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27話 捜索

「さあ、みなさん、行きましょうか。」

 人垣の向こうで、アーバンの親父さんが声を上げた。

「よし、じゃあ行きましょう。」

 アライグマのタルムおじさんが続いた。バーガンディおじさんも、ポラリスさんも松明を掲げ頷いた。

 おばさんの顔を見上げると、

「大人たちで、アーバンを探しに山に入るのよ。」

 おばさんは眉間に皺を寄せて苦しそうな顔をした。

「早くアーバンを探さないと。」

 僕は松明を手に山へ入っていく大人たちの群れを割って、アーバンの親父さんに走りよった。


「おじさん!」

「クロム。危ないから麓で待っていてくれ。必ずアーバンを見つけてくるから。」

 僕は首を振った。

「おじさん、僕も連れて行って。」

「駄目だ。危険すぎる。」

 僕を振り払おうとするおじさんの腰のベルトを力いっぱい握り締めた。

「おじさん、僕はアーバンともう3回モラウル山に入っている。アーバンが行こうとしていた分岐点の上。頂上付近の地帯へ続く道もよく知っている。僕を連れていってくれれば、間違わずに道案内ができる。アーバンがどこへ行こうとしていたのか僕がよく知っているんだ!」

「クロム。」

 おじさんの声が低く、波を打ったように静かになった人垣の間に響いた。

「駄目だ。君にまで何かあったら大変だ。シルクさんに申し訳が立たない。」

 シルクは僕の母さんの名前だ。

「僕が子供だから。危ないから。役に立たないから。だからなの!でも、きっと僕は役に立つよ。こんなところで待っているなんて。何もできずに待っているなんて耐えられない!」

 アーバンの笑った顔が脳裏に浮かんで、僕は心配で気が変になりそうだった。こうしている間にも、アーバンはこの暗い山の中で道に迷っているかもしれない。それとも怪我をして動けないでいるのかもしれない。じっとしてなんていられなかった。

「クロム。おじさんたちを信じてくれ。必ずアーバンは無事に連れて戻るから。」

 おじさんの低く唸るような口調は、有無を言わせぬ拒否の言葉だった。


 僕は次の言葉が出なかった。おじさんは僕の肩に手を乗せると、踵を返して山の登山口に向かった。

 その時だった。

 ガサ、ガサ。

 と、木の葉がこすれるような音がしたかと思うと、ドスンと何かが落ちてくるような音がした。

 その方角を目にしたが、暗さと立ち並ぶ木々の枝葉で何も見えない。

「何だろう。」

 僕は飛び出した。

「待ちなさい。おおかみかもしれない。」

 僕らの天敵の名を彼は口にした。

 が、手を伸ばしたポラリスおじさんの手を振りほどいて、一目散に音がした方向へ走った。


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