表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/172

81#王都を目指して

◇とある街道◇


ランディとガルは、2人 (ゴトールと使い魔)を引き連れて、王都に向かっていた。


余りにもゴトールが騒がしいので、猿ぐつわを嵌めた。


ランディは使い魔が大人し過ぎるのに警戒していたが、食事中に使い魔の特殊能力が『シャッターアイ』と『駿足』と言う、目を良くする特殊能力と、瞬発力を上げる特殊能力だったのに、手も足も出なかったので完全に諦めたと聞いた。


ああ……ガルに、なす術も無くアキレス腱切られたもんね。


何回か道行く人にこの状況を聞かれたが、この2人が悪い事したから、王都まで連れていくって言ったら、みな納得してくれて『ご苦労様』と言ってくれた。


この国チョロいよ?


セキュリティ大丈夫?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



◇マクリード国、東方部宿舎、食堂◇


ここで、警備隊第8隊隊長、第7隊隊長と東方総隊長が雑談を交えた食事を採っていた。


そして1人警備兵が緊急の報せを持ってきた。


当初は聖剣級の武器が見れると思い込んでいた隊長達は、使い魔ガルを怒らせた挙げ句、戦闘になり、あっさり敗北したうえ、班長のゴトールを拉致され王都に向かっていると聞いて、戦々恐々としていた。


総隊長はゴトールを拉致した事を理由に、王都に向かったガルとランディの捕獲を第8隊隊長に命じた。



その後第7隊隊長が、我々警備隊が7体の『メガストラム』に大敗したのに、ガルは単体で100体以上倒すほどの怪物、少なくとも500組以上の兵力がないと止められないのでは? と進言した。


漸く事の重大さを認識した総隊長は早馬を使い、マクリード軍の大将に報告を兼ねた対策を依頼した。


通常、クロウス学校から王都までは6日ほどかかる距離であるが、ゴトールと使い魔を入れた檻に車輪を付けて運んでいると情報があったため10日ほどかかると見られていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


◇マクリード国、王都に続く街道◇


ランディとガルは昼食を採っていた。

今回はゴトールと使い魔もいるので、カロリーメ◯トを出して食べていた。


勿論ゴトールと使い魔にも、カロ◯ーメイトは、与えられていた。


「お前達は休憩と言うものを知らんのか?」

ゴトールはランディ達に話しかけた。



「あん? 休憩してるじゃん、今……」

ランディはジト目でゴトールを見る。



「それに、あの歩行速度……速すぎだ……何故バテない?」



「君たち連れて無ければもっと早いけどね、って僕の話を聞いてないでしょ」



「ランディ、このペースなら3日か4日で王都に着くな……」


ランディとガルは1日あたり60㎞のペースで歩いていた。


「うん、荷物(ゴトール)がかさばるから、時間かかるね」



ゴトールは驚き疲れていた。


1日で60㎞近く歩く、休憩は食事と排泄だけだし、食べ物は何もない所から出すし、遠くの鳥を一撃で仕留めてモリモリ食べるわ、壊れた車輪を魔法で直すし、大体200㎏以上のある檻を平然と引っ張って息切れ1つしてない……


食事中に問い詰めたら、敵襲の可能性も考えて体力温存してるんだ、とか言ってる。


2人とも化物だった。


こんな化物が学校に通う子供の使い魔だなんて……まさか残りの2人も……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



◇王城の一室◇


そこには、国王を含め 軍部官の最高責任者、大将を始め10人程で構成されていた。


報告を一通り聞いた国王は、肩を震わせながら話し出す。

「すると、例の使い魔達の勧誘に失敗した挙げ句、怒らせて此処まで乗り込みに向かっていると言うのか? ……しかも『武器を献上しろ』だと? 誰がそんな事を頼んだ! 私は『我が軍に協力して欲しい』と言ったんだぞ?」


テーブルを激しく叩く国王。


大将が青い顔をしながら「彼等の到着まで あと4、5日程度あります、対策を考えましょう」



1人の政務官が話す出す。

「しかし……2人の使い魔も、とんでもない事をしでかしましたな……何か処分を下さねばなるまい」


他の政務官も話に乗る。

「そうだ! 処分は 武器の没収と言う事にすれば良いではないか。それなら全て丸く治まる」


国王と1人の政務官以外、それが良いとか言いながら頷いている。


「あのですね、処分処分と言うなら、伝達に失敗した軍部官達を処分した方が良いのでは?」


軍部官大将が、慌てる。

「な、何を馬鹿な事を……」



「それにですね、処分処分と言ってますが、あの猛者相手に誰が処分出来るんでしょうか? 」



軍部官最高責任者副官が答える。

「相手はたった2人……人数でものを言わせれば良いでしょう……かなり強いと聞いてますが、1人のあたり100人……計200人もの人数を動員しておけば、怯んで直ぐに従うでしょう」



「あの~副官殿、前回の報告書読んでましたよね? 使い魔『ガル』は我が国の警備隊がまるで歯が立たなかった『ストラム兵』を100体も破壊したんですよ? 今さら100や200程度の雑魚で怯んだりするでしょうか?」



軍部官大将が怒る。

「ざ、雑魚と失礼な!」


「なら、1人でもリメインズ軍の『ストラム兵』を倒した兵はいますかな?」


「くっ…………」



「じゃあ、300人なら……どうですか?」

軍部官最高責任者副官は他の人々の顔色を伺いながら聞いている。



国王は我が国の高官達の無能ぶりに全く言葉が出ていない。



その時、1人の男が部屋に入って来た。

「失礼します! 緊急事態です! 」


軍部官大将が何事かと聞く。


「ふ、2人の使い魔と思わしき者が、我が軍が交戦中です! 」


全員その話を聞いて一気に立ち上がる。



「バカな……速すぎる……」



1人の政務官が「全く軍部官の情報は宛になりませんな……直ぐに取り押さえるのだぞ」



「あ、あのしかし、2人の使い魔の進撃が止まりません、我が軍の被害は既に200人を超えています。手が付けられません、どうしたら良いでしょう?」




国王はため息をついて、話す。

「決まっている、詫びを入れる……」



「なりませんっ!1国の王たるお方が、簡単に頭などを下げては!」

軍部官大将が大声で叫ぶ。



国王はギラリと大将を睨み怒鳴った。

「よし! ならばお前が責任を取って、その場を治めてこい! 兵は使うなよ、お前と使い魔の2人だけで行ってこい……これは命令だ!」



国王の激昂にやっと自分の意見が不味かったと悟ったが、既にどうしようも無いところまで追い詰められていた軍部官大将だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一方、ランディとガルはある意味本気で戦っていた。



ランディは【ぴこっとはんまぁ】を使い本気で殴っていた。


しかし、【ぴこっとはんまぁ】はツッコミ専用の武器、相手を吹き飛ばし、強烈な痛みを与えるが、骨折は愚か流血すらしない。


したがってランディは安心して本気でぶん殴っていた。



ガルは、気配を消すことが出来る上に、移動速度は『神速』未使用でも100m4秒台で走る。

混戦状態ではガルを全く捉える事が出来ずに、腕の関節を外される者が続出していた。



2人の快進撃は、軍部官大将の一騎討ちに発展するまで続いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


軍部官大将とその使い魔は完全に戦意を喪失していた。


軍部官大将は使い魔のお陰で大将の地位まで上り詰めたと言っても過言ではない。


魔人族の召喚する使い魔仲間には以下の階級があり、その階級は以下の通りである。


『帝王・大公・閣僚・将軍・王・候爵・伯爵・総統・貴公子・公爵・悪魔・使い魔 』となっていて、魔人族が召喚出来る使い魔は通常『公爵、悪魔、使い魔』までである。


しかし、軍部官大将の使い魔の階級は『総統』だった。

この階級を盾に、事を穏便に済まそうと考えたのだ。


だがこの使い魔は『階級検索』の特技も持っていた。


そして、ランディとガルの階級が『大公』と知り、泡を吹いて気絶した。




「さぁ、やろうか……」

ランディが、ニヤリとする。


軍部官大将の足は震えるばかりで、言うことを聞かない。



「おおっ!? あいつの足が高速でぶれている? まさか神速?」



「ランディ、あれは震えてるだけだわ」



「そっかぁ じゃぁ 『参った』と言うまで叩きますか……」



その時軍部官大将の瞳がキラリと光る。

(先手必勝……即謝ろう)軍部官大将の唇が動き出す。

「ま、まぶごぅっ!」


ランディの【ぴこっとはんまぁ】に吹き飛ばされる軍部官大将。


「ま、まいヂャボリャ!」


またもや吹き飛ばされる。


「まいっぎゃぁぁぁぁ!!」


「た、助けぶごぉっ!!」


「ま、ま、ま、ま、ギャフン!」


「ゆ、許しムギャピペッ!」


ランディと軍部官大将のやり取りは暫く続いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ほんっっっっっとうに申し訳ない」

国王がランディとガルに頭を下げて謝っている。

誰も国王が頭を下げているのに異を唱えない。

そう、誰もが思っていた。

軍部官の大将のようになりたくないと……



物凄く偉そうな態度のガル……

「王様がまともな人で良かったわ……お陰で今回の件は許すことにした……が! ただと言うわけにはいかん!」



国王もある程度覚悟は出来ているようだ。

「うむ……言ってくれ。ただあの馬鹿者共も、わが国の民なのだ極刑だけは許してくれないか?」



「それはしないが、道中ランディと話をして、だいたいは決めているんだ」



ランディとガルの要求は以下の通りである。

①伝言ゲームに関わった者の2年間の減俸処分。

②一般家庭が質素に暫く暮らせる程度の貨幣を貰う事。

③豪華な食事会を開く事。

④国王の頼みはきいても、命令はきかない事。

計4項目だった。



これに対して国王は、こんなもので良いのかと拍子抜けしたのだが、ランディもガルも軍部官大将の不様な姿を見て、ある程度気が晴れてしまった事を伝えたら、国王も『馬鹿には丁度良い刺激だ』と大笑いしていた。


そして、1部の政務官にも同じ目に合いたくなければもう少し考えて発言しろと釘を刺した。





こうしてランディは、マクリード国の高級食のメニューと一般家庭にとっての 大金を手に入れ、帰って行った。



~追伸~


ランディとガルを追いかけていた第8警備隊達は、ランディ達を発見出来ないまま、数日遅れて王都に到着し、国王に酷く怒られたようです。


ガルにアキレス腱を、切られたゴトールと使い魔は、『再生』の特殊能力を持つ使い魔に1ヶ月をかけて治して貰ったそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ