040話:【冬休み編】明けましておめでとう
連続投稿です!
お話は前の話からつづいてるのでご注意を!
「み、宮代っ!!」
「よーう、早いな石橋」
まるで大正時代の文豪のような気分だ。
前に何かの小説で見た、名も無き猫の飼い主で教師をやっている男にでもなったような勢いでかっこつけてみた。
あれ? あの物語の書生は別にかっこよくはなかったんだっけ?
「に、に、似合ってるぞ! その着物っ!」
「おー? そうか? 実は葵が……って近っ! 近いわ石橋っ! あと鼻息凄い!」
気が付くと、興奮しすぎて両方の鼻から鼻血をしたたらせる石橋が目の前にいた。
鼻息が荒すぎて鼻血が飛び散っている。なんか色々危ない。
しばらく落ち着かせたあとやっと神社へ向かうことにした。
「やぁやぁお二人さん! こんな所で会うとは奇遇だねぇ~!!」
「それで石橋、マロンは元気か?」
「お、かんざ……え? マロン? あ、あぁ元気だぞ?」
「あいつなんでも口に入れそうだから危なっかしいよなぁ~小さい子みたいで。あはははは」
「ゆ~う~き~く~ん!! 無視とは感心しないなぁ!!」
「なんだよ神崎? 今年もお世話になりました来年もよろしくな」
「会話を終わらせようとしないで!?」
「今日もかおるっちとは仲良しだねぇー! 麗ちゃん妬けちゃうなぁ全く」
ぶりっこポーズの神崎。元は可愛いので様になるが、視線が横を通りすぎていく和服男子に釘付けになっている点がマイナスだ。
「そう言えば、お前は何しに来たんだ?」
「俺達は……あれ? なぁ神崎、除夜の鐘って聞くと何かあるんだっけ?」
「えっと、確か除夜の鐘は煩悩を消すために聞くらしい?」
「マジかよ、煩悩の塊の神崎が消滅しちまう……」
「うえ!? ちょっ、ちょっと! 私の存在が消滅する前にせめて処女だけでも消滅させておきたかった……!」
「ドンマイ!」
「いや、まだだ! まだチャンスはあるよ! だってここにはこんなにも沢山の着物男子がいるのだもの! ちょっとナンパしてくる!」
「おー頑張れー……」
「お兄さん、カッコ良いなぁ~。私と遊ばない?」
「って俺かよ!?」
仕方ないので一緒に行動することになった。
若干石橋が怒ってる気がするが、後で石橋の家に挨拶に行くからと言ったら一瞬で機嫌が治った。
着物は元旦の日のうちに葵に連絡して返せば良いと言われているので、別に着物のままお邪魔してもいいだろう。汚さないようにだけ気を付けよう。
神社では、おみくじを引く男子や恋愛関係の絵馬を作る男子が多いことにビビったり、やけ酒で甘酒を飲みまくった酔った神崎に人気のない所に連れ込まれたりしたがとりあえず除夜の鐘を無事聞きおえた。
神崎は消滅しなかったが、トイレに消えた。
今頃リバースしていることだろう。
「石橋、明けましておめでとう」
「明けましておめでとう! 宮代、今年もよろしくな?」
「あぁ、こちらこそよろしく!」
さて、そのあとは石橋の家へ向かう。
実際は元旦と言っても一応深夜だし送り届けるくらいのつもりだった。
しかし、そこでアクシデントが……
「おぉ祐樹君、明けましておめでとう! 薫、じゃあ私とお父さんは朝に間に合うよう田舎の実家に挨拶のため今から出掛けるけど、本当に一緒に行かなくていいの? お年玉貰えないわよ?」
「う、うるせーな! もう高校生なんだからいいんだよ!」
「祐樹君には申し訳ないな、なんのおもてなしも出来ず……」
「あ、いえ、大丈夫ですんで! こっちこそ、何も知らずにお邪魔しちゃったみたいで……」
「それじゃ行ってきます! 薫、あんた羽目外しすぎないのよ!」
初耳なんだけど。
家の人出掛けるってどういう……
隣を見ると嬉しそうな顔の石橋がいた。
こいつ、これ知ってて家に呼んだな?
笑顔がこえーよ……
……
朝だ。スズメがチュンチュンと鳴いている。
起きると隣で眼福な格好のままベッドに座る石橋がいた。
「おはよう、ゆ、ゆうき」
呼び捨てだ……
あぁそう言えば寝る前にお互い二人きりの時は呼び捨てにしようってことになったんだっけか。
「ふぁー……おはよ。お前……薫はなんでチョコトッキーくわえて、たそがれてるんだ……? あ、そういえば前からちょいちょいトッキー食べてるけどトッキー大好きちゃんか?」
「こ、これは一度やってみたかっだってたシチュなんだよ! だってタバコ吸ったら宮代に怒られんだもん!!」
なんだこいつ朝っぱら若干萌えた。




