47#3人の使い魔
魔方陣が淡く光りはじめた。
そして光が強くなった。
光の中から三つの影が見える……
光が消えてきた……
すると、そこには三体もの使い魔が立っていた。
使い魔の性別は、男性が二人、女性が一人。
姿形はわたし達と同じで、年齢は三人とも二十歳くらいだと思われる。
三人とも、軽装とは言え、武装した状態だった。
辺りにの生徒達からどよめきが走る。
三人いる先生も驚きの余り、微動だにしない。
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わたし……わたしは念願の使い魔召喚に成功したんだわ。
目が潤んで三人の姿がよく見えない。
声も出せない、でも歩くことは出来る。
わたしはゆっくりと三人に近付く……今ならはっきりわかる、勘違いじゃない。
私の使い魔は三人もいる。
今まで三人も使い魔を出した人がいるなんて、聞いたこと無い。
三人とも、少し頼りない感じがするけど、そんな事はどうでもいい……
初めの一言はなんて言おう……他の人達が使うありきたりの言葉なんか使いたくない。
そうだ、まず自己紹介をして、使い魔さんの名前をきいて、それからお友達になってって言おう。
友達なんて、みんなに笑われるかもしれないけど、わたし決めた。
わたしは涙でグチャグチャな顔を腕で拭いて、声を絞り出す。
「始めまして、わたしはリリステル……わ、わた、わた……わたしの友達になって…………ぐすっ」
言えた、言いたいことが言えたかわからないけど、わたしはとうとう使い魔召喚に成功して、話しかける事が出来たんだ。
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ランディ視点
う~ん……今回の転移先は、ギャラリーが多いぞ。
少し見回すと、ほとんどの人が驚いているようだ……
それもそうだな、いきなり三人の人間が出てきたら驚くよな、上手い言い訳考えて置けば良かった……ん? 僕達の真下に魔方陣があるぞ……はて?
この状態で、話に花を咲かせるのも……ためらうな……
小声で呪文を唱えよう。
「第4レベル呪文……テレパシー」
(ガル、ガル、聞こえるか? )
(ランディ……テレパシーか、なんだ?)
(僕ら魔方陣の上にいるけど直接召喚されたの?)
(いや、それは無いだろ、何らかの巻き添えを喰らってる筈だ……術式は解らないが多分足元の魔方陣で、何かを呼び出してそれに巻き込まれたんだろうな)
(しかし、この場には僕ら三人だけ……一体何に巻き込まれたんだ?)
その時 香織ちゃんが、何かを見つけた。
「あっ小蝿」
パチン! と香織ちゃんが手を叩き小蝿を潰す……
(…………………………まさかそんなわけないよね……)
(…………だよな……)
と、僕達の所にゆっくりと歩いてくる女の子がいた。
かなり可愛い、ストライクだ。
『ランディ』アイによると、身長155cm、綺麗な青髪をして、胸のサイズは 80のBカップと見た。
まあ、マーニャと同程度だな、その子が何故か泣きながら話しかけてきた。
「始めましてわたしはリリステル……わ、わた、わた……私の友達になって…………ぐすっ」
(ガル、何で泣いてるんだ? それにこの子まさか……)
(何で泣いてるかわ解らないが、この子が召喚主だろうな……しかも俺たちを召喚したと思ってるらしいぞ、しかも召喚対象相手に友達か……気に入ったぞ、ランディ。この子の家に住み着こう)
(そうだな、この子の家を拠点に楽しい異世界ライフを過ごそう…………香織ちゃん、香織ちゃん、聞こえますか? 只今テレパシーで 話しかけてます。頭の中で語りかけてごらん?)
(えっ? ランディ? テレパシーなの? 聞こえる? )
(ああ 聞こえる。どうやらこの子の呼び出した何かに、巻き添え召喚されたみたいだから、この子の家に世話になろう)
(そ、そうね わかったわ。でも、何に巻き添えされたのかしら?)
(そ、そうだな……取りあえず忘れよう…………)
(?? ……わかったわ)
「始めまして、僕はランデイヤ、ランディと呼んでくれ」
「俺様はガル、人呼んで魔剣ガルだ」
「私は香織よ、よろしくね。えっと~ リリステルさん?」
女の子はさらに感動したらしく、泣きながら返答する。
「う、うえ~ ヒック…… リ、リリスでいいでずぅ」
「はい、リリスちゃん」
お互い自己紹介は終わったが、周りのざわめきがおさまらない。
すると、年増の女性(アメリア先生)がようやく落ち着いた様で、大きな声でみんなを大人しくさせる。
「はい! みんな静かに!あと2人残っているのよ!」
ようやく辺りのざわめきが、落ち着きだした。
一人、魔方陣の前で祈っているように見える……すると、淡く光だした魔方陣から、頭に四本の角が付いてる男が出てきた。
なるほど、間違いなく召喚の魔方陣だな、
周りを再度確認すると、概ね若者一人につき、一人付き従っているようにも見える。
まぁ人間ばかりじゃないが、三分の一は、ペガサス、グリフォン等 人間タイプじゃない、外に巨人も一体いる。
「はい、最後はオエアー君」
「はい、先生 」
男子が一人魔方陣の前で、祈りを捧げているように見える……
ふむふむ、恐らくここは、何らかの学校と見た。
年増の女性は、先生だったんだな。
召喚術の実習か何かだろう……
折角テレパシーを使ったから、このまま先生の頭の中を覗けないか、試してみよう。
(……ふう、今年も使い魔召喚の儀も、あといち人で最後ね、今回は、昨年落第したリリスさんも使い魔召喚できたわね、でも三人同時なんて聞いたこと無いわ、この後 学校代表殿にでも聞いてみようかしら。でも、来期からの実習、リリスさん達に無事にこなせるかしら、この使い魔達もリリスさんみたいに落ちこぼれだったら……)
くうぅぅ あの年増、この僕を落ちこぼれだと?
手始めにベットの中で、僕がどんなに凄いか見せてやるか……
ふと、生徒達から大きなざわめきが聞こえてきた。
なんだ?
「オエアーすげーよ、なんて格好いい使い魔なんだ……」
オエアーと言う男子が召喚した使い魔は、六枚の白い羽を持ち、頭に黒い二重のリングがかかっているまるで堕天使のような出で立ちであった。
周囲のざわめきをかき消すように、年増先生が話しだす。
「はい、皆さん落ち着いてくださいね、これで全員使い魔召喚できましたね。これで一年目の全行程を修了いたしました。来期の二年目は、使い魔使役した実習が、主になります。これから十日間の休みの間に、使い魔の特性を知り、信頼関係を築いてくださいね。では、少し早いですが、解散!」
みるみる散り散りになっていく一年の生徒達……ほとんどの生徒が、リリスを忘れたかの様に去って行くそんな中、二人の生徒がリリスの所に近寄り絡んできた。
「よう、リリス。使い魔を三体も出した時は驚いたが、どれも弱そうだな、三体纏めて一人前って事か?」
もう一人が、僕に歩み寄って来た。
「リリスの使い魔ぁ! あんた得意な事あんのか? まぁ何にも出来ないだろうがなぁ……」
この生徒、好感を覚えるくらいの清々しい絡み方だぞ……本来なら馬鹿友になれるはずだが、これからお世話になる、リリスたんの瞳を潤ませたんだから、少し驚かしてもいいだろう。
「はい、僕は手品が得意です」
生徒Aは僕を馬鹿にしたかの様に、
「はぁ? 手品? なら見せて見ろよ」
生徒Aの使い魔が、
「御主人、もう少し穏便にしては如何かと……」
「いいんだ、リリスの使い魔なんて何にも出来ないに決まってる。おい、早く手品を見せろ!」
僕はにっこり微笑み、
「はい、第1レベル呪文……コーズフィアー」
と生徒Aに触れる……
「ん、なんだ……あ……う、うわぁ く、来るなっ!来ないでくれぇぇ」
と言って数歩後ろに下がり失禁して座り込み首を振りながら泣いてしまった。
「御主人!」
使い魔が駆け寄る。
生徒Bは、僕にむかい怒鳴る。
「おい、なにしやがっ……」
「フィンガースネークバインド!」
ガルが、生徒Bとその使い魔を同時に蛇の指で拘束する。
「うぐ……ぐるじい……」
ガルは話す……
「オイオイお前らよ、俺様はランディと違って優しく無いぞ……未成年だから殺しはしないが、手足の関節全部外すなら、簡単にやるぞ?」
「御主人殿!」
生徒Bの使い魔が、蛇の指の拘束を引き剥がそうとする。
「おっと待ちな、使い魔さん。下手な動きをしたら坊やの眼をくり貫く」
ガルの蛇の頭は、生徒Bの瞳の前で口を開けて近づいて行く……
「あひぃ……」
使い魔は、仕方無さそうに動きを止めた。
ガルは生徒Bにしか聞こえないような小声で、囁く「おい、小僧。次に俺達を馬鹿にしたら……手足を引きちぎるからな……判ったら頷け」
生徒Bは、必死に頷く。
一方、失禁した生徒Aの使い魔は、
「御主人に何をした!」
僕に、喰って掛かる。
「何をしただと? 僕達の主が、泣きそうになってるだろ? 君達こそ、侘びも無しに帰れると思うなよ」
生徒Aの使い魔は、数秒考えた後、
「……判った、すまない。ここは私が謝るから退いてくれないか?」
片膝を付き頭を下げる。
「うん、それで良いよ。さあ香織ちゃん、主殿、移動しようか」
でも……子供相手に大人げなかったかな……
~あまりの突然の出来事だったせいか、この、やり取りを見ていた生徒たちは殆どいなかった。~
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リリス視点
ビックリしたなぁ、もしかして私の呼び出した使い魔さん達、強いのかな……
私を虐めに来た二人、物凄く脅えていたもんね。
ランディさんにガルさんか……恐いほど頼もしい……ふふっ……香織さんって言ってたよね、お姉さんも優しそう……なんか楽しくなりそう。
~リリスは上機嫌で帰宅していたが、彼女は忘れていた。
リリスは何時もこの先で、泥玉投げの虐めに合っている事を……~




