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素晴らしき貞操逆転世界  作者: エイシ
第一部:一学年目
36/55

036話:【冬休み編】クリスマスパーティー

 ──クリスマスパーティー



 それは我が家で開かれる非リア充達の祭典。

 真一様のポケットマネーでケーキも用意していた。

 シャンメリーなんて人数分用意してとても盛り上がる予定のはずだった。

 しかし、暗い。みな、このパーティーが始まらないことに少なからずイライラしているだろう。



 それもこれも全部石橋のせいだ。

 あいつ、俺がメールしてもウンともスンとも返してこない。

 いつもだったら十秒ほどで返ってくるはずのメールが返ってこないのは正直異常事態だった。



「と、とりあえず石橋は遅刻しそうだから先に始めよっか!」

「りょうかーい! じゃ、かおるんのシャンメリーは私が頂いておこうかな!」

「おい、神崎に渡したらなくなるかはダメだ。てかお前たちそんなに仲良かったの?」

「ん? フツーだよフツー」

「宮代君、ケーキは切っちゃっていいかな!?」

「おう、いいぞ! 切ってくれる葵は特別にチョコプレートを食べていいぞ!」

「えぇそれ私も狙ってたのにぃ! でも仕方ないからあげちゃおう! 私器が大きいから! 因みに胸も大きいよ!」

「ははは、色目使ってもダメだよ神崎さん。葵はてんでそう言うのダメだから」

「そ、そんなことないよ真一っ! あっ塚本君は甘いの苦手だっけ?」

「あぁ俺の分は梓にあげてくれ」

「えっ、あ、ありがとう……!」

「はいこれ、宮代君の妹さんの分」

「あ、ありがとうございます!」

「……ふふふ」




 神崎が騒ぎ、葵がケーキを切り分け、真一はゆったりくつろいで、塚本兄妹は……うん、どうでもよくて、春香はケーキで満足そうで、委員長は静かに笑っていた。

 みんな、一様に楽しそうにしてくれている。だけどやっぱり何かが足りなかった。




「祐ちゃん……さっきからケータイ見てばかり。石橋さんは何かあったんじゃないの?」

「いや、大丈夫だよ! ただの寝坊だって……きっと」



 みんな楽しんでくれているのに雰囲気を壊すわけにはいかなかった。石橋が心配だけど、何かあったと決まったわけじゃないのだから。



「祐樹君。やっぱりせっかくなんだからみんな揃ってからがいいよ、それにきっと石橋さんが一番楽しみにしていたよ?」 

「うっ……!」



 確かにそうだ。あいつからのメールは最近クリスマスの話題が多かった……

 俺はどうすべきなんだろう、こういうときはどうすべきなんだろう。



「祐樹、なんか知らんがもう後悔するなよ? モシャモシャ」

「神崎……お前良いこと言うときはせめて食うのやめろ。うん、そうだな! クリスマスパーティーはそもそも石橋が言い出したんだ! 俺はちょっと石橋を探そうと思う。みんなも手伝ってくれないか!?」

「えっ、石橋さん遅刻じゃないの!?」

「実は……」





 俺は石橋と今日になってからメールも電話も全く繋がらなく、連絡がとれないこと。昨日ゲーセンで元不良仲間と一悶着あったことなどをみんなに話した。

 その上で捜索したいとみんなにはもう一度頼み込んだ。


 直ぐに委員長が石場の家に電話をかけてくれる。

 林間学校の連絡のために一応聞いておいたらしい。

 便りがいがありすぎる委員長に惚れそうになった。


 しかし家の人と話して分かったのは既に二時間前には家を出たとのことだった。


 それであればおかしい。

 俺達は慌て出す。とりあえず春香を置いて外に出て、石橋の家への道を歩くことにした。

 二時間もあれば歩いても到着するのだ、明らかにおかしかった。



「昨日のあの(まつり)って女の子と何かあったんじゃないかな……そうだ! 委員長、舎弟ちゃ……じゃなかったえーっと、茜ちゃんの電話番号わかる!?」


 俺達はそれぞれ二・三人にバラけて捜索していたのだが丁度、委員長は俺と一緒に捜索をしてくれていた。なんて幸運!

 もちろん委員長は茜ちゃんの電話番号を知っていたので電話をかけてみる。




「もしもし! 俺、宮代だけど!」

「もーなにー!? 今彼氏と三回戦目の真っ最中だったのにぃ!!」

「わ、悪いっ! 実は石橋が祭って女の子と何かあったかもしれなくて、二人がいそうな場所わかる!?」



 必死だった。三回戦目っていったい何が三回戦目なのかすんごく聞きたかったけれど、そんな場合じゃないくらい必死だった。

 そして聞き出せたのはとある橋の下についてだった。

 昔はよく不良仲間達とそこにたむろしていたというのだ。

 俺はありがとうと伝えて電話を切るとそこへむかってダッシュした。










 ◇◇◇


「あぁ!? 『お前らみたいな』ってなんだよ! あぁオイ!? お前もこっち側だろがよぉ!! 髪を黒く染めたからなんだ、お前もさんざんバカやってた仲間だろうがよぉぉぉ!!」



 腹を殴る拳は硬く握られていて、腹に突き立てられる度に息を吸うのもけっこうキツイ。

 でも、俺からは手を出すつもりはない。

 あぁ、早く終われ。

 終わって、それから怪我が引いた頃に宮代に、みんなに謝るんだ。

 それで私はもう不良なんて呼ばれないように生きて、そうすればきっと宮代にも……



「……ふぅ……ふぅ、私がなんで怒ってるか判るか!? 今さらもう話しかけないでくれじゃねぇだろ? あいつか? あの男のせいで私達の仲が壊れるのか? 薫、お前にとって私達が、仲間が、そんなもんだったっていうのが私は堪らなく悔しいんだよっ!」

「違う、あいつは……男は関係なウブッ」

「庇ってんじゃねぇ! 今まで庇いあって、庇われてきたのを忘れたのかよぉ!?」



 次は顔。

 もう瞼は腫れてると思う。

 目が怖いぞって今までよりもたくさん言われそうだな……はは。

 あぁ早く終わらないかな……



「なぁ、もういいだろ? 昔みたく、私達でなにも考えずに遊べばいいじゃん、別に男なんて何処にでもいるし、いつだって……」

「いないんだ、ごんなに……ごんなに好ぎになったやづば……」

「黙れよ! 黙ってろよぉ!!」



 祭は泣いていた。泣きながら殴っていた。

 中学のころ、厳しい親が嫌になったときに出会った友達。

 喧嘩も沢山したし、一緒になって他の不良と戦ったこともある。次第に仲間も増えて、ただ、どうでもいいことを話すために集まるだけでも楽しかった。

 祭は確かに高校に進学するまで俺の親友だった……



 ごめん。



 ごめんな。



 俺……最低なことしてるよな……






 不良をもうやめたいから、友達に友達をやめてと言う。本当に最低だ。



 そんな時だった。

 祭は思いっきり左から突っ込まれた男に殴られた。








「えっ……ゆうぎ……?」

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