48#使い魔の得意技
楽しそうに、家路に向かうリリス達4人……
突然リリスの前で泥が弾けた。
「キャッ……えっ?」
ランディが、リリス目掛けて飛んできた泥玉を叩き落としたのだった。
泥玉が飛んできた方向には、6人の年齢16歳位の少年と、6人の使い魔らしき人達がいた。
「おい、これは遊びだ遊び」1人の少年が使い魔に話しかけている。
もう1人も「そう、遊びなんだよ。だれが一番リリスに当てられるか競争な」
そんな声がリリス達にも聞こえた。
リリスは昨日事を思い出して青ざめた。
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リリス視点
どうしよう……私は震えながら、何故かランディさんの方を見てしまった。
しかし、ランディさんは物凄く楽しそうにしている。
「ガル、ガル、早速 異世界の遊びだ!泥投げだよっ 懐かしいなぁ よしっガル、香織ちゃん勝負だ!
首から上は10点、胴体6点、手足は4点な、主は香織ちゃんの真後ろで泥玉を作って上げて」
「くくっ、ランディと投擲勝負か……面白い」
「もう2人とも、子供なんだから……」
そう言う香織さんもなんだか、楽しそうにしている。
~ こうして12対4の泥投げ合戦が始まったのだが、これはどちらが勝つかのゲームにはならなかった。
ランディ、ガル、香織の装備しているバックルには、対飛び道具完全防御の効果がかかっていたのだった 。
当然香織の真後ろにいるリリスにも、泥玉が当たること無く、ものの5分で、少年6人と使い魔6人が逃げ帰る事になった。~
なんだかあっと言う間に、みんな逃げ出しちゃったよ……
私は3人を見る…… そこにはいじけているランディさんとガルさん……香織さんはガッツポーズをしついる。
もう3人とも凄いの! 香織さんなんか、20発中20発、相手の使い魔の頭に命中したの……ランディさんやガルさんだって、泥玉外したのを見てないんだよ。
でも、いつもたくさん私に当たる泥玉、今日は一回も当たらなかったな……不思議な日もあるんだなぁ。
私、こんなに楽しい帰り道初めて……
◇リリスの家の付近◇
私の家まで着いたわ、ふふっ お母さん驚くだろうなぁ、私は皆に話しかける。
「ここが、私の家なの、ふふっ大きいでしょ? 中は何にも無いけど……がっかりしないでね」
私は深呼吸して、ドアを開ける。
「お母さん! ただいまぁ!」
家の奥からお母さんの声が聞こえる。
「お帰りなさい、随分と元気な声だけど、もしかして……」
トントントントンとお母さんの足音が近づいてくる。
「あら……リリス、お友達? 使い魔は?」
私はドヤ顔になって「ふふ……驚かないでよ、お母さん。なんと3人とも私の使い魔なの。紹介するね。右からランディさん、香織さん、ガルさん。 でこっちが私のお母さん」
「主、僕の事はランディでいいって、お母さん初めまして僕は、ランデイヤといいます。ランディと呼んでください」
私、主って感じじゃないから、名前で呼んで貰いたいなぁ。
「じゃランディって呼ぶから私の事はリリスね」
「わかったよリリスたん」
たん?なんか不思議な呼び方ね。
「俺はガル、まあガルって呼んでいいぜ」
にやっとするガルさん……あっガルね。
「私も香織でいいわ。お母さん、よろしくお願いします」
丁寧に頭を下げる香織さん……あっ香織ね。
お母さんは物凄く驚いている様子、私が使い魔3人も出したからね。
「私はリリステルの母、ケット・シーです。これからリリスをよろしくお願いしますね」
お母さん、泣いてる……そんなに嬉しいんだ……私ももらい泣きしそう……ん? ランディさん あっランディね。
ランディが私とお母さんを交互に見て何か呟いてる……聞き取れた言葉は『母子どんぶり完成』って、意味がわからないなぁ 何の事かな?
俺はが話を続ける。
「折角の記念日なのに何もおもてなし出来なくて、ご免なさいね、私はこれから近所に手伝いに出掛けるのよ……リリスとゆっくりしてて」
私は少し考えた後、「そうだ! お母さん、『クァヌギ』の実を採ってきてあげるよ……かなり渋いけど……5人分くらいなら直ぐに集まるはずよ」
「あら、あれば灰汁抜きに10日かけても美味しくならないわよ、『シァイ』の実を探したら?」
『シァイ』の実は灰汁抜きしないでも食べれる手軽な実だから、クラスメイト達が居るかもしれない……
「あそこは、皆が取り尽くしてるよぅ、『クァヌギ』だって、砕いて茹でれば少しは灰汁が取れるわ」
「そんな事しなくても、私が近所にお願いすれば……」
「お母さんはいいの! ここは、私に任せて! ねぇ皆、『クァヌギ』の実を集めるの手伝って、沢山集めたいの」
皆にお願いしてみたら、3人とも快く引き受けてくれた。
さすが私の使い魔……じゃなくて友達ね。
こうして『クァヌギ』の群生地に来た私達。
私は『クァヌギ』の実を1つ つまみ上げ、実に付いてる帽子を剥ぎとって、「ねっ 皆、此を沢山集めたいて来てちょうだい。殻の割れていないやつね、後で食べれる実の見分け方を教えるから」
すると、ガルさんが……あっガルね、そのガルが入れ物から大きな青い物体を出してきた。
う~ん ガルって、指が蛇に変わったりしたりすごいなぁ……と感心していたら、5m四方くらいの敷物に変わってしまった。
私、ビックリ。
「なんだガル、ブルーシートなんて持ってたの?」
ふぅん、あれは『ブルーシート』って言うのね。
「おう、ホームセンターで買ったんだ」
と言って黒い小さい棒をもって敷物に向かって屈む……はっ、ガルさんが、持っていたのはインクの入れ物だったのね、みるみる内にブルーシートに『十』の字を書いた。
ガル、いったい何をするの?
「ランディ、今度はドングリ集めで勝負だ! さっきは玉投げで香織ちゃんにボロ負けしたからな……」
「ほほう、それは名案だ早速リベンジの機会が来たわけだ……」
今度はランディとガルが声を揃えて、「「今度は負けないぞ!」」
その香織は、「もう、子供なんだから……」と言いながら乗り気だ。
私も楽しのしくなって来た。
「私も参加するよ! この森は私の庭なんだからっ」
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そして、驚く事に『クァヌギ』の実集めは、10分程で、ブルーシートの上に実が一杯になり、終了になっちゃった。
もうランディとガルが凄いの……ランディとガルは直接樹に登り、物凄い速さで樹から樹へ移動してあっという間にブルーシート一杯になったの。
で、ガルが反り返って、ランディがしゃがんでるから、ガルの勝ち? 私には見分けつかないけど……
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「おほん、では これから食べられる実と、古くて食べられない実の見分けたいんだけど、量がありすぎて困ったなぁ」
悩む私。
するとランディが、「あ、それなら僕がやるよ。試したい事もあるしね」
と言って、実を指2本でペキリと割った。
「うわっ、ランディ凄い……」
と、つい口に出して言ってしまった。
ランディは私に向かってVサイン。
なんか……ランディの笑顔格好良いかも……って、そのまま実を食べちゃた。
やっぱり渋いよね、顔が変になったもの……
「こりゃかなり渋いな……食べられない事も無いが……よしっ、邪魔なのはタンニン、タンニン、タンニン……」
ランディは何を呟いてるのかな?
「第1レベル呪文……ピュリファイフード」
えっランディ 何を言ってるのかな? と思ったらまた、『クァヌギ』の実を食べちゃった……おなか壊しちゃうよぅ。
「うん、いける。香織ちゃん、ガル、食べてみな」
殻を割って二人に渡すランディ……二人とも何の警戒もしないで食べた。
「うん、まあまあね。生の栗を食べた感じかな?」
「そこまで甘くないだろ? 塩と胡麻油で炒っちまおうぜ」
私も何だか気になって来た……
「ねえねえランディ、本当にそのまま食べれるの?」
「ん? うん 食べれるよ。1つどうぞ」
ランディから殻を剥いた実を1つ貰った。
私は食べて見て、驚いたのは渋さが全くなかったのだ……
「ランディ、これに何したの?」
「リリスたん、これは魔法で『クヌギ』の実を清めたのさ。次いでに渋味の原因である『タンニン』を除去を試みたら、結果大成功」
とにっこり笑うランディ……あぁ……あの笑顔好きだなぁ。
気が付くと、ガルは大きな袋を取り出して、実を集めていた。
わかった、ランディはきっと魔法使いだわ、そしてガルが道具屋さんね。
香織は何が得意なのかな、後で聞いてみよっと。
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私は家に着くと、早速鍋に水を張り、『クァヌギ』の実を三回掴んで、水の中に入れる……実は全部沈んだ……ランディ疑ってゴメンね。
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夕方、お母さんが帰ってきた。
私は待ちきれなかったかの様に、お母さんに『クァヌギ』の話をしたら、お母さんも信じられない様子だったから、ガルが炒った実を食べてもらったら、ビックリしながら納得してくれた。
今晩は珍しく、私も料理の準備に参加、それで気づいたんだけど、このうちの食糧がもう無い、でもお母さんは、今日は特別な日だからと3人の為に残りの食材全てを使ってくれた。
「お母さん、いいの? 明日からどうするの?」
「いいの、今日はリリスの使い魔を出せた大切な記念日でしょう? あの人達にちゃんとおもてなしをしないとね。明日からは、リリス達が採ってくれた不思議な木の実があるし、私も手伝いの時間を増やせば……」
「お母さん……」
~~しかしこの会話はランディ達に聞かれてしまっていた。
ランディがプルプル震えている。
香織が「ランディどうしたの?」と聞く。
代わりに答えたのはガルだ。
「あの母娘の愛が、ランディの琴線に触れてしまったな……明日からのランディの呪文構成が、どうなる事か……」
ガルは諦め顔だった。
そして、香織もその意味がすぐにわかったのだった。
ランディは目に涙を浮かべながら「話は聞きました」と言ってリリスと母親に抱きついた。
「きゃっ」
「あらあら」
「今日から、使い魔ランディとその仲間達にお任せ下さい」
ランディはニヤリと微笑んだ。




