72#驚異の伝言ゲーム
◇マクリード国、マクリード城、謁見の間◇
ここには、難しい表情をした者、恐怖を浮かべた表情、狼狽した表情、すべての表情が、異常時体だと知らせていた。
国王は焦りと、怒りの混じった複雑な表情を浮かべている。
「では、逃げ帰える事が出来た 僅か2名の兵士を除いて全滅だったと言うのか……」
事の発端は、1人の兵士が敵襲を伝えた事から始まった。
最初は夢でも見たのかとバカにしたのだが、数時間後のもう1人の兵士が、少しだけ詳しい情報を持って来たことで、事態は変わった。
その拠点は、たった数体の灰色の人型の化物によって全滅になったと……
そして、国境から一番近い学校『クロウス学校』から生徒達が襲われた、至急対策を求むとの報せも届いた。
急遽 偵察団を編成し送り出した所で、学校側から報告第2段が届いた。
それは、ガルは学校側に報告した情報であった。
しかし、偵察団の報告では、自国の兵士の死体以外何も発見出来たかったのだ。
「では、生き残った2名の報告だと、たった7体ののメガストラムといったか……それらによって、南側の拠点が全滅したことになるな……」
「そんなバカな……」
「学校側の報告とも一致します……リメインズ軍の最小編成は5人の兵士に7体のメガストラムだと……」
「本当に学校側の報告があてになるのか?」
「そうだ! 学校側のガキどもや、召喚したての使い魔なんぞの話しなど信じられん!」
実りのない会話に国王が乗り出す。
「ならば、貴様らの報告は何なのだ!『拠点全て全滅してました』だけではないか! もう少しましな報告は出来ないのか? 学校側の使い魔を見習え!」
軍部官の1人が口を出す。
「しかし、余りにも学校側の報告が緻密過ぎます……皆が疑うのは無理ないかと……」
国王は激昂する「貴様らは馬鹿の集まりか? 学校側がそんな事をして、なんの利点がある? それに、貴様ら我が国民の言を疑うのか?」
謁見の間にいる軍部官も、政務官も押し黙る。
国王は紙をペラペラと捲りながらため息をつく……
「資料によれば、今回の事件で貢献した使い間は4人……メガストラムを倒せる程の特殊能力を持つ使い間、『ルシフル』と『マーニャ』そして、聖剣クラスの短刀を所持してる『ガル』さらに、怪我をした者たちを纏めて治したと言う『ランデイヤ』か……我が軍に力を貸して欲しいの……特に我が国には聖剣がない……なんとかならない物か……」
ここで、軍部官の最高責任者が「お任せください、学校側に交渉に行って参ります」
国王は「そうか……使い魔の主達は皆が未成年じゃ……穏便にな……」
軍部官最高責任者は「わかっています」とだけ答えた。
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軍部官最高責任者「と、言うわけだ……強力な武器を所持してる使い魔を最優先に我が軍に編成したい……穏便な対応をするんだぞ」
軍部官大将「わかりました、直ちに使いを出させます」
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軍部官大将「と、言うわけだ……聖剣並みの力を有する武器と使い魔を我が軍に編成するように、穏便にな」
軍部東方総隊長「わかりました、ただちに部下を送り込みます」
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軍部東方総隊長「と、言う事だ……使い魔の持つ強力な武器を我が軍にと国王が仰ってる……行ってくれるか? 出来れば穏便に頼む」
東方軍第8隊、隊長「判りました、其では行って参ります」
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東方軍第8隊、隊長「面倒だが、使い魔ガルが持っている、武器を献上させる様に……行ってこい。出来れば早めにな」
隊長の部下の班長「了解です、隊長! 迅速に行動します! 行くぞお前ら!」
隊長の部下数名「おおっ!」×9
こうして、驚異の伝言ゲームは幕を閉じた。
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◇リメインズ軍、オロチネス将軍の自室◇
オロチネス将軍は笑みが止まらないでいた。
予想よりも速く、マルクズィヤ魔導連邦に送った2大隊の内、1大隊から任務完了の報告が来ていて、今日輝石と希少な鉱石が届き、数量を書面で見ていた。
「くっくっくっ 予想以上の収穫だ……これだけで目標の8割を達成してしまったではないか……しかも、我が軍の被害は兵士6名とメガストラム5体だけ……笑いが止まらんわ……グハハハハハハ!」
突然扉を激しく叩く音がした。
ドンドン! バタン!
「将軍失礼します! ほ、報告が……」
かなり失礼な登場の仕方だったが、上機嫌のオロチネス将軍には気にしない。
「急にどうした? 言ってみろ」
報告者は焦りを浮かべながら「マルクズィヤ魔導連邦に向かっていた大隊が……か、帰ってきました」
「何!? もうか? 我が軍はなんて優秀なのだ……グハハハハハハ……で、被害は?」
「はっ! ひ、被害は兵士6名に……」
報告者の報告を遮り笑い出すオロチネス将軍。
「グハハハハハハ……こちらもたった6名か? 仲の良いことだ……まさか、ストラム兵の被害は5体とか言うんじゃ無かろうな?」
「ストラム兵のひ、被害は……メガストラム300体に……」
オロチネス将軍は聞き間違えたのかと思った。
「は!? さ……300」
報告者は続いて話す。
「ギガストラム30体とテ、テラストラム1体……です……」
どっしりと座っていたオロチネス将軍は立ち上がり声を荒げる。
「それじゃストラム兵は全滅じゃないか!! 兵士は 何を黙って見ていたのだ!」
報告者が怯える「ヒッ! 纏めた報告書には、兵士達も腕を折られる等をして大半が怪我をしています。ストラム兵を破壊したのは、戦士1人と魔導士1人のたった2人だそうです。兵士に対しては死なないように手加減していた模様です。……6名の死者は手加減に失敗したと思われます」
オロチネス将軍は力なく椅子に座り「た、たった2人だと? あ、あり得るはずが無い! 他には?」
「は、はっ……戦士は見た事もない聖剣を振り回して、ギガストラムを木を切るように倒していたそうです。そして、メガストラムは荷物を投げるかの様に投げられ、集まった所で、魔導士のこれも見たことの無い炎の魔法であっさりと破壊したそうです。」
「で、テラストラムは?」
報告者は報告書を見る……「えっと、暫くご互角の戦いをしていたのですが……戦士が『王神流奥義、阿僧祇』と言ったとたんテラストラムの胴が2つに別れて破壊されたそうです。」
オロチネス将軍は考え込んでいる……
「王神流か……たしかミートラ公国が発祥の剣技ではなかったか? 」
報告者は「は、はい……しかもミートラ公国は10聖剣発祥の地でもあります」
「まさか、ミートラ公国まで絡んで来るとは計算が狂ってしまった」
苦虫を噛み締めた表情のオロチネス将軍であった。
報告者は「最後に、テラストラムを倒した戦士から伝言を預かってます……『堪能した……また連れて来い』とだけ……」
「何だと!? ……いや落ち着け……」
オロチネス将軍は考える……
(テラストラムを倒せる化物が居たとは大誤算だが、あの伝言が真実ならば、今すぐ対処しなくても問題ない……こうなれば一刻も速く素材を集めねば……)
と、ここで副官のガライアが走ってやって来た。
「オロチネス将軍!」
あまりの副官の勢いにビックリするオロチネス将軍……
「ガライアか……今、深刻な状況なのだよ、用件は何だ?」
ガライアは背筋を伸ばし報告する。
「はっ! マクリード国に向けた我が軍からの報告です」
「何だと!?」
こちらも予想より早い報告に嫌な予感か駆け巡る。
「マクリード方面軍、半数5部隊と大隊長含む精鋭部隊が消滅しました」
「こっちもか……して、敵の正体は何なのだ?」
(本当は驚きで叫びそうなのを我慢する)
ガライア副官は姿勢を微塵も崩さないで報告する。
「敵の正体は不明、実は……先程消滅と言った5部隊の内、4部隊は魔法攻撃と思われる状態で死体を確認、その4部隊の指揮下にあるメガストラムと、ギガストラムは切断された状態で発見されました。 しかし、残りの1部隊と大隊長及び精鋭部隊とその指揮下のギガストラム、テラストラムは見つかりませんでした……」
オロチネス将軍は頭を抱える「な、なんて事だ、あのテラストラムを倒せる様な規格外の化物が複数いるなんて……しかもマクリード側は正体不明ときている……」
「オロチネス将軍、この非常事態のため、鉱石と輝石の採掘量は目標値の4割程に留まりました」
頭を抱えっぱなしのオロチネス将軍の気配が変化する。
「そうか……良くやった……帰還した兵士は全て労って置け……戦争が始まるぞ。おそらく『バニス帝国』も動き出す……今あるストラム兵を全部防衛に投入するぞ! そして開発部はギガストラム及びテラストラムの製産に入れ! 開発部には休日など無いからな。ガライア、指示を任せた……私は少し独りになりたい……今夜は誰も通すな……用件は全て明日にせよ」
副官のガライアは「はっ!」と行って、報告者とオロチネス将軍の部谷を退室した。
「…………時間との勝負になるか? ふふっ 面白い……この程度の障害を乗り越えられないで、世界など盗れるものか……」
先程の精神的に参っていたオロチネス将軍とは別人の様に堂々としていた。
オロチネス将軍は1つの本棚を押した。
本当はぐるりと回転し、奥に隠し通路が見えた。
オロチネス将軍は隠し通路を通り抜け、ある部屋に来ていた。
ここは、オロチネス将軍の個人用の研究室である。
幾つかの紙が置いてあり、それにはメガストラム、ギガストラム、テラストラムの製造方法がしるされていた。
その部屋の奥には、 製造途中と思われる上半身と下半身に別れた大きな人型兵器があった。
オロチネス将軍はそれを見つめて、独り言を言う。
「ようやく、コレを造る資源が必要値まで集まった……コレが完成すれば、私はこの世界の神と成れるのだ……今までのストラム兵などコレを造る過程で出来た副産物に過ぎん……待っていろ今完成させてやるからな……『ペタストラム』!」
次回更新がすこし遅れそうです




