57#僕達 ガル様親衛隊 前編
◇???◇
ランディは夢を見ていた。
ランディ自身、今見ているのが、夢であると直感的に理解はしていた。
神々しい石像の前に正座をしているランディ……
何処からか神秘的な声がする。
『ヴェル ランデイヤよ……あとは、交換の儀で、儀式は完了する。 その前に今一度言おう……我が戒律は絶体だ、破れば力は失われ、一生涯地獄の業火を溜飲し続けなければならぬ……』
「はい、心得ています。『食事以外の目的で同類の未成年を直接殺してはならない』ですね」
『そうだ。簡単な様だが、力をつければつけるほど難儀な戒律になる……では、そなたの血液を我が分身に垂らすのだ』
ランデイヤは神の宿る石像の頭に血を垂らした。
すると直ぐ様血液は石像に吸収され、代わりに石像の目から涙が涌き出て来た。
そして、ランデイヤは石像の涙を舐め採る
すると、神の……自由の暗黒女神『カレアス』の声が聞こえてきた。
『これにて、そなたは我が子となった……すでにレベル40のそなたは、数多の世界に存在する我が子等の中で10人に満たない『大司教』となった。弟子を取る時は我と同じ事をするが良い……もう会うことも無いだろうが、達者でな……我が子よ……』
神々しいまでの石像は、ただの石像に戻ってしまった。
そして、隣には入信の条件の1つ『信徒を1人用意する』の髪の短いランデイヤに似た人が微笑んでいた。
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夢から覚めたランディは思う。
また、すごいリアルな夢を見たな……
融合前のランデイヤの記憶だろう……
これで、深くは考えていなかったが、謎が解けた。
僕がこれだけの呪文が使えるのは……
自由の暗黒女神『カレアス』と信徒のお陰だと……
そして、殺人に全く抵抗の無いガルが……以前、未成年は殺せないと言ったガルも『カレアス』の信徒なのだと……
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◇学校の入り口付近◇
ここには今、 以前リリスを虐めていた生徒の2人が、3日ぶりに学校に来て入り口を見張っていた。
そこにランディ達4人が学校の入り口までやって来た。
リリスは2人を見て、咄嗟にランディの後ろに隠れる。
2人はランディ達を見つけて、姿勢を正した。
「「おはようございますガル様」」
お辞儀する、自身の使い魔にもお辞儀させている。
「おはよう、トイバにアルバ」
ガルの言葉に2人はパァっと笑顔になった。
「「オレ……僕たちの名前を覚えていてくれましたか……光栄です」」
2人でハモっている。
2人の生徒のあまりの変化に唖然とする、ランディ、香織、リリスであった。
ランディと香織は「ガル……あの後何かやったな……」
「別人にすり替えたのかしら?」
「もう、ロボットだったりしてな……」
と、小声で話し合ってる。
「「ランディさんおはようございます」」
またしてもハモる2人をみて、コイツら双子か?
と心の中で突っ込みを入れる。
「「オレ……僕たち目が覚めました。もう弱い者虐めはしないと……」」
「うん、うん」ランディは感動して頷く。
(なんだ、ちゃんと説得すれば伝わるんじゃないか……そう……わかり合えるんだ。僕は大人気もなく、30%の力で叩いてしまった……ああ、自分が恥ずかしい……)
「「これからはホネのある奴を虐める事にします」」
「え?」
「「ガル様が体を使って教えてくれました。楽しくない嘘はつくなとか、相手が強ければ、多対1でもOKとか、弱い奴をやっつけたい時は強くしてから叩けとか……」」
「はべ?」
「そして、ガル様がどれだけ偉大な人物か……」
「は?」
「「そして、オレ……僕たちはこう思ったんです。ガル様親衛隊を作ろうと……」」
「はぁ……」呆れてため息をつくランディ。
「「で、ガル様に聞いたんです。手っ取り早く強く成るにはランディさんに頼めって」」
「ばに?!」慌ててガルを睨むランディ。
ガルはいたずらっ子の様な表情をして、「あーコイツらはクレリックの素質あると思うぞ……レベル1になるまででいいから、教えてやってくれ」
ガルの様子から判断したのかランディは「ガル、調子に乗ってなんか約束した?」
「ギクッ」
(やっぱり……あーなんで僕がガル親衛隊の育成するんだよ……)
と思うランディであった。
そして、ランディが頭を抱えている間に、2人はリリスに話しかけていた。
「「リリス、今までごめんな、これからは仲間だ。一緒にガル様を盛り上げて行こうぜ!」」
リリスは少しはにかみながら「ううん いいのよ これからは仲間ね、わかった。でも……私、ランディ派だから……」
実はCクラスの3分の2が ランディ、ガル、香織の派閥を作っては 参加していた。
その事は、ランディ達を含めた使い魔全員が知らない事だった。
ランディが問う……「いつまでハモってるの君達……」
◇人気の無い とある空き地◇
ランディはまたしても、ため息をついている。
「はぁ……なんか増えてるし……」
やって来たのは、生徒、使い魔、母親の3人が 3組いたからだ。
理由はランディにもわかったが、増えた1組は、リリスん虐めていた3人組の1人だった。
彼は、早々に謝ったので、ガルの洗礼は受けなかったのだが、ランディさんに強くして貰うと聞いて、無理矢理参加したのだった。
2人の母親達は「あら、ガル様 今日からうちの子供達を強くして下さるって聞きましたわ。感謝しますわ、ガル様」
「ガル様、今日も素敵でいらっしゃいますわね」
とか、ガル大絶賛だし……しかもリリスは、元虐めっ子3人組と、談笑している。
(おかしいよね? ね? おかしいよね? 虐めってもっと根が深いもんじゃない? 何? あのみんなの和やかな雰囲気は……もしかしたら僕がおかしいの? そうなの?)
頭を抱えながら自問自答して、座り込んでいるランディであった。
ランディの心の回復と 同時に、ガルが木彫りの人形を持ってきた。
「ランディ、クレリックの信徒の増やし方なんだが……」
「ああ、知ってる……」夢で見たとは言わなかったランディだった。
「何だ、融合前の記憶、少しは有るのか……」
「ああ少しだけね……」
(夢で見た部分だけだけど……)
ランディは3組の母子に、『自由の暗黒女神カレアス』の教えと戒律を伝えた。
そして、3人のガル様親衛隊には、『交換の儀』まで、完了したのだった。
ランディの記憶ではここまでだったので、この後の鍛え方に悩んでいたが、この事はランディの杞憂に終わる事になる。
「では、明日からみんなで体を鍛えましょう」
と言ってこの場は解散したのだった。




