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13話 冬の準備

 僕は外へ出て、辺りの景色を眺めてみた。

 闇はますます濃くなり、どこからか虫の声が聞こえてきた。


 僕のお隣さんは牛のフォレストの一家だったが、小半時も西の方向へ歩いていかないと家が見えてこないくらい離れている。お父さんのフォレストと、その奥さん、そして小さい学校(小学校のこと)に通う男の子牛のいる一家だ。

 隣とはいっても、こんなに離れているんだから、特に夜なんて、ホントに虫の音くらいしか聞こえてこないくらい静かだ。

 涼しい風が部屋の窓から入り込んできた。もう夜は毛布を出さないと肌寒くて眠れないくらいの気候になってきた。あっというまに山は冬になる。

 冬になる前に、ひと冬過ごせるだけの薪を採ってきておかなければならないし、雪がひどく市場には降りられなくなるから、その前に出来るだけの作物を売って、冬が越せるだけの生活に要る物を買わなくてはいけない。

 そんなことをあれこれと思い巡らせながら毛布に包まっているうちに、僕は昼間の疲れが出たのか毛布の温かみが心地よく感じられ、良い気分になってきた。そのまま僕は眠りに落ちた。



 市場でのことがあってから2、3日僕はちょっと落ち込んでいたが、今はすっかり気を取り直していた。なんといっても、もうそろそろ冬の準備をしておかなければならず、僕はいろんな作業で忙しかった。

 まず、薪の準備だ。干しベーコンやチーズ、乾パンの用意。市場に降りることが出来るうちに、めいいっぱい作物を作り、売りに行く準備をしなければならない。

 やらなければいけないことがいっぱいある時はいい。僕はそのことに追われていればいいのだから。 よけいなことを考える間もなく、日中はくたくたになるまで働き、夜は泥ように眠ればいい。シンプルな生活。毎日こんなふうに過ごしていればいいのかもしれない。

 秋の日は短い。お天気の良い日は空気が澄んで、動くと汗ばんでくるが、風が涼しく気持ちが良い。眼前に見えるモラウル山の紅葉もそろそろ終わりだ。


 また、ふとおおかみのことを思い出した。

 モラウル山を眺めると思い出してしまう。

 あれから、僕は心の中にちょっとした計画みたいなものを秘めていた。

 それはあの赤い実を採りにもう一度、モラウル山に入ってみようかということだ。

 あの実がうまく採れたら市場に持っていこう。木の実の値段は10キロ1000ベウルから1500ベウルが相場だけど、あの実なら1200ベウルから1700ベウルくらいの値がつくだろう。そうすれば今年の冬は楽に越せるに違いない。

 先日はひとりで行って道に迷った。今度は失敗しないように、アーバンに同行してもらうつもりだ。 そして、実が採れたらふたりで山分けだ。でもガイドしてもらうアーバンには多めに分け前は採ってもらうつもりでいた。


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