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54#夢と階級と食事会

◇???◇


若く髪の長い美しい女性が、 赤子を抱いている(たくま)しい男性に話かけている。

「あなた、本当にこの子の封印が出来るの?」


男性は答える。

「ああ、やる! やらなくてはならない! 」

男性はそっと赤子をテーブルに置く……

すると、なんと赤子はテーブルの上、5cmの所で浮いてるではないか……

「見るんだ、まだ赤子なのに宙に浮くほどの放出魔力……これが見つかりでもしたら、良くて実験材料、悪くすると世界中がこの子をめぐって戦争を起こしかねない……」


「でも、封印の魔法は魔力と生命力を使うのよ……あなたの命に危険が……」


「俺の命なんか構うものか! ……急な事になるが、明日は30日に一度の『爆霊の月』だ……此を利用すれば、封印の秘術も上手く行くはずだ……後の事は頼むぞ『○○○○○』、『××××××』も力を貸してくれ」


男性の使い魔と思われる者が答える。

「はい、私も命を賭けてお手伝いいたします」



◇???の暗い森◇


男性は真剣な眼差しで話す。

「ここなら、魔力の源、霊子が集まるこの場所なら、きっと、封印の秘術が成功するはず……いや! させるんだ!」


拳を握り、気合いを入れる男性。

男性は、自らの手首を切り、その血で、魔方陣を描き出す。


1人の女性と使い魔と思われる2名は、魔方陣を描く男性をじっと見つめている。


「闇夜に紅く光る爆霊の月に申し上げる、バーラノーラ・ザンスクリットモータルモータル・ア・ンディル・アン・グレイフォード」

血の魔方陣が光り出す……魔方陣の真ん中に赤子が居る……

「爆霊極大龍神縛封陣!!」


男性の生気がみるみる失われていく……そして、男の表情は悔しさに満ち溢れていた。

「爆霊の月、霊子の森、そして、この命をもってしても足りないというのか……」


男性は噛み締めた唇から血が流れる……


「あなたっ」


女性が駆け寄る前に、二人の使い魔が、男性の肩に手を置く……


「さぁ、私たちの命をお使い下さい。諦めるのはまだ早いです……」


「すまない……うおおおおおおお…………」















今、赤子は光を失った魔法陣の真ん中ですやすや眠っている。


その赤子を見つめながら、「○○○○○」

力なく男性が話す。


「はい、あなた……」

女性は泣いているようだ……


「封印は成功した……この子の魔力は1000分の1に縮小された……これからこの子は生涯、魔法の使えない苦しい人生を送る事になるが、2人とも……辛い人生を送るかもしれないが、○○○を……○○○を頼む……」


ここで男性の息は途絶えた……男性の後ろには既に生き絶えた2人の使い魔が倒れていた。


「あなたぁぁぁぁぁ!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ランディはここで目が覚めた。


「う~ん なんか映画を見ていた様な夢だったなぁ……不思議な夢を見たものだ……昨晩『爆霊の月』をみたせいかな…….神秘的な月だったなぁ」


爆霊の月とは、この世界で、30日に一度だけ見れる紅い月の事で、魔人族の魔力が少しだけ上昇する月の事であった。



だが、既にランディは、昨晩見た夢の事など忘れたかの様に、日課の呪文選択をしていたのだった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




◇Cクラスの教室◇


アメリア先生が教壇に立っている。

「本日は使い魔達について、現在わかっている事を話します。基本、使い魔達は自身の故郷や自分の事は話しません。もしかしたら話せない制約でも有るのかも知れませんね。 しかし稀に、そんな物に縛られない中級以上の使い魔が紛れて召喚されることがあります」


ボードに要点を書いていくアメリア先生。


「そんな使い魔達の情報から、使い魔達の階級の存在が明らかになりました。 此れから下から階級を書き上げますので、覚えておくように……」


カッカッカッカッと書き上げりアメリア先生。


「下級に分類される、『使い魔』『悪魔』『公爵』。中級に分類される、『貴公子』『総統』『伯爵』。上級に分類される、『侯爵』『王』『将軍』。最後に支配者級の『閣僚』『大公』『帝王』となります」


そこで、書き終えた、アメリア先生が振り向き。


「私達が召喚して、使い魔とするのは下級に分類される者達ですが、稀に中級以上の者達が紛れているのは、確かです。そして中級以上の者を簡単に見分ける方法が1つ有ります。それは、主人の命令に抵抗出来る者は中級以上になります。みんなは、無理な事を言って試さないで下さいね。後、階級と強さは比例しないそうです。しかし、中級以上の使い魔達は皆素晴らしい力を持っていたらしいです」



そんな、アメリア先生の授業を教室の外から、見ていた使い魔が1人いた……


彼女の名は『サロメ』このサロメはここの世界『ディバイデット』の見学と勉強のため自ら召喚された使い魔であった。


彼女の階級は、中級下位の『貴公子』特殊能力は 階級判定など幾つか備えている。


そのサロメは、ランディ、ガル、香織の事が気になっていた。


理由は彼等3人が、人間臭かったからだ。


何度も監視をしているが、彼等には、使い魔 特有の気配が無い。


当然階級が上がるにつれ、気配を消せるのが上手くなるのは知っているが、 あの3人は怪しい……特にカオリなんて、人間そのものだと思っていたのだった。


そしてサロメは今、10日に一度しか使えない『階級判定』を実行に移した。



「あひゃぁっ!?」サロメは隠れて覗いていたにも関わらず、奇妙な悲鳴を上げてしまった。


何故ならば、ランディの階級が『西方大公』ガルの階級が『南方大公』と見えた為だった。


サロメは今(何ですって?!たたたたたた大公ですって? 私が知っているあの伝説の魔王『食漢大公』ベルゼブブ様と同格?! いや……階級と強さは比例しないのよ。けど……けど……大公は大公よね、弱いわけ無いじゃないのよ……よし、決めた! 今後あの2人には絶対に関わらない様にしましょう!)


固く誓ったサロメであった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



◇人気の無い森の中◇


ランディとガルが真剣な表情で話し合っている。


「ランディやはりアレはダメなのか?」


「よく考えてくれ、ガル……何も知らない人々にとって、アレは依存性が高い……」


「そ、それほどなのか? アレは……」


「ああ、間違いない……帝○ホテルで食べた 10000円のステーキもなかなかの物だったが、大坂に行ったときに鉄板焼屋で食べた7000円のステーキの方が遥かに上回る……問題なのは50人前しか出ない事だ……」


「なんとかならないのか? ランディ……」

残念そうな、悔しそうな微妙な表情で訴えるガル。



どうやら、ランディも悔しい様な表情だ。

「野菜で何度も試したが、駄目だった……僕には量の調節が出来ない。 ……僕が2人前 香織ちゃんが1人前、ガル……47人分 食べれるか?」


「くぅ……いくら俺様でもそれは無理だ……素敵なステーキは我慢するとして、なにか代わりの物などないか」



「ダブルチーズバーガーだ!」



驚くガル……

「えっ!?」



「ダブルチーズバーガーにしよう。アレは安価なのに絶品の一品だ! しかも、この程度なら皆に食べてもらっても悪影響は無いはず……よし、そうと決まれば人を呼んで食事会にしよう」



こうして、急遽人を集めて、ランディシェフによる試食会が始まった。





◇リリスの家の前◇


ランディが、呪文で立食用のテーブルを幾つか出現させた。



テーブルは近所の家のテーブルを 破壊して、呪文で直し、召喚可能にした物である。

突然邪魔しては、めぼしい物品を壊していたので最初は叫ばれた様であったが、ランディは壊した物を直してから、代わりに玉葱、キャベツを差し入れしたので、最終的には逆に感謝されたようだった。


もちろんリリス達には秘密であるが、香織とガルはだいたいランディが何をしたか検討がついてる様子だった。


なにせ、リリスの学校の備品を壊しては、直して、の繰り返しだった日もあったのだから……




ランディが、呆れ顔でみんなに話している。

「えっと……あなた達……友達とかいないの?」


一堂「……………………」



実際、試食会のために集まったのは、リリスの母親が、コンルシズと言う男性を1人、ガル、香織、リリスに至っては誰も連れてきていなかった。


一方、ランディは散歩とリリスの売名を兼ねて、余った野菜を近所に配りまくっていたため、かなり有名かな使い魔になっていた。


そのせいかランディは10組計20名を試食会に誘う事に成功していた。




「では、いきます! 第5レベル呪文……クリエイトフードフリー」



テーブルの上に、無地の包み紙に包まれた、『ダブルチーズバーガー』150個きっかり出現したのであった。


包み紙に包まれているのに美味しそうな香りが漂う。



ランディの魔法では、50人前きっかりしか出せない為、1人前あたり3つの計算になる。




みんなで楽しく、『ダブルチーズバーガー』を試食している最中、リリスとその母親は「素敵な使い魔ね」「羨ましいわ」とか、持ち上げられていた。



まぁ ランディが呼んだのは、人当たりの良いランディが、気に入った人達しか呼んでいないから当たり前なのかもしれないが……



ランディは試食をしたガルと喜びのハイタッチをした後、コンルシズの所に言って話しかけていた。


「コンさん、コンさんは何で使い魔を連れて来なかったんですか? 」


コンルシズは少し困った感じで、ポリポリと頬を掻く。

「ランディ君、君には理解出来ないと思うけど、私の使い魔はイケメンなんだ……」


確かに一般人なら気づかなかったかも知れないが、ランディは気づいてしまった。


「成程……リリスのお母さんに見せたく無いんですね」


コンルシズはたったそれだけで理解してしまったランディに驚く……


「凄いねランディ君、私の心でも読めるのかい? それにしてもランディ君の出した食べ物凄く美味いよ、作り方なんて判るかい?」


「残念ですが、これについては食べる専門だったので……」


「そうか、今度真似でもしてみようかな……ランディ君1つ持って帰ってもいいかな?」


「どうぞ持って帰って下さいね」


ランディとコンルシズの様子を見ていた人が、余った『ダブルチーズバーガー』を持って帰りたいと、ランディに群がり始めた。



この試食会は大好評で、ランディの意見無しに、5日に一回開催することに決まった。

どうやら、ガルとリリスが調子に乗ったのが、原因らしいが……



こうして、少しずつ参加者が増える事になる試食会は幕を閉じたのだった。




次回は久々のバトル物になります。

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