63#衝撃 ギガストラム 前編
◇鉱石坑道入り口付近◇
リメインズ軍の兵士に捕まったアルバとモクバは縛られた後、暴行を受けていた。
兵士は、逃げたトイバの居場所や、他に人が居ないか聞きたかったのだ。
しかし何度殴られても2人は口を割らなかった。
そこにもう1人 兵士がやって来た。
「2人は何か話したか? 」
「は、班長 未だですが今すぐ……」
と言って棒を持って大きく振りかぶる。
「もういい……少年なのに頑張ったじゃないか……それに情報がなくても私達にはメガストラムがあるじゃないか、50や100の援軍が来ても何ら問題あるまい…………だが、ただで帰す訳にも行かない……1晩2人を囮にしよう……坑道の調査は私ともう1人でやる。3人で見張りを頼む」
「「「はい! 了解です班長」」」
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それから、少し時間がたち、ランディは使い魔3人の死体を見つけた。
「…………」
(事態は僕が思ってるより悪い様だ……香織ちゃんとリリスたんには隠れて貰おう)
「香織ちゃん、リリスたん、ここからは隠れて見てくれないか? 香織ちゃん、もし僕がピンチになっても我慢してくれ、必ず生き残るから……」
「……わかったわ」
ランディはメイスを装備して、呪文を唱える。
「第1レベル呪文……レベルサーチ、第2レベル呪文……鋼皮レベル1、第2レベル呪文……オグルパワー、第2レベル呪文……ストライキング、第3レベル呪文……ゴージャスブレス」
今までにないくらい慎重なランディに、香織は驚く。
(今まで怒って本気を出したのは何度か見たけど、ここまで慎重なランディは初めて……)と事態の深刻さを感じとる香織。
そして、少し移動したランディが見たものは、縛られて転がっているアルバとモクバだった。
2人とも『1』と表示している、よし!生きてる。
そして、6人の見張りらしき人を見つける。
(ん? 3人がレベルサーチに反応しない……こんな事は初めてだ……他の3人は『2』か……)
ランディは正体不明の3人から攻撃する事にした。
しかし、ランディのこの判断は誤りであった。
「何者!」と兵士が気づいた時には、メガストラムに攻撃する直前だった。
ゴン! ゴン! 激しい音がなる。
ランディは、驚く……(石像? 何でこんな所に?)
兵士もランディがただならぬ者と感じて、直ぐに攻撃命令を出す。
「メガストラム!そいつを殺れ!」
3体のメガストラムは光線を吐き出した。
光線は、ランディの直前で消滅する。
(ふービックリした。バックルを装備してなかったら危ない所だった)
ランディの装備しているプラチナの『exclamationバックル』は第1レベルの魔法程度なら耐えられる魔法障壁を持っていた。
(しかりさっき殴った2体まるで効いていないように見えるんだが……)
ランディは3回ほど立て続けに攻撃してみたが、はバランスを崩すだけで、ダメージを受けた感じがしない……(僕の武器、呪文で強化しているのに無傷だと?)
ランディはメガストラムのパンチを避けながら「第2レベル呪文……リバース……ダメージ」とメガストラムに触れる。
しかしメガストラムにはなにも変化は無かった。
(コイツ、生き物じゃないから効かないのか……武器も駄目、魔法も駄目……まずいな……)
兵士も3体のメガストラムに囲まれているのに、平然と相手をしているランディに異常を感じて、「おい、班長を呼んでくれ」と言って1人坑道の中へはっていった。
……
…………
………………
兵士に呼ばれた班長が来た時には、兵士が1人倒れ、もう1人は距離を置いて様子を見ていたのだった。
「おい、どういう事だ?」
「は、班長……敵が1名 来ました……さ、3体のメガストラム相手に互角以上に戦っていて、痺れを切らした仲間が加勢に行った途端にやられました……私も距離をとるしかやることが無く……」
そして、1分置きのメガストラムの光線が吐き出される……ビーッ!
班長は「メ、メガストラムの光線も効かないのか……?」
「はい、これで20回以上の攻撃を受けてますが、効いた気配は全く無く……」
兵士達の班長は事態の異常さに次の手を打ち、兵士の1人に話しかける。
「おい、今すぐ……メガストラムを1体連れて隊長を呼べ、少々大げさでも構わん、出来るだけ急げ」
さらに班長は、自分用のメガストラム3体に命令する。
「メガストラム! 彼奴を殺せ!」
ここから、ランディ対メガストラムの戦いは1対6となり、メガストラムのパンチも僅かだが当たるようになった。
「班長、そのうち体力が尽きて、我々の勝ちでは?」
「いや、あの男はおかしい、よく見ろ我々の倍は力のあるメガストラムが力負けしている……油断せず6体のメガストラムで釘付けにするのだ。幸い隊長がいる駐屯地まで近い、30分もすれば隊長が来る、後は隊長に任せよう」
「わかりました」
この辺りから、ランディは戦い方を変えた。
武器をしまい、メガストラムの攻撃を受け流し、メガストラム同士を衝突させるような戦法に変えた。
理由は『ストライキング』のかかった武器で何度攻撃しても無傷という結果、同じ材質どうしを強くぶつけたらどうなるか試す事にしたのだった。
ランディの戦法に無理があるのか、メガストラムのパンチが、少しではあるが被弾する。
(プロテクションリングのお陰で、パンチのほとんどはダメージが無いが、こちらも決め手がまるで無い……参った)
その時、ほんの僅かであるがメガストラムが欠けたのが目に映った。
(しめた、この作戦は行ける……何!? )
僅かに欠けたメガストラムの傷は何と自己修復を始めていたのだ。
(くっ 何でこんな化物がいるんだ? くっそう もっと危険になるが。1体の同じ箇所を集中して、ぶつけてやる……)
ここから、3人の兵士はランディの戦いに見とれることになる。
メガストラム6体相手に、螺旋回転で受け流し、時には力ではね除け、メガストラムからの攻撃をもらいながら、たった1体のメガストラムの左胸に集中するうに同士討ちさせた。
……
……
……
……
……
……
……
……
……
そして、唖然とする兵士達が見守るなか、ついに1体のメガストラムの左胸が破壊され、機能が停止した。
「ば、馬鹿な……」
驚愕する兵士達の後方から人の気配がした。
気配の主は助けを呼んだ隊長達、急いで走って来て、たった今到着したところだった。
「隊長……」情けない声を出す兵士。
その隊長は「話しは聞いた……まず、化物を倒す。我が力、魔の下に凝縮し魔光となり弾けよ。魔光破」
おびただしい数の細い光が、隊長の左手の先に集まり直径30cm程の禍々しい光の玉に膨れ上がり、光線となった。
「ぐっ……」メガストラムの光線と違い、隊長の放つ『魔光破』はランディにダメージをあたえる。
隊長と副官が叫ぶ「「ギガストラム! あの男を殺せ!」」
そして、兵士に命令した。
「メガストラムは邪魔だ一時下げよ、念のため本隊の兄さ……大隊長にも信号弾で知らせた。我々に負けは無い!」
「「「はっ! メガストラム攻撃やめ!」」」
今度は、3体の青銅色の人型兵器ギガストラムがランディを襲う……そしてギガストラムも光線を吐き出す。
「ぐっ!」(新手? こいつらの攻撃は防げない…… )
ランディはギガストラムにも同じ戦法を取った。
(いける……灰色のやつよりほんの少し速くて、力があるだけだ……ぐっ!)
さらに、ランディは隊長と副官の『魔光破』をまともに受けてしまう。
そして、ギガストラムの光線もランディの命を削る……
(ぐっ 駄目だコイツらのビームは回避できない、しかも正確に1分置きに口からビームを出してやがる……)
ランディは3体のギガストラムと戦いながらも、兵士の隙を伺っているが、かなりの距離を取っている、さらにメガストラムも護衛している状況に打つ手の無いランディ……
しかしランディにはアルバ、モクバを見捨てて逃げる選択肢は無い。
ランディは敗北を予感しながら戦っていた。
その敗北の予感から確信に替わり始めた時、ランディの側に、突如金色の光が降り注いだ。
この、不思議な光景にリメインズ軍の兵士達も、一時的に攻撃を中断する……
そして、金色の光の中から20歳前後の 可愛さと美しさの同居した女性が出現した。
その女性は辺りをキョロキョロと見回し、ランディを見つけると、瞳を潤ませて。
「お兄ちゃん……」
そしてランディの発した言葉は「すみません……いったいどちら様でしょうか?」だった。
そのランディの発した言葉に女性は「お兄ちゃんのバカァァァァ!」
と叫んだ。
さぁ この謎の女性はだれでしょう?
次回『衝撃 ギガストラム 後編』でわかります。
ではまた。




