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魔法を使えないなんてもったいない!もう一度学園に逆戻りします!!  作者: 鈴埜


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5.火魔法ファイアーパンチ

 魔法の実技の基礎は一応全員が受ける。基礎の基礎の魔法だからだ。

 これはすでに予習済みだ。そして、以前のセラフィーナはこれすらほとんど出せなかったのだ。魔力を体内に巡らせて、身体の末端から、魔力を自分の考える魔法に変換して放出する。

 末端であるから、指先、手のひらが一般的。出そうと思えば足先からも理論上は不可能ではない。ただ、足はあまり優雅でなく、ほとんどが手先からの魔力放出となる。しかし、いざというときのために、――例えば手足を縛られているときや、腕に守るべきものを抱えているとき、咄嗟に別の箇所から魔法を出せるようにしなければと、私は考えていた。

 ようはどこかに集中させればいいのだ。なんなら頭突きをしながら魔法を放つことだって論理的には不可能ではない。

 お上品な貴族出身の魔法使いにはとうてい考えつかないことかもしれないが、もしものときに咄嗟に出来るよう考えておくのは――ちょっと楽しかった。


「さあみなさん、遠慮していては時間がなくなります。今日は多少なりとも魔法を出せることを目標としましょう」


 過去のセラフィーナは簡単なファイアーボールすら出せなかった。得意属性は風だが、今日はファイアーボールリベンジといこう。今の私はセラフィーナでありセラフィーナではない。新生セラフィーナだ。


 とはいえ、まずは学生たち。彼らがメインだ。私だってそこら辺は心得ている。とくに王女は一応魔法の実技を学ぶのなら学んでも良いとは許可を得ている。だが、練習中の事故などを考えるとそれも難しい。彼女の最初で最後の実技になるかもしれないので、暖かく見守りたい。


 ご学友に励まされ、王女も手のひらを前に出して集中していた。

 ちらほらと、かなり先にある的へ向けて魔法を放って当たっている学生もいた。

 的の向こうには土壁が幾重にも作られていて、方向さえ合っていればそうそう間違いはない。


「きゃああっ!」

 指先から放たれたウォーターカッターの勢いがありすぎて、その場で踏みとどまれなかった女子学生が派手に転んでいた。

 自身も、あたりも水浸しで、本人が泣きそうになっている。

 あー、あったなぁ。毎年起こる、お約束の展開だ。


「魔法の才能がおありなのですね、力に身体の方がついていけなかったようです。これからコントロールを学んでいけば素晴らしい魔法使いになれますよ」

 手を差し伸べ、引っ張り立たせると、彼女はありがとうございますと先ほどよりは明るい表情でお礼を言った。


「さあ、ヴィクトリア様もどうぞ」

 私が促すと、やる気十分なようで遠くの的を見据える。

「ファイアボール」

 手を真っ直ぐ前に出して集中すると、握りこぶしほどの火の玉が前へ進んで、落ちた。


「初めてにしては上出来だと思います」

 的に届かなかったことに少し不満だったようで、王女は口を引き結んでいた。

 そんな様子に学友の一人が私へ話しかける。

「セラフィーナ様は魔法はどの程度使えるのですか?」

 それに対して私は胸を張って答える。

「まったく使えません」

「えっ!?」

「在学中は放出さえできませんでした」

 偉ぶって言うことではないが、私は過去の私も受け入れているのだ。今の私が頑張ればよいと。


「ですが、最近一緒に授業を見て来て、今なら出来る気がしますね」

 根拠のない私の、まったく恥じぬその姿に、質問をしたご学友はくすりと笑った。嫌な笑い方ではなかった。釣られて王女も口元を緩める。


「それでは、セラフィーナ様にやっていただきましょう」

 そう、声を掛けてきたのは一年の火魔法の教師だった。


「フラーマ先生。お久しぶりです」

「お久しぶり。とは言っても貴方は私の講座には顔をお出しになりませんでしたが」

「あの頃は魔法はまったく、でしたから」

 興味が無かったからと言おうとして慌てて踏みとどまる。さすがに言い方が悪い。

「座学の基礎魔法学は真面目に聞いていたそうですけど、実技はどうでしょうね」

 さあ、と促されて私は的を見据えた。

 火はそこまで適性はない。家で花瓶を割ったのは風だった。あの後、家の中で魔法を使ったことを散々怒られたが、何度練習してもやはり私の魔法はへろへろとあらぬ方向へ向かう。

「ファイアーボール」

 以前は放出すらできなかった。

 それが、手のひらからぽっと赤い、炎が噴き出し、ふらふらっと前方に、落ちた。王女よりずっと手前に。


 後ろでくすりとフラーマ先生が笑った。

「魔法を学び直したいと聞いておりましたが……その必要はありまして?」

 うーん。確かにこれでは意味がない。まっすぐ飛ばない。勢いが足りないのか。放出する魔力量が足りないのか。

「フラーマ先生、お言葉ですが!」

 王女が何か言おうとしたところで、私は拳を固め、ぐっと脇を締める。

 右手に力を、私の全力を込める。


 つまり勢いが足りない。

 真っ直ぐだ。

 真っ直ぐストレートパンチファイアーボール。


「ファイアーボール」

 そう唱えると同時に、右ストレートを遠く離れた的へ向ける。

 ビュッっと音がして、鍛え上げた私の拳は遠く離れた的を真っ直ぐ見据えた。

 遠く離れた的だ。


 拳とともに風が起こる。さらには拳の先に炎が現れた。渾身の力を拳にのせる。風に巻き込まれ、炎がゴオオオと音を立てて増大した。



 的は、消し炭となり、私の拳ファイアーボールはその向こうの一枚目の土壁をえぐり、焦がした。



「先生!!! ファイアーボール出来ましたっ!!!!」

 真っ直ぐ飛ばす力が足りないのだ。それを拳の勢いで補った。

 おお、ファイアーボール。なかなかだ。


「セラフィーナは魔法も使えるのね!! すごいわ」

「ふっ……魔法に関しては在学中は落ちこぼれでした」

 たぶんアレね。考えるな感じろタイプなのだ、私、セラフィーナは。

 あと、やっぱりこの筋力は衰えさせてはいけない。朝の鍛錬きちんとやろう。


 後ろで、フラーマ先生が、魔法? と疑問符を飛ばしていた。たぶんだが、私が魔法を使えることが不思議でならないのだろう。わかる。だって本当に実技落ちこぼれだった。基礎は三回くらいあるのだが、その三回を受けたらもう魔法に見向きもしなかった。

 連携などがあるから、魔法の種類などは知っておくべきなのに、それすらも拒否していたのが過去のセラフィーナだ。

 しかし、もう私は魔法の楽しさを知ってしまった。


 手から火が出るとかもう、最高!!!!!





 拝啓 レナードお兄様

 ヴィクトリア様の護衛は順調です。決められたことをこなす日々から、自分で選んで学ぶということに戸惑いながらも楽しんでおられるようです。

 そして、私、とうとう、魔法を使うことが出来ました! ファイアーボールが出せたんです。以前は炎の欠片すらみられなかったのに。

 こうやって学園へもう一度来ることが出来るよう手配してくださったお兄様には感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
「そうさ、魔法は魂で撃つものだぜ!」
燃える魔拳!
なんかスーパーロボットの拳が飛んでくやつみたいやんねw
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