから。

 どんな私でも受け入れてくれる。それが……本当だってわかったから。


「お義母さま。サトル様を、あんまり虐めないであげてくださいまし」

「まあ……」


 守美さまが目を大きくむいた後、微笑む。


「まあレイさんがそう言うなら」

「ただ、また同じようなことがあってはこまりますので、しっかり鍛えてあげてくださいまし」


「それはもちろん。ビシバシと」

「お願いします。ビシバシと」


 うふふふ、と笑う私たち。

 サトル様はこわばった表情で、額に汗を掻いていた。


 ぽんぽん、と朱乃さんがサトル様の肩を叩く。


「レイが母上みたいになってる……」

「良かったじゃあないですか。大好きな女性ひとが、二人になって」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ