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素晴らしき貞操逆転世界  作者: エイシ
第一部:一学年目
27/55

027話:夏祭り

「いや~暑いねぇ~」



 そう言って、浴衣の胸元を拡げ、団扇で風を仰ぎ入れる神崎。

 オイ、やめろ、なんか色々と見えてるから、オイ。


 まぁ……でもね、俺はもう童貞とかそんなお子ちゃまじゃないし?

 別に、神崎だろうと誰だろうと、艶めかしいうなじや、綺麗な肌の鎖骨、そして明るい色に包まれたブラと谷間なんて余裕でガン見できますけど?

 できますけどぉ……


 俺は冷や汗がナイアガラだった。


 左側にいる神崎の胸元に釘づけになっている、そんな俺の右側、つまり反対側では唯が俺の右手を握っているからだ。

 今俺は左側でいやらしい視線を神崎に向けているが、絶対これ右側では俺のこと睨んでるよ唯さん。


 今日の夏祭り、最初は紺色の浴衣姿でやって来た唯が眩しかった。

 もう、なんというか後光が眩しすぎて唯のことを全く見れなかった。


 そんな菩薩のような唯が今は怖いんだよほんとに……




「そ、そうだ! 唯、なんか買ってあげようか!? わたがしとかどうよ!?」


 俺はご機嫌取りに加え、唯に何かを言われる前にまくしたてる。

 大丈夫、少し彼女以外の女の子の胸を見ただけだ、このまま押し切れば……イケるっ!!


「りんご飴とかも良いよなぁ! あ、でもたこ焼きだけはダメだ! 祭りで出るたこ焼きはだいたいがべちゃべちゃでハズレだからな!! 同様にお好み焼きも若干の不安が残る! つまり焼きそばこそが正義! そう、焼きそばイズナンバーワンンンン!!!」


「う、うん……えっと、じゃ焼きそば食べよっか……」


「はぁはぁ……そうしよう」


「祐樹何はぁはぁしてんの~? 両手に華で興奮かぁ~おっ? おっ?」


「だまれ」



 こいつ、やっぱりウザい。

 いや、俺が神崎を見すぎたのが悪いんだが。







 ……


 俺と唯は町の夏祭りに遊びに来ていた。

 夏の風物詩とあって凄い人混みだ。

 そんな人混みの中で俺達はゴミに出会う。

 間違えた。神崎だ。


 唯がそのゴミ崎を誘ったので三人で歩くことになったのだが、何故か俺を真ん中に歩いている。

 うん、何故だ?




「なぁ、なんで俺が真ん中なんだよ? 唯と神崎が並んだ方が……」

「やれやれ、祐樹はそんなことも分からないのかい? 君はこの前海でナンパにあったと言うじゃないか? これは女子二人で男子を囲い、絶対に手を出させねーぞっていう周りへの威嚇なのだよ!!! はぁーっはっはっは!!」

「あ、そう」



 唯は心配してたのかな? 別にナンパされても付いて行くつもりなんかないのに。

 ……たぶん。


 焼きそばを買い、食べるために少し路地に入る。

 人の流れと屋台を見ながら俺達は適当に腰掛け食事をするのだった。



「そう言えばさ、夏休みの宿題終わった?」


「「え?」」



 俺と神崎は遠い目をしている。

 神崎と同じという部分は若干癪だが、仕方ない。

 俺達は今、何も聞こえない無我の境地へ意識を飛び立たせたのだから。



「いや、だからさぁ、あと三日で夏休み終わりだけ……」

「あーあーあーあー!!!」



 突然叫びながら立ち上がる神崎。

 やめろ、ビックリするから。

 見ていると焼きそばを持ちながら走って何処かへ去っていった。

 なんだあいつ? 何かにとりつかれたのか?


 暫くすると神崎からメールが届く。


「迷っちゃった! テヘペロ☆」


 ダメだあいつは放っておこう。



「ど、どうしたのかな麗ちゃん? 夏休みの宿題の話をし……」

「そんなことより愛してる唯!」



 俺は真剣な顔で見つめながら愛を囁いた。

 断じて現実逃避ではない。これは宿題に手をつけていないとかそう言うことからの逃亡行為ではない。

 俺は唯を愛しているのだ。突然夏休みが終わるという会話の途中で愛を囁いてしまうのは致し方ないことなのだ。



「え、えへへ……わ、私もだよ……」



 焼きそばを置き、俺が見つめているせいか赤い顔で下を向く唯。

 俺はそんな唯を抱きしめる。



「夏休みが終わったらなかなか二人で会えないから、こうしている時間はそんなこと忘れて楽しもう」

「う、うん!」



 なんとか夏休みの宿題の話題を回避した。

 これで明日からの地獄の日々を今思い返すこともないだろう。


 俺はあれだ、やれば出来る子タイプなのでギリギリまで宿題はやらないタイプなのだ。けっして忘れていた訳ではない。

 次は唯と何処にデートに行こうとか毎日そればっかり考えていて、宿題を忘れていた訳ではないのだ!




 そのあとは射的をしてみたり、水ヨーヨーを釣ってみたり、型抜きをしてみたり、色々と楽しんでみた。

 やっぱり青春はこうじゃないとな!

 俺は大満足だ。








「またねっ!」

「おう! またー」



 まだまだ賑やかなお祭りの中、あまり遅くなっては悪いと唯が気を使うので俺はいつも通りその配慮に応えて別れることになる。

 俺は浴衣姿で綺麗な唯と別れた。

 そう言えば誰かを忘れている気もするが気にはしない。


 俺はこの時幸せだった。

 女だらけの学校に入学して期待いっぱいだったのだが、意外と現実は厳しくて、そんなときに世界が変わったりして……

 結局は良かったのかな? 色んな女子とも話せるようになったし、クラス以外でも友達が出来た。何より今の俺には唯という彼女が出来た。

 初めての彼女だったけど、唯の俺を大事にしている気持ちは沢山伝わってくる。それに、何より顔もそうだけど仕草なんかも可愛い。俺も彼女が大好きになっていた。


 このままあとの高校生活ずっと一緒に……


 俺は、そんなことを考えながら家に歩いていた。









 ……だけど、そのあと残り三日の夏休みの間も、そして学校が始まっても俺は唯と会うことはなかった。

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