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46#不幸な少女リリス

此処は、人間族、魔人族、獣人族、亜人族の種族が生息している世界『ディバイデット』


この世界では、それぞれの種族での力の差は殆んどない。


強いて言えば、人間族は百人に一人の割合で、強力な魔法使いが生まれる事。


魔人族は全員が魔法を使えるのだが、生活の補助的なもので、攻撃魔法を使えるのは、千人に一人の割合だが、人間ほど強力な攻撃魔法は使えない。

後、魔族は、一定の年齢に成ると、使い魔を召喚して、共に過ごすと言う。


獣人族は魔法が使えない替わりに、力と反射速度と感覚が少しだけ優れている。


亜人族は、千人に一人の割合で、特異者が生まれる謎の多い種族である。


今回は魔人族が暮らしている世界の南西部にある『マクリード国』から、その一画にある 『クロウス学校』の話になる。


そのクロウス学校は数え年、15歳~17歳までの三年制で、 世界の在り方、魔法の制御、使い魔の召喚後の生活の仕方、戦闘の初歩等を学ぶ所である。


その、一年の最大の山場、二年に上がるための必須項目が『使い魔召喚』である。


しかし、これは通過儀礼であって、使い魔が召喚出来ないと言う事は、今まで一度も無い事であった。


そう……一年前迄は……



一年前 二年生になる為の進級試験『使い魔召喚』に初めて失敗をした子の名前は『リリステル』。

周りからは、『落ちこぼれリリス』『駄目っ子リリス』『人間族のリリス』『捨て子のリリス』と言う不名誉なあだ名が多数存在した。


その、リリステルこと、リリスは一つ年下のクラスメイトから虐めを受けていた。


その虐めの種類はか多種多様で、『無視』『中傷』『体罰』その他様々であった。


彼女は、クラスメイトより、一つ年上のはずなのに、成績はクラスで最下位、先生達は今年も進級出来ないだろうと予想……いや核心していた。


巷の噂では、二年連続の落第は退学になると、噂まで囁かれていた。





そんなリリスは、今日も虐められていた。


その虐めは、加害者が飽きるまで続けられていた。

今回も、泥玉を沢山浴び続けたリリス……逃げようが複数で逃げ道を塞がれ、泣いても、泥玉の攻撃は全く減らない。

直ぐにリリスの服を泥一色に変えていった。




リリスはグスグス泣きながら、小川で衣服を洗っていた。

しかし、色々と不器用なリリスは、泥を綺麗に洗い流す事も出来ず、濡れた服を乾かす事も出来ない。


結局、みすぼらしい格好のまま、家に帰宅するのであった。


「ただいま…………」


「リリスお帰り……あら、どうしたの? その姿?」


「うん……近くてスキップしながら歩いていたら水溜まりに転んじゃったの……ごめんねお母さん」


「私はいいけど、最近ちょくちょく転んでないかい? まさか、虐められたりしてないわよね?」


リリスは少し焦り気味に答える。

「ううん、そんな事無いよ。みんなわたしの事、先輩って気を使ってくれるの」


怪訝そうな表情を浮かべるリリスの母親だが

「そう、それならいいのだけど……」

と、言うにとどまった。


リリスの身内は母親1人だけである。

父親とその使い魔と母親の使い魔は、リリスが生まれた頃に死んでしまったらしい。


そんな、母親に心配などさせたくない。



この家は、かなり貧乏である……

それもその筈、これといった特技もない上に使い魔のいない彼女には、良い働き口など無い。


親子共々容姿は良い様なので、人間族で、人口の多い都市部なら、特殊な需要は有っただろう。


しかし、ここは人間族ほど、容姿に拘らない魔人族

、彼女に歩合の良い仕事は無い。

…… いつもみすぼらしい姿で、質素な食事をしている。


だが、一人だけ何かと理由を付けては、食べ物を持ってきてくれる……若いおじさんがいる……


もし、その親切な人がいなければ……一日に一食といった食事は、現実の物になっていただろう。




お母さんが珍しく、学校の話をしてきた。

「リリス明日は使い魔の召喚試験でしょ? しっかり精を付けて頑張ってね。夕御飯は豪勢にしたわよ」


「えっ? 豪勢?」


見ると、普段からはあり得ないほどの量の鶏肉料理が並んでいた。


「お母さん、まさか……」


そう、お母さんは家にいた最後の鶏を私の為に使ってしまったのだ……


「いいのよ、鶏はまた買えば良いの……リリスは明日の為に力を付けてちょうだい」


涙が出てくる……そんな余裕がとても無い事は、私でもわかる。

わたしは目に涙を溜めながら、鶏肉料理を頬張った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


時は夜中……


わたしはまだ眠れずにいた……お母さん、明日は私、ぜっっったいに使い魔を出して見せるからね。


そして……学校を卒業したら……わたしの使い魔と一緒にたくさん働いて、必ず楽をさせて上げるからね……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


翌朝


わたしは気合を入れて、学校に駆け足で学校に向かう、

幸い、わたしの家から学校までの距離は3kmと短い、15分も走れば学校が見えてくる。


学校に着く前に、わたしは急に足を取られて転んでしまう。

「あ~あ、鈍くせーな……そんなんで今日の試験合格出来るのか?」


話し掛けてきたのは、クラスメイトの一人だった。


足を引っかけてよく言う……でも反論は出来ない……言い返すと三倍になって返ってくるから。


気を取り直し、部屋履きにかえようとすると、部屋履きの中には、沢山の虫達が蠢いている……


私は必死になって、虫達を取り払り部屋履きにはきかえる


あちらこちらからひやかしの声が多数聞こえる……

「クスクス 汚な~い」とか……


でも、今日はまだましな方だ、やはり今日の最終試験を控えているからだろうか……


試験は午前中丸々時間をかけて、行われる。

その後、直ぐに解散となり、十日ほど学校には行かず、使い魔と交流したのち、二年になる日程である。



去年はわたし一人だけ使い魔を出せないで、みんなが喜んでいる中、トボトボと帰ったものだった。


教師のアメリア先生が、使い魔召喚用魔方陣のある部屋に、案内する。


途中、去年のクラスメイトとすれ違った。


「おい、リリス、知ってるか? 今回も使い魔召喚出来なかったら、退学だって先生達が言ってたぜ、精々頑張んな」


「ねぇ、いくら頑張っても駄目な者は駄目なんだから来月からの仕事を探してあげたら」


「リリスに仕事なんて、出来るわけ無いだろ」


「あはははっ 俺、奴隷としてなら使ってやってもいいぜ。勿論服はきせないけどなぁ」


と、散々言うだけ言って消えていった。

当然クラスメイトが庇う筈もなく、

「奴隷ならお似合いかもね~」

「私だったら1日中テーブルにするぅ」

とか、追い討ちをかける。


私は気にしないつもりでも、色々想像してしまってカタカタと震えてしまう。



私の学年は六十一人と今年は多目で、一クラス二十人からなる。

でも、私のクラスだけ二十一人で、その端数すら、いじめのネタになっている。


例えば、早くいなくなってくれれば、二十人ちょうど、でぴったりだ、とか、


先生も、有力な大人の子供達が数名いるので、見て見ぬふりだ。

先生によっては、虐めを手助けしてる節がある。


きっと、親に何か言っても事態は悪くなるだけだろう。


震えが止まらない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



みんな、次々に使い魔を召喚して、隣に居させている。


当然と言えば当然だが、今のところ、五十人中五十一人が、召喚に成功している。


五十一人目は、虐めをを率先して行っている中の一人『アンジャイ』彼は体長3mもの使い魔を呼び出して得意気だ。

「オレってスゲー」

と辺りに自慢して廻っている。


大体は、私たちと同じ姿なんだけど、全身金属で出来た使い魔、馬やライオンに翼が生えた使い魔もいる。


去年に、比べて今年は凄いかもしれない。



そして遂に私の番が来た……

私は魔方陣の前に立つ……


私はもう、失敗出来ない……

失敗すると、もう学生でいられないかもしれない……

働く力も未だない……


家は貧しいから私のいる場所が無くなってしまう……

早くも涙が溢れて来た……

後ろから野次が聞こえてくるが、緊張し過ぎて何を言ってるのかも理解出来ない……



私は願う……

来て、私の使い魔、お願い……

お願い、もし来てくれたら命令とかしないから……

ずっと一緒の友達になって……

そう、ずっっと一緒の親友になろうよ……

だからお願い、出て来て私の使い魔……

お願いします…………


魔方陣が淡く光りはじめた……



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