異世界コラボ 9#ランディが残した物
ランディが声高らかに叫ぶ。
「第5レベル呪文……クリエイトフードフリー!」
「おお!?」×多数
テーブルの上に出現した食べ物は、良く研いだ 炊きたての白いお米、銘柄は『つや姫』。
隣に置いてあるのは、秩父産の伝説の卵、銘柄は『輝き』。
そして、更に隣に移り、味噌汁は永谷園の『ひるげ、生みそタイプ』。
続いて、大衆居酒屋で出るような、一匹150円程度の『ししゃも』(偽物)
そして小皿にはスーパーなら何処でも売っている程度の梅干しと沢庵。
更に、冷たい丸ごとのキュウリに味噌。
最後に場を崩すように添えられた寿司。
ランディのボキャブラリーの低さが伺えた。
味方であるはずのガルが、苦情を入れる。
「ランディ! これ日本料理じゃなくて、日本食!
日本料理で、もろきゅうなんかあるかっ!」
ランディはガルの文句に口を尖らせながら、開き直る。
「そんな事言われてもぅ……記憶に無いもんっ」
「お兄ちゃん……私はお兄ちゃんの食生活が理解出来ないよ……」
マーニャががっくりと肩を落としている。
「凄いじゃないか、ランデイヤ殿! 正油まで付いている。しかも味噌も有る! 」
セイは大絶賛だった。
そう……彼女は正油単体だけでも大絶賛しただろう。
……
…………
………………
しかし食べてみれば、卵かけご飯は大好評だった。
そして、クロードが梅干しを食べた瞬間……
「ぷっ! な、なんだこの梅干しは……」
ランディは、梅干しについて説明する。
「あ? それ? 梅干しをシソと砂糖をたっぷり使って食べやすくしたの」
「「邪道だ!!」」
ガルとクロードがハモる。
「こんなのは梅干しじゃない!」
「そうだ! ランディ梅干しに対して失礼だぞ!」
クロードは急に席を外していなくなる……ガルは本物の梅干しを持ってこいと騒いでいる。
しかし、騒動の割には、他の人達は大人しく食事をしている。
どうやら『梅干し』の逆鱗に触れたのは2人だけの様で、みんなは気にしていないようだ。
数分後、クロードが小瓶を持って来た。
「クロード、それはまさか?」
とガルはクロードに質問をする。
クロードはどや顔で「これが本物の梅干しだ。食べて見てくれ」
ガルは梅干しを、ひょいと摘まんで食べる
「くぅぅぅぅぅぅぅぅ! ……………………こ、これだよこれ」
こうして、ガルとクロードは梅干し友達になった。
「これは、何がなんでもランディに覚えさせなくては……」
ガルの発言に、ランディは驚き後ずさる。
「え? 嫌だよ、そんなすっぱそうなの」
「『神速!』」 ガルの姿がブレたと思ったら瞬間ランディの後ろに瞬間移動して羽交い締めにする。
「クロード! 今だ! 食べさせろ!」
ガルに言われるまま、小瓶の蓋をキュポッと開け、梅干しを1つ摘まみ、ランディの口に運ぶ……
さすがのランディも2対1ではなす術もなく、無理矢理梅干しを食べさせられた。
「んぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
瞳を潤ませながら、ゴロゴロ転げ回るランディだった。
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翌日、余った調味料の味噌と正油を使用してレアが、素晴らしい朝食を作ってくれた。
これにより、ランディは素敵な朝食を覚えた。
ランディはレアの料理に味をしめて、食材を野菜、果物中心の食材をプレゼントした。
そして、クロード陣営からは味噌と正油が大量に欲しいとリクエストを受け、ランディは大量の『乾燥大豆』『麹』『塩』を出現させた。
ランディが味噌について説明する。
「作り方はタップリの水で 圧力をかけて長時間煮る、大豆が指で簡単に潰れる様になったら、適当に混ぜて寝かせてくれ、木桶と重りの石は用意出来るよね? 僕は食べる専門だから、比率は知らないからね。発酵期間は10ヵ月~12ヵ月だ。正油の作り方は全く解らないけど、ガルが100円物の正油を、大量に持ってるらしいから、ガルに頼んで」
食べる専門のわりには、比率以外の製造法を知っているランディだった。
クロードはガルとの交渉の結果、ウサギの着ぐるみと交換になった。
その着ぐるみは、なんと【第四位契約神器ルーンドレス】だった。
このルーンドレスはマーニャと相性が良く、マーニャの物となった。
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数日後、ランディは クロード達に質問をする。
「ねぇ クロード、『ニーダル・ゲレーゲンハイト』って何者? 凄い噂だぞ? まずな……十本の生殖器と八十八の陵辱道具を隠し持つ男だろ? 次に 半径2Kmに存在する女性なら、触れるだけで老いも若きも孕ませるという極悪非道の鬼畜犯罪者だろ? 二億人斬りのニーダルとか 人間じゃないよな、この世界のラスボス?」
ガルもその化物に興味ガルはあった。
「俺達は『ドルアード』って腐海の化物と戦ったことがあるけど『ドルアード』は前後に二つの顔を持ち、四本の手に六本の足、八つの生殖器だった……それより上か!?」
「う~ん 僕は『ドルアード』は覚えていないけど、二億人も殺しておいて、ゴシップ記事にのってるってことは、捏造?」
「いや、それはランディの勘違い、殺ったんじゃなくてヤったの しちゃったの。解る? 現役時代の俺でさえ約二百人……俺様の百万倍か……化け物だ……」
「いやゴシップ記事なら、もっと少ないだろ?」
ニーダルの記事を見て、興味の尽きないランディとガルだった。
クロードは数日で、彼らの強さとエロさを看破していた。
もし、そんな二人に部長が加わったらと思うと恐ろしくなった。
きっとピンクな世界になってしまう…………
そしてゴシップ記事以上の悲劇が起こるだろうと思った。
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クロード達は、黒に近い深い緑のバスケットボールより、二回りも大きい物体と対峙してした。
「分からない……しかしランディのクリエイトフードフリーで出したからには、食べ物だよね?」
クロードとランディは初めは『クローディアス』と『ランデイヤさん』だったが、早くもうち解けていた。
「兎に角、半分に割ってみよう……」
不思議な球体を二つに割ると、中は真っ赤な瑞々しい果肉が詰まっていた。
「これは……スイカ?」
「正解!」
「うわっ!?」
何も無いところから突然浮き出てきたガル。
ガルは見た目だけではなく、行動まで異常だった。
「これは、ランディの奥義の一つ『でんすけ西瓜』だ究極の西瓜と言っても過言じゃねぇ……気に入ったら、種でも取っておけば? 栽培方法は俺も知らん……がランディは土壌と間引きが大事って言ってた、後二世は少し味が落ちるが、美味い事には変わりねぇぞ」
ランディの出した食べ物なのに、ガルが自慢話をしている。
実際食べてみると、いままで食べていたスイカは、丸いキュウリだったんじゃないか……と思うほどの味の差があった。
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ランディは『トゥルーサイト』と言う呪文を使っていた。
『トゥルーサイト』とは周囲全ての情報を知ってしまうランディ自慢の呪文だった。
ランディは、クロードを見つけ雑談をしている。
クロードも二人だけで話すと、日本の話題で盛り上がれるので楽しい……
(あれ? 僕ってこんなに話す人間だっけか?)
と疑問も浮かんだが、直ぐに消えてしまった。
唐突にランディが紙袋を取り出し
「クロードさん、注文の品です」
と、クロードにとって、全く意味のわからない言葉を使ってきた。
「……?……?」
紙袋を渡そうとするランディ。
反射的に紙袋を受け取ろうとするクロード。
ランディはクロードに、バレないようにわざと紙袋の中身を落とす……
ゴドリ……落下したのは、ショッキングピンクのバイブレーターだった。
しかもスイッチが入っているようで、卑猥な動きを見せている。
うぃんうぃんうぃんうぃんうぃんうぃん……
クロードが、ランディに疑問を投げ掛ける前に、近くから叫び声が聞こえた。
「辺境泊……そ、それは?」
なんと、タイミングの悪い事に、ランディとクロードのやり取りを、エリック、アンセル、ヨアヒム、ブリキッタが見ていたのだった。
「へ、辺境伯様? それはいったい……」
「辺境伯? 今、注文の品って……」
「へ、辺境伯……まさかそれをソフィに使うつもりじゃ……」
あまりにも突飛な出来事に声も出ないクロードだったが、それが事態を更に悪くしていた。
しかし、この事態は全てランディの手のひらで行われていた。
ランディの『トゥルーサイト』で、エリック達の来るタイミングを見計らって、わざと紙袋の中身を見せたのだった。
「辺境伯様、確かにあんたは今まで頑張ってきた……しかし、これとそれとは……」
「そうだ! ソフィにこんな物を使うとか許せん!今すぐぶん殴ってやる!」
「辺境伯……見損なったよ……」
そこで、ようやくクロードは口を開く事が出来た。
「ち、違う これは僕のじゃない! 誤解だ、誤解なんだ! ランディ、これはいったい……」
クロードの言葉を遮るようにランディは話し出す。「お代は要りませんよ、梅干しのお礼です。それでは楽しんで下さいね。ではまた………………後はガルだな……どうしてくれよう」と言って足早に消えるランディ……
「えっ? もしかして……梅干しの件、根に持ってるの? 心狭くない? それより、この誤解を解いてくれぇぇぇぇぇ!!」
それを見ていたたぬ吉改めアリスは、
「な、だからアイツ等は危険と言ったたぬよ」
とランディの出した残飯を食べながら呟いていた。
エリック達に散々罵られたクロードだったが、 翌日にはランディが正直に打ち明けてくれたので、被害は屋敷内にとどまったが、代わりにガルを見かけた女性達が『妊娠するぅ』と逃げ惑っている事件が発生していた。
クロードは思う……
きっとランディの仕業だろう……
ある意味、食べ物の怨みは恐ろしいと……
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突然別れの時が来た。
ランディとガルは元居た世界に引き戻されると言って来た。
クロードは、日本を知る仲間がいなくなる寂しさ三割、強烈な問題児がいなくなる喜び七割といった、複雑な感情で見送る事となった。
ランディ達異界人が残した物それは、高級ではないが正油と大量の味噌の原料と少々の味噌。
大量の野菜と果物の種……そして、禿げるかも……と思わせる程のストレスだった。
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ランディは上機嫌だった。
「今回の異世界旅行は実りが多かったたね。暖かい家庭料理を幾つか覚えた……」
「うん、面白いコスプレ道具も手に入れたしね」
「便利な防具も貰ったの」
ほくほくとしている、ランディ、マーニャ、リリスに対して、 ガルは……
「俺様収穫なし!」
香織も『そうね……』とだけ、呟くのだった。




