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89#抵抗者(ウイルスレジスタンス)

 ゾンビ達と壮絶な鬼ごっこを繰り返した渡は。


 ようやく、コンビニまで到着した。


 しかし、やっと入ったコンビニには既に目ぼしい物は無く、雑誌や電気小物類以外はまるでなかった。


「うわぁ 乾電池もねえよ……まいったなぁ……」


 しかし、渡は現状を深刻に受け止める事無く、次のコンビニとネットカフェを探しに出た。


 渡は運の良いことに、出会うゾンビ達は少数で、囲まれた事が無い。


 コンビニを7店舗も渡り歩いた辺りで、やっといくつか品揃えのあるコンビニに入れた。


「しかし、生きている人間に会わないのは何故だ? いくらなんでも誰かしら居るだろう?」


 コンビニの中を買い物かごを持って、物色している渡。


 渡は気づかない、品揃えの豊富なコンビニと何も残っていないコンビニの違いに……


 コンビニのバックヤードから3体のゾンビが渡の存在を察知して、やって来た。


「う"お"~」「ア~」「う~~」



 渡はビックリして、大きな悲鳴を上げた。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 慌てながらも一番近くにいるゾンビを鉄棒で殴る、しかしゾンビにダメージを受け止める様子は見られない。


 渡が苦戦している間に、渡が悲鳴を上げた影響で、バックヤードからさらに数体のゾンビがでてきた。


「だ、だめだぁ!」


 商品の棚を崩して、なんとか脱出する隙を見つけた渡は一目散に逃げた。



 ……

 …………

 ………………


 幸運にもゾンビ達から逃げ延びた渡は、念願のネットカフェに逃げ延びた。



「ちっっくしょうっ! 停電でネット使えねぇぇぇぇぇ!」


 渡は心を切り替えて、軽食類をかき集め、明るい場所を選び、大量の漫画本を抱えて、休むことにした。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 七日目 (5月11日)


 渡の体に異変がおきた。



「あれぇ、なんか体の調子が悪いなぁ……ゾンビ物のマンガを読みすぎかな?」



 渡は現状の対策をゾンビに物の漫画を見る事で、対策を練ろうとしていた。


 内約は『ゾンビ恋愛物』『学園ゾンビ物』『ゾンビ刑事物』の漫画本で、完全に的外れだった。



 しかし馬鹿な渡でも、『怪我』と『不調』の単語からある事が思い浮かんだ。

 それは『感染』の2文字だ。


 渡は自分の腕にある2つの傷を見る……触ってみる。

 痛くない、まさかもう感染してるのか?

 不安気な渡だった。




 時間もだいぶ経過し薄暗なってきて、漫画が読めなくなった時間帯、渡の具合は本格的に悪くなっていた。



 既に渡の意識は無く、うなされている……


 渡はうなされながら、幼少時代の夢をみていた。



 ~~

『我が息子……渡は残念だが馬鹿だ……このまま普通に育ててはまともな大人にならないだろう……』


『どうします? あなた』


『レールを敷こう……今から徹底的に鍛え上げ、将来、私たちがいなくても、辛い思いをせずに生きていける環境にぶち込もう』


 それから、多彩な格闘技を習い、塾にも通った。

 出来ない事があれば出来るまでやらされた。

 そして休日は、遊びと言う名の拷問、『ブロックで飛行機とロボット作れ!』と言われて出来が悪ければ何度もやり直しをさせられた。


 成長してからも、高度な工作もやらされた。


 そんな、両親との地獄の日々を思い出していた。

 もう、忘れたはずの苦い記憶だったのに……

 ~~



 翌朝……


 渡は目が覚めた。


「ふう……よい寝覚めだ……しかしなんだ? 体が軽い……力がみなぎる……頭がすっきりした感じもする」


 渡は腕を見る……


「傷が治っている!?……俺はゾンビにならずに済んだみたいだな」


 渡は改めて、これからの自分の行動を考えた。



 もう今はまともな世界じゃ無いんだ。

 今生きている人達を探して、協力して生きよう。

 そして余裕が出来たなら、父さんと母さんも探そう。


 ついでに彼女も作ろうかな……なんで父さんは、あれだけ俺を鍛えたのに、女性の口説き方を教えてくれなかったんだろう。


 でも、今の僕に策がある……こんな世の中だ……大部分の男共は自己中心的な嫌な男になってるだろう。


 俺は日々頑張るだけでモテモテになるはず……。



 渡は既に次の目的地を決めている。

 軽い足取りでネットカフェを後にした。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ここは 某ホームセンター。


 渡はここにたどり着くまで、10体のゾンビと遭遇した。


 その10体との遭遇で、ゾンビの特徴をある程度理解した。


 ①ゾンビは目が悪い。

 ②ゾンビは音に対して敏感だ。

 ③ゾンビは力が強い。

 ④ゾンビの動きは鈍い。

 ⑤ゾンビは食欲だけで動いるかも(予想)

 ⑥ゾンビは押す、引く、掴む、噛む、叩く以外の動作は出来ないみたいだ(予想)


 既に少数のゾンビでは、渡にとって驚異にならない。

 しかし、ゾンビ達から逃げれると言うだけで倒す術は持っていない。



 渡は油断すること無く、このホームセンターで、ゾンビ対策アイテムを考え作成していた。


 そして、3つのゾンビ対策アイテムが完成した。


 1つ目は大型の虫網の様な物だ。

 この虫編みでゾンビを被せ、ワイヤーを絞ると対象の両腕を拘束出来る仕組みだ。


 2つ目は大型のマジックハンドの様な物だ。

 このマジックハンドで脚を掴み、対象の移動を困難にする仕組みだ。


 3つ目は頑丈な2mの棒にU字のフックを取り付けただけの物。

 ゾンビの単調な動きを想定して、ゾンビから身を守る道具だ。

 

 そして、大型のハンマーを用意して少数のゾンビを探しに出掛けた。



 幸運な事に、2体のゾンビを渡は見つけた。



 ゾンビの脚が交差する瞬間を狙い、両膝の拘束に成功した。


 ゾンビは簡単に倒れてしまった。

 渡の睨んだ通り拘束を外そうとする知能は無い。


 もう1体のゾンビを軽やかに避けながら、虫編みを持ち構える。


「あっ……」


 ゾンビは両手を前に付き出した姿勢で迫っている。

 これでは虫編みが腕まで入らない……


「虫編みは失敗か?」

 と言いつつゾンビとの距離を取ると、ゾンビの両手をはだらりと、下がる……


「今だ! 」


 ゾンビに虫編みを被せる事に成功した。

 そして、虫編みを被ったゾンビにドロップキックをお見舞いする。


 ゾンビ2体は、拘束をほどく事が出来ない。

 力は強くても、拘束紐を引きちぎる力は無いようだ。



 芋虫の様に迫るゾンビに、

「ごめんな……ふん!」


 ハンマーで頭を叩き割った。

 するとゾンビの活動が止まった。


 やはりゾンビの弱点は頭なのだ。



 渡はゾンビに対する事項を増やした。

 ⑦ゾンビは人に近づくと手を前に出す習性があるみたいだ。


 虫編みの柄の部分を2mに改良して、出来る限り大量生産した。


 大量に作ったゾンビ対策アイテムを、自作のリヤカーに乗せ、まだ生きているはずの人間を探すため、ホームセンターを後にした。




~こうして 100万分の1の確率で『抵抗者(ウイルスレジスタンス)・荒波 渡』が誕生した。



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