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魔法を使えないなんてもったいない!もう一度学園に逆戻りします!!  作者: 鈴埜


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21.ロロノリア鳥狩り

 全身が素材のような対象は、穴に埋めるのが一番だ。その上で急所を狙う。

 このとき掘る穴の大きさが重要なのだ。


「それぞれ穴を掘ってください。一番早く適切な穴の大きさを掘ることができた者は、帰りグレイドル先生と一時間ほど馬を交代してもいいですよ」


 許可は取っていないが、巻き込まれたんだからこれくらい巻き込んでも問題はないだろう。

 生徒たちは自分の荷物から取り出した折りたたみのショベルを取り出し必死に掘り出した。これは、学園に帰った後も朝夕の走り込みを推奨しよう。この程度では騎士団の最初のしごきすらまっとうできないだろう。


 そういえば、新人訓練のとき、同じく入った同期たちはバタバタと倒れていたな。学園の頃から体力作りの必要性を説いておかねばならない。


「この程度で息が上がっていては困りますね。もっと深く! ロロノリア鳥は体長二メートルはあります。それがすっぽりと入るくらいにしなければなりません」


 そうすれば、罠にはまったロロノリア鳥は動くことが難しくなる。羽根を羽ばたかせることにより、細かく切り裂く風魔法を使う。空を飛ぶことはないが、その風魔法を駆使して滑空することはできた。丈夫な二本の足と風魔法で高い木の上に上り、獲物へ飛びかかる、樹林の中では厄介な敵なのだ。


「こちらの罠は問題なし。では蓋を」

 長い枝を格子状に組み、その上に葉をかぶせる。さらに土、葉と重ねたあと、中央に枝に赤い布をつけて置いておくのだ。


 直径一メートルほどの罠は、掘り終えたあと上るのに手を借りなければ上がれない。私はいつも掘る係で、父に引っ張り上げられていた。


 縁を足で踏みしめ、穴の中の生徒に手を貸す。


 本来は五人が同時に穴を掘るのは危険なのだが、まあ、今は私がいるので許されよう。


 罠はこの後煮炊きをする少し開けた場所の周囲に作り上げた。

 グレイドル先生の班とは別だ。

 マキナ先生はこちらに一緒にやってきた。二人の馬は森の外に放してある。訓練された馬は呼べばすぐ来るのだ。呼び寄せる魔道具もあった。


「全部で八つ、四方へと、ずらして内側にもう四つを。終わったらすぐに次に取りかかるよう」


 一つ目を終えた生徒がなんともいえない顔をしていた。

 周囲にはまだ獣の気配はしないので、私も一つ掘ることにする。

 身体強化を駆使すれば、ものの十分で出来上がった。幼い頃はこれを身体強化なしで作っていたので上達するまではかなり大変だった。


「セラフィーナさんは誰よりも早いですね」

「ロロノリア鳥狩りは得意なのです。小さな頃から父や兄について大樹林で狩りをしていました。比較的大樹林の縁に現れる、子どもの私でも相手をしやすい魔物なのです」

「……子どものころから、ですか」

「はい。七歳には完璧に仕留められるようになりました」


 フォルツァ領ではロロノリア鳥狩りは子どもの仕事だ。大樹林の中でも弱い部類だった。同時に、ロロノリア鳥を狩れて半人前と認めてもらえ、それより中へと連れて行ってもらえるのだ。ロロノリア鳥を確保できない子どもはいつまでたってもそこまでだった。


「兄様たちは五歳の時には仕留めたとおっしゃっていましたし、私はかなり時間がかかったほうです」


 五歳、とつぶやく声が聞こえる。

 まあ確かに五歳は早い。最年少だ。さすが兄様たちだった。


「さあ、手が止まっています。日が暮れる前に仕上げなければ。終わった人はすぐもう一つ。皆で協力して作り上げましょう」


 ロロノリア鳥狩りはここからが本番だ。


 罠が五割、残り五割は餌のおいしさという。

 開けた場所で野営をするのは、木の上からの奇襲を避けるため。彼の者たちにはどうしても地面を走って来てもらわねばならなかった。

 走ってきたところに落ちてもらうしかないのだ。

 そのためには、罠の中心に、夢中になってひた走るしかなくなる旨そうな餌がなくてはならない。


 つまり、我々だ。


「サーチ系の魔法は禁じます。この辺りはロロノリア鳥くらいしかでません。煮炊きをして匂いは流れました。あとは目の良いロロノリア鳥が我々を目視し、理性を失った状態で突っ込んでくるのを待つのみです。この小さな薪は火を絶やさないように。この煙にロロノリア鳥の理性を奪う薬草成分が含まれています」


 目が良いロロノリア鳥だが、赤やオレンジといった色の見分けが苦手らしい。自分たちがかからぬように赤い布を目印とするのはそのためだ。

 さらに、滑空できないとなると全方向から取り囲んで狩りをする習性があった。そう、奴らは集団で狩りをするのだ。


 持ち込んだ魔物の肉を焼き、温かいスープを振る舞われ、学生たちはようやく人心地ついていた。


 が、甘い。

 こちらが落ち着いたということは、匂いに誘われているあちらも十分近づく時間があったということだ。


「セラフィーナ様」

 学生の一人がふと顔を上げた。

 不安そうな目。

 なかなか、聡い者がいたようだ。


「そうですね。みなさん、剣をいつでも抜けるよう準備し、互いの距離を保つように。抜く剣で仲間を傷付けないよう。器などは中央に寄せて。もうすぐ始まります」


 え、っと一瞬理解をできない生徒たちに、セラフィーナは笑顔で告げた。


「囲まれていますよ」


 餌である私たちは、どうやら彼らのお眼鏡にかなったようだった。

 事態の急変に慌てた生徒がスープをこぼす。もったいない。野営時の気の緩みも課題とせねばならないようだ。これは、寝ずの番はまだ無理だろう。この後グレイドル先生と合流し、仮眠を取る際は、グレイドル先生と私が交代の方がいいかもしれない。


 こちらは火を焚いている。明るいので木々の奥はさらに暗く見えた。

 そこから、ギェ、ギェ、と鳴き声がして、大きなロロノリア鳥が姿を現す。


「で、出たっ!」

「これは囮です。一番大きい者がこうやって気を引き、後ろや横から攻めてくるのが定石です」

 ロロノリア鳥は――ライオンのような狩りをする。そう、ライオンだ。オスが風上で匂いを振りまき、風下に逃げる草食動物をメスが狩る。時折思い出す。狩りなんて、したことがなかったのに、同時に当たり前にこなしていた記憶もある。なんとも不思議な感覚だ。


「来ます! 外側を向いて、円陣に! ほとんどが穴にはまりますがたまに突破するものがいるので、それには皆で全力で当たります! マキナ先生は中央へ!」

 護衛対象がいるのも良い訓練だ。


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