80#マクリード国、東方軍第8警備隊登場
◇クロウス学校、入口◇
ここに11名の魔人族と11名の使い魔がやって来た。
集団の中の1人が数歩前に出る。
「ここか……」
彼は『東方軍第8警備隊』に所属する班長のゴトールとう言う名前だ。
1人の警備隊が1歩前に出る。
「はい! 聖剣並の力を持つ武器を所持している『ガル』と言う使い魔が、この学校に通っています」
「そうか、では行くぞ!」
「おお!」×10
使い魔以外の警備隊が一斉に返事を返す。
総勢22名の来訪者は校舎の中に消えていった。
◇職員室◇
来訪者は職員の集まる部屋を見つける。
ガラガラ……
ゴトールが扉を開ける。
「失礼する」
ゴトールとその使い魔が職員室に入る。
職員の内の1人が来訪者の応対をする。
「はい、何の御用でしょう……ひっ!?」
職員は職員室の外に斧や警棒等を所持している、警備隊の数に圧倒された。
「私はマクリード国、東方軍第8警備隊第3班班長、ゴトールだ! 校長に用事があって来た。案内を頼む」
「……はい」
職員は面倒事と察知して、早く他の人に押し付けたかった。
◇校長室◇
警備隊班長ゴトールの話を一通り聞いた校長は、ため息をつきながら、質問する。
「話は理解しました。ですが、そう言う旨の記してある書簡などは……」
「ない!」
と、当たり前の様に答える。
「これは、軍の命令ではなく、王の頼みなのだ……だから我々が直接ここまで来た」
「それでは、リリスと使い魔を呼びますが、私の方からは言いづらいですな」
「問題ない、私が直接話す……空き教室を1つ借りたい」
校長は警備隊のゴトールの言葉に何故だ? と思った。
「空き……教室ですか? わかりましたが、何をするつもりで……?」
「特に何も……まあ、交渉を進め易くするだけだ……」
確実に不穏な空気が迫ってきた。
◇中庭◇
この時間は自由時間のため、中庭でガルが親衛隊の面々におだてられていた。
今回のお題は『魔剣』についてだった。
ガルは600年近くも生きている癖に打算の無いおだてに弱いのだった。
ガルは魔剣の鞘から説明を始めた。
ガルの剣の鞘は背骨を連想させる約1mの棒に左右5ヵ所づつ10ヶ所の穴が空いている。
「これは『テンタクルスストッカー』と言って10本の剣を便利に収納出来る。柄以外は別次元に収まり、出し入れが便利な上に背骨も守れる優れものだ」
アルバ「へぇー、 ガル様は凄いなぁ」
モクバ「で、9本も剣を持っていますよね? 『魔剣ガル』様って 言うくらいだから剣も凄いんでしょ?」
ガルは調子に乗った。
ガル「それじゃ一つ一つ説明しよう! 俺様は職業上ソードの類いは、ショートソード又はダガーしか装備しない。だから俺様が所持している魔剣は全て短い。
1本目『魔王剣』魔族に対して有効だ。
2本目『法王剣』魔法防御を貫通しやすくなる。
3本目『獣王剣』獣狩りに最適だぞ。
4本目『覇王剣』人族に対して有効だ。
5本目『冥王剣』実体の無い化物に有効だ。
6本目『龍王剣』ドラゴンタイプに有効だぞ。
これは『日本刀脇差し』という種類で、叩き切るんじゃなくて、綺麗に切断するって言う感じだ。
この6本を通称『六王剣』と呼ぶ。以前に俺達4人で『大日本帝国』と全面戦争して勝った時に、降伏条件として貰った』
ランディは『大日本帝国』の軍事力は知らないけど、たった4人で国家と戦うなんて馬鹿なの? と思っていた。
「7本目『雷神剣』1日3回電撃を撃てる。まあ、大したこと無いけど愛着がある。
8本目『風神剣』突風を巻き起こしたり、衝撃波を撃てる……これは殺傷力が低い代わりに1日5回が限度になる……
この2本の形状は『西洋剣』にそっくりだな……以上!」
「あれほどの電撃を放っておいて、大した事ないってどういう事?」
ランディはマラヤディバと言う国で10人に電撃を放ち、8人が即死したのを思い出す。
「うん? 本当に大した事ないぞ。試した事はないが、ランディなら恐らく、この電撃を20回食らっても大丈夫だろう……だから大した事無いだろ?」
(そっかぁ、僕もチートキャラだったよ……)
みんなは、今の説明を聞いて首を傾げる。
トイバ「ガル様、もう1本有りますけど……」
「駄剣だ……」
アルバ「えっ?」
ガルは苦い顔をしながら答えた。
ガル「駄剣だ……説明する価値も無い……」
ちょっと雰囲気が悪くなった。
丁度その時
『ピンポンパンポン! お知らせします2年のリリスさんと使い魔は、大至急第2予備室まで来てください。繰り返します、2年のリリスさんと使い魔は、大至急第2予備室まで来てください……ピンポンパンポン……』
「おっ!? 呼ばれてる……大型獣かな? ガル、香織ちゃん、リリスたん、マーニャ、行ってみよう」
マーニャはランディに呼ばれた順番に不満だったが
、口には出さない。
ランディ達は5人で『第2予備室』まで向かった。
◇第2予備室◇
この広い教室には、警備隊22人が様々な武器を腰や背中に携えて教室中を陣取っていた。
校長はこの異様な様子を見て、嫌な予感が止まらなかった。
ガラガラ……
リリスと使い魔(ランディ、ガル、香織マーニャ)の4人が第2予備室にやって来た。
リリス「ほえっ?」
物々しい雰囲気に、リリスは気後れしている。
班長「何故5人も来ているのだ? 部外者は出ていって貰おう……」
等と少々威張りぎみの警備隊班長。
校長(こちらに来るのに下調べもしてないのか?)
「うちの生徒のリリスは使い魔を4人も、召喚した優秀な生徒です」
ゴトール「なに? そんな事があるのか?」
驚く班長は警備隊に聞くが、みんな初耳の様だ。
校長「前例では、2人の使い魔を召喚した者はいますが……」
ゴトールはつまらなそうにする。
ゴトール「ふん……どうでも良いか……では、使い魔ガルは誰だ?」
ガルは相手側の態度に不機嫌丸出しの表情で、「俺だが、なんか用か?」
ガルは教室で取り囲む様な陣形を取っている警備隊に対して、ムカついていた。
そうまるで言う事を無理矢理従わせるような、状況だからだ。
ゴトール(フム……この数で囲んで怯まないとは……もしかして馬鹿なのか?)「ガルが所持している武器を我が王が欲している。献上せよ」
校長(馬鹿! 馬鹿なの? そんな言い方怒らせるだけだろ)
ガル「は? 何言ってるの? 駄目に決まってるだろ」
ガルは怒りよりも、驚きの色が濃い。
ゴトール「王の要求を聞けないと言うのか?」
ガルの返答が意外だった。
ガル「いきなり知らない奴が押し掛けて『王』とか言っても信じられんし、俺の武器をやる理由もねぇ」
ゴトール「私の言葉が信じられんと……」
驚きと怒りの中間点に差し掛かるゴトール。
ガル「お前さぁ どういう話を聞いてきたかわからないけど、俺様の短剣は値段が付けられない程希少だ……そんな物、書状や招待も無しにくれとか馬鹿だろ?」
ゴトール「この私を愚弄する気か?」
警備隊が殺気立つ。
校長(ひぃぃぃ 止めてぇぇぇぇガルさんを怒らせないでぇぇぇぇ)
ランディ「まぁまぁガル、相手は何も知らないモブだから、そんなに怒らない、怒らない」
とガルの横に来て仲裁する。
校長(ランディさんナイスアシスト! ここまま和やかな雰囲気にしてあげてぇ)
警備隊の1人が「雑魚は黙ってろ!」
とランディの胸ぐらを掴む。
明らかにマーニャとガルから怒気が発せられた。
校長(ひぃぃぃ!? 雰囲気、一気に最悪にぃぃぃぃ マーニャさんまで怒らせましたよ……この学校が灰塵になってしまう~)
マーニャ「お兄ちゃんが雑魚だったら、あんた達は蚤以下ね、それとも落ち葉の方がいい?」
ゴトール「使い魔風情が調子に乗るなよ? この戦力差もわかならい、馬鹿共が!」
ゴトールも完全に怒り、退くことを知らない。
校長(戦力差が解らないのは あんた等の方だよ! ねぇ……情報だと警備隊達は、7体のメガストラップ相手にあっさり全滅したそうじゃないか……そこにいるガルさんは1人で100体を余裕で超えるストラップ兵を破壊してんのよ? 計算しようよ計算!)
ゴトール「校長……安心しろ。殺しはしない……痛めつけて、武器を貰うだけさ」
震えている校長にお門違いの話をする。
校長(そんな心配してないよっ!!)
ランディ「もう、ここまで来ると強盗だな……上官にも責任を取らせよう」
ガル「どうせなら王様の所に行こう、こいつ等お仕置きしたぐらいじゃ気が収まらん」
校長(終わった……私の校長生活も短かったなぁ……)
校長は連帯責任を取られると思い泣いていた。
「かかれ!」
ランディに2人、ガルに2人、50cm程の警棒を振りかぶりながら襲いかかる。
~敵プロフィール~
警備隊 軽戦士 レベル4
HP 約200×10人
警棒術 F
装備 警備隊の制服
警棒
ゴトール 軽戦士 レベル5
HP 220
警棒術 E
装備 警備隊の制服
警棒
警備隊 使い魔 レベル6
HP 約300×11人
斧術 E
素手 D
装備 警備隊の制服
ハンドアックス
バトルアックス
ランディは相手が警棒を降り下ろす前に、顔面を突き入れ、脳を揺らす。
ガルは残像を残す程の速度て避け続け、足払いをして転がす。
「なんだと?」
今の状況を見て、10人の使い魔達が一斉に襲いかかる。
力自慢の使い間が、ランディの力で捩じ伏せられ、
速度自慢の使い魔は、ガルに触れることすら叶わない。
タフで定評の有る使い魔達が次々に、倒れていく。
ゴトールは予想のしない結果に驚く。
「な、な、なっ!?」
格闘に優れた使い魔は、ランディに関節を外される。
恐怖のあまり、斧をもった使い魔はガルに金的を受け悶絶している。
そして、茫然としている警備隊達は、ランディとガルに投げ飛ばされ、教室の外へ飛んでいく……
残ったのは、ゴトールとその使い間2人だけになってしまった。
校長(やっぱり、ほぅら やっぱり……)
「さて……準備体操が終わったから、徐々に力を入れていきますか……」
ランディは手首の関節の柔軟運動をしている。
「1対1だな……俺はランディと違って素手は苦手だから、本気出して良いかな?」
2人は素手な上で全力すら出していない。
「ばばば馬鹿な……」
校長(馬鹿なのはあんただよ!)
「馬鹿なのはあんただよ! 話聞いてない? そこの『魔剣ガル』は1人で、リメインズ軍400人近く倒してるんだぞ? 」
ガルはランディに、『魔剣ガル』と言われて嬉しそうだ。
何故なら、ガルはこの気に入ってる異名を殆ど言って貰った事が無い。
「嘘だ! そ、そんなの有り得る筈が無い!あれをやるぞ!」
使い魔をがゴトールの肩に手を置く。
「光を束ね弾けよ。光破!」
細い光がゴトールの左手の先に集まり、直径10cm程の玉になり、光線となった。
しかしランディに全く効いた様子は無い。
「そんな子供騙しが効くとでも? もう1発受けてあげるから全力でおいで……第5レベル呪文……スペルレジスト」
ランディの呪文の直後に、ゴトールが攻撃してきた。
頭に血が登ったゴトールは「おのれぇぇ、我が力、魔の下に凝縮し魔光となり弾けよ。魔光破!」と叫び、おびただしい数の細い光が、ゴトールの左手の先に集まり直径30cm程の禍々しい光の玉に膨れ上がり、光線となった。
しかし、ランディは僅かに眉が動いただけであった。
「まさかそれが限界? リメインズ軍の『魔天黒龍破』に比べたら子供騙しだな……」
「魔天黒龍破!? 嘘だ!そんな魔法を受けて、生きている筈が無い!」
威勢よく叫んだが、突然脚に激痛と共に力が入らなくなり、へたり込むゴトールと使い魔。
2人の後ろにはダガーを持ったガルがいた。
「ガルがダガーを持つなんて珍しいね……」しかしランディは2人に出血が無い事に疑問に思う。
「外科医のダガーって言うんだ。切った所を止血する……しかしアキレス腱は切れたまま……もう立てないね」
と、ゴトールを見下ろした。
ゴトールは、やっと気づいた手を出してはいけない存在に喧嘩を仕掛けてしまった事に……
しかし、真に後悔するのはもう少し後になる。
「ランディ、ちょっくら王様の所まで行くか……落とし前をつけさす……」
校長(ふわぁぁぁぁぁぁ!! やっぱり一大事に発展してるぅぅぅぅ)
「判ったよ、マーニャちょっと出掛けてくるから、香織ちゃんとリリスをよろしくね」
「えっ? 2人だけで出掛けるの?」
マーニャは驚きと不満でいっぱいだった。
「ああ1番頼れるのはマーニャだからね、直ぐ戻るからお願いね」
ランディはマーニャにウインクをした。
(私が1番、私が1番、私が1番……)
マーニャは完全に自分の世界に入った。
ランディはマーニャの様子を見て(マーニャが1番強いって意味だけど……今言うのは止めよう……)
こうして、ゴトールとその使い間を人質? にランディとガルは王都に旅立って行くのだった。




