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62#脅威 メガストラム 後編

◇ある坑道の中◇


Cクラスの生徒15人とその使い魔、計34人は坑道の中で鉱石や輝石の見学をしていた。


アメリア先生が、中の説明をしている。


此方(こちら)の壁には『黄銅鉱』や『黄鉄鉱』彼方(あちら)の壁には『砒四面銅鉱』等が多く含まれているなど、この坑道付近には多彩な鉱石があります」


奥深く進むと「ここからは輝石が多く点在しています。『透輝石』『翡翠輝石』『バラ輝石』があり中を綺麗に彩っています」


さらに、奥深く進むと坑道の中とは思えない程の頑丈そうな扉があった。


「この先は貴重な金属『銀』が多く獲れるエリアになります。しかもこの中は、只の『銀』だけでなく、魔力の篭った『ミスリル銀』濃縮した魔力が含有している『クレリア銀』があります。そして『クレリア銀』の採掘には、大事な注意点があります。『クレリア銀』は、採掘と同時に魔物が産み出されるので、中規模以上の採掘隊をつかいます。そして、最深部には、伝説の金属『ヒヒイロカネ』があったと言います。もしかしたらまだ有るかも知れませんね、今は長期休航していますが、季節がかわれば再会します。……さぁ、みなさん復習しながら出口に向かいましょう」



往路と違い、復路はあちこちで生徒達が雑談していて、香織もランディに話しかけていた。

「ねぇランディ、最後に言っていた金属の名前聞いたこと無いわ、ランディ知ってる?」


「うん、ガルに聞いたこと有るけど『プロテクションリング』の作成にその金属を使うらしいぞ……ほら、僕も1個もってる」


ランディは右手の中指に嵌めているリングを見せる。


「でも、詳しい話しは、天才ガル先生に聞くといい、ガル先生ぇ」



「おおっ!」見事にランディのおだてに乗ったガルはバックパックから、3種の指輪を出した。


見た目はシンプルな造りでそれぞれが若干色の違う綺麗な銀の指輪だった。


白銀色の指輪を見せる。

「これが『プロテクションリング+1』厚手のローブと同程度の防御効果が得られる。ミスリル銀が主原料で、価値は金貨2500枚分だ」


香織のついでに話を聞いていたリリス、アルバ、トイバ、モクバの4人が、桁違いの価値に驚く。

「「「「さ、2500枚……ホエェェェ……」」」」


次に、黒銀色の指輪を見せる。

「これが『プロテクションリング+2』レザーアーマーと同程度の防御効果が得られる。クレリア銀が主原料で、価値は金貨7000枚分だ」


マクリード国民の一般家庭(大人2人、子供2人、使い魔2人)での、1ヶ月の消費金額は約金貨3枚なので、マジックアイテムの価値は相当な物である。


次に、黄銀色の指輪を見せる。

「これが『プロテクションリング+3』ハードレザーアーマーと同程度の防御効果が得られる。ヒヒイロカネが主原料で、その価値なんと金貨20000枚になる」


「「「「!?…………ゴクリ……」」」」

もはや、言葉になっていない……



次に、ガルが指差したのは、ランディの中指。

「このランディが装備しているのは『プロテクションリング+4』スタディットレザーアーマー並の防御効果があるぞ。あと、マジックリングには特性があって、1人2個までしか装備出来ない」



「「「「いいなぁ、欲しいなぁ」」」」


ランディは何でこの4人でハモってるの? あなたたち、1ヶ月前まで、虐めの加害者と被害者だよね? と思っていた。


「ははっ 確かにランディはかなり余分に持っているが実力が伴っていないと危険だ、俺だったら歩く宝石箱なんて、すぐに襲うけどな」


リリスがランディとガルの事を、心配する。

「ランディ、ガル……襲われないように気をつけてね……」


香織がリリスの、頭に手をのせて、安心させる。

「大丈夫よリリス、あの2人はわざと襲われるように仕向けてる節があるから……」



そう、特にガル等は好戦的なのだが、自分から仕掛ける事はほとんどなかった。

かわりに向かってくる相手には嬉々としてやっつけるのであった。


「でもガル様は左手にリングを4つも嵌めていますが……それって?」


ガルは、その質問待ってましたとばかりにのけ反り、「そこまで言われては仕方ない」と言う。


「誰もそこまで言ってないが……」


「本当は喋りたいのね……」


「1人2個までと言ったのは、マジックリングは、中指に嵌めて、初めて効果が発揮されるアイテムだからだ。だが俺様は中指が4本! そしてその指にはプロテクションリングが4つ、此を装備することによって、俺の防御力(アーマークラス)は20も上がる。これで無敵超人魔剣ガルの誕生だ……この前はニワトリちゃんに少々不覚をとったからね……ランディと装備することにした。」


「ガル様のリングは、どの位の価値が有るんですか?」


「これは、機密事項なので言えないが、ランディのリングは、オリハルコン製でその価値なんと金貨51000枚」


「ばらすの止めてよガル……今夜から盗賊に怯えてすごさなきゃ行けないじゃん……」(でも、ガルのリングは、『プロテクションリング+5』×4……いくらになるか知らないけど、何処かの国家予算並だよね、きっと……)




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


リリスは2学年での立ち位置はすでに、虐めの対象ではなく憧れ、希望の対象に代わっていた。


アンジャイとの決闘の後から、リリスは複数のクラスメイトといることが多くなった。

あれから毎日楽しそうに話をしている。


この時のランディは、子の成長を見ているような親の表情だったと言う。



夜になるとガルはいなくなる。


そう、ガルは例外はあるが、けっして人前では眠らない。


しかし、ガルの他にいなくなってる人がいた。


アルバ、トイバ、モクバの3人とその使い魔が、キャンプ場を抜け出していた。



抜け出している彼等は、昼間に見学した鉱石坑道にむかっていた……彼等は見学の時に自力で採れそうな輝石を偶然見つけていたのだった。



そして、鉱石坑道の近くまで来るとモクバが話す。


「おれ……今回『ライト』の呪文を選択してきた。お前らは?」


アルバが「おれ、『マジックストーン』」

トイバは「おれも、『ライト』だ」


「よし、それじゃ俺が明りを灯してやるぜ」

モクバは、下をガサガサ手探りで適当な大きさの小枝を見つけ、「第1レベル呪文……ライト……よし! 万能松明の出来上がりだ、さあ行こう」



このモクバの『ライト』の呪文が悲劇の幕開けとなった。


「何者だ!!」坑道の入り口でまっていたのは、見知らぬ兵士3人と灰色の人を模した人形があった。



3人は驚き、焦ったが、何とかモクバがはなしだした。

「さ、散歩をしていたんです……」と答える。


兵士の1人が「散歩? こんな所にか? 今の時期はここらへんは誰も居ないはずだぞ」


もう1人が「コイツら捕まえて色々聞き出した方がいいんじゃねぇか?」と小声ではなしている。



ここで、耳の良いトイバの使い魔が、「あの者達は、危険です……ここは私達で引き付けますので、トイバ様達はお逃げ下さい」


3人は、使い魔の言葉で一斉に逃げだす。



兵士が叫ぶ「まずい! 追いかけろ! メガストラム! 大人の方を殺れ! 俺達はかガキの方を追いかけよう。 聞きたい事があるから殺すなよ」



兵士達が3人を追いかける中、使い魔とメガストラムの戦闘が始まる……しかし戦いは、あまりにも一方的であった。


使い魔の攻撃はメガストラムに全く通用しない……代わりに、メガストラムの攻撃は、パンチと光線の2種類しかないのだが、確実に使い魔の体力を奪って言った。


そして、4分かからずに3人の使い魔は力尽きて息絶えてしまった。



一方、兵士達から逃げていた3人も、アルバとモクバが捕まりトイバだけが必死に逃げていた。


しかし、ほぼ普通の17歳の少年が 鍛え抜いた兵士に、逃げきれるわけもなく、捕まるのは時間の問題だった。


トイバは捕まりそうになった時、ランディの言葉を思い出した……『ライトは対象の目玉を狙えば目眩ましになる』と……


「第1レベル呪文……ライト!」

トイバは捕まる寸前に振り返り兵士の目を狙い呪文をかけた。


「うわ!? 何だ? め、目が見えない……」

慌てた兵士は腰にある剣を抜いて振り回す。


しかし、そんな攻撃は当たるはずもなく、トイバはかろうじて逃げきったのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



◇Cクラスのキャンプ場◇


クラスメイトの半数が寝出した頃、ボロボロになったトイバが錯乱状態でやって来た。

「ガル様ー、ガル様ー!」


トイバの大きな叫びに寝ていた人達は全員目を覚ます……トイバの異常な状態にアメリア先生が事情を聞こうとするが、錯乱したまま「ガル様! ガル様!」と叫び続けていた。



「トイバッ! しっかりしろっ!!」

トイバはランディの激しい声に、正気に戻った。

そして座り込み、泣きながら自分達の起きた状況を説明する。



ランディは事情を聞いて、何とか助けようと思うが、香織とリリスを連れて行くか悩んだ……


基本勉強のため、どんな戦いも連れて行くランディだったが、どうも今回は嫌な予感がすると 迷っていた。


ランディが悩んでいると、「ランディ、私も行くよ……役にたてるかわからないけど、ランディを助けるのが私の役目よ」


リリスも香織につられて、「ランディが行くなら私も……」


ランディは2人を連れて行く危険よりも、目を離して、例の兵士がキャンプ場に来る危険を優先した。


「わかった、連れて行くけど状況によっては隠れて貰うから」

と言って、ランディは自分が持っている小さなペットボトルを渡す。


「これは?」


「これは姿を一時的に隠す飲むアイテムだ」


ランディが渡したのは、融合以前のランデイヤが持っていた『インヴィジブルポーション』だった。



ランディ達は、トイバに聞いた 坑道の入り口に向かって走り出した。



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