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35#名も無き虎

第1章 ラストボス です。


◇とある密林◇


名も無き虎は、歓喜にうち震えていた。


あんなに欲しかった食糧が、食糧達 自らやって来たのだった。


初めは自分の体の大きさに、驚いた様だが、直ぐに唸りをあげ、襲ってきた。


余りに嬉しいので、攻撃を受けてあげよう。


しかし食糧達の攻撃は 皮はおろか、体毛さえ、切ることが出来ない。


更に、感謝の気持ちを込めて軽く撫でる……


「グボウッ!」

おかしな悲鳴をあげて ふたつにちぎれてしまった。


(もろ)いたぬ、でも心地よいたぬ」


「うわぁ 虎の化け物が喋ったぁ!」

今度は、一斉に逃げ出す食糧達……


「今度は、追いかけっこたぬか? 逃がさないたぬよ」


名も無き虎は、悦び勇んで逃げ足の速い人間から襲っていく……


ドシュッ ザンッ! ズバン!


「楽しいたぬ 楽しいたぬよ」


人間達は4分の3が生き絶えたところで、あきらめ、泣く者、命乞いをする者に別れた。


「もう、追いかけっこは終わりたぬか? では、食事の時間たぬ」


人間相手に美味しそうに食事を始める名も無き虎……


この隙に逃げ出した者達もいたが、全て名も無き虎の牙か爪の餌食となった。


こうして、 ランディ一行を狙う 最大勢力の盗賊団は恐怖の余り気絶している2人を残して全滅した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


時は少し戻り ランディ一行……


シラネの町を出発して、5時間ほど経過した頃、

2手に別れた盗賊団が襲って来た。



何故か余裕寂々の村長さんが 「愚かな盗賊たちよ、真さん、ブライアンさん 殺っておしまいなさい」


おーい 村長さん 時代劇の視すぎじゃないですか?

それに、ブライアン達はこの人数の人間相手に戦えるの?


まあ、手加減抜きなら楽勝だろうけど……


「ここは、俺と香織ちゃんに任せな! 香織ちゃん、ファイヤーボールのスクロールだ」


「わかったわ」

香織ちゃんは自分のポケットから A7サイズの手帳を出す、その手帳から、紙を一枚ちぎり、ガルと同時に呪文を唱える。


「「大気中の酸素よ我が魔力と交じり合い爆炎の刃と化せ……ファイヤーボール」」


それぞれ2手に別れた盗賊団のど真ん中に 『ファイヤーボール』は炸裂した。


見た限り生存者はかなりいるようだが、ほぼ全員虫の息だった。


動ける者達は、仲間を見棄てて逃げていった……


村長さんとマーニャちゃんはかなり驚いているようだ。


「ちょっと ちょっと 香織さん 今の何? 魔法みたいなの 使ったでしょ? その紙で魔法を使うの? 私にも出来る? ねぇ ねぇ」


香織ちゃんが ガルの方を見て困っているので、ガルが 苦笑いで答える。


「マーニャちゃんでも使えると思うよ、ぱっと見、使えないと思われるのは、ブライアンくらいかな……あっ里美ちゃんも無理そうだな……」


マーニャが質問する。

「ガルさん なんで、わかるんですかぁ?」


「簡単に言うと、戦士と僧侶は使えないんだ。

だから、それ以外は使えるってことだな……」


「ふぅん…… 私も欲しい! ねっ お金はいっぱいあるし 売って、売って、頂戴」


「最後さらりと爆弾発言だけど、物凄く稀少なんだよ……ダメダメ」


「う~~ ガルさんのケチんぼ、 どう見たって、2冊で100円の手帳じゃないですか?」


「いやいや 『ダ◯ソー』で、3冊105円だよっ……てここは日本じゃないんだ、紙自体貴重だし、インクも魔力がこもってる……しかも、誰にでも作れる訳じゃない。高レベルの魔法使いが必要なんだよ」


「う~~~~ じゃ買うといくらなんですか?」


「ざっと、1枚30Gだよ 分かりやすく言うと30万ドラルだ」


「30万……た、高い……」


「まぁ村に付いたら色々見せるよ」


「はぁい ブツブツ……」


ガルとマーニャちゃんの会話は 終わったようだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


丸1日 が過ぎ 楽しく帰りの旅を続ける ランディ一行。


同じく、馬車に乗った 数人が近づいて来るのが見えた。


村長は「珍しいのう、この先は、稼ぎにならない迷宮や森しか無いのにのう……まさかうちの村に用でもあるのか?」



暫く時間が経過し、馬車は会話が出来るまでに近づいていた。



「こんにちはぁ」


村長さんは笑顔で

「こんにちは、どんな用でこっちに着とるんじゃ?」


パーティのリーダーらしき男、40代前半くらいか……その男が笑顔で、「実は、この先の地下迷宮で、一攫千金を得た冒険者達がいまして、オレたちは、その残りでも無いかと、村まで行くところなんです。おじいちゃん達はー?」


「うちらは、その村のもんじゃ~。宝物、残っておるといいなぁー」


等、気さくな会話が繰り広げられている。


僕はガルに話しかける。

「ガル、わかるか?」


「ああ、多分 黒だ…… 念のため確認するか……ランディ、いけるな?」


「モチロン! 第3レベル呪文……ディテクトイービル」

「…………馬車の先に2人、中に6人、敵対反応あり。ガルの読み通りだな……」


今朝はガルの提案で、2回分覚えたからな……

問題は、始末の仕方だよなぁ この和やかな雰囲気をぶち壊して不意打ちなんて、僕はやりたくない。


一番は僕らの強さを見せつけて、円満に逃げ帰って貰うのが僕としてはいいんだけどなぁ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



結局と言うか、やはりと言うか、冒険者たちと合流して、村を目指す事になった。


道中 森の間を突き抜けるような道になった。

一度来たからわかる……僕が盗賊だったら、襲うポイントは此処だ、もしかして、盗賊団と結託していたら面倒かもしれない……


案の定、休みやすい(襲われやすい)ポイントで、休憩と食事を誘われた。



よしっ 僕ならここだっ 警戒を怠らないようにするぞ。


おお、なんと、食事全員分 冒険者達が出してくれましたよ、下調べ バッチリで、食べたらお腹くだしそうです。

念のためお節介をしましょう。


僕は 即席で作った食卓の前に移動した。


「豪勢な食事ありがとうございます。それでは 大いなる神々が与えて下さった、食物に感謝のお祈りをさせて頂きます」

超小声で「第1レベル呪文……ピュリファイフードアンドウォーター」


よしよし、これで毒を盛られても、大丈夫っと……

「頂きます」


村長以下村人数名は全く疑っていない。

冒険者の一人が 隠しきれずゲスなわらいを浮かべてますよ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


食事を終わらせた辺りから、冒険者達が妙にそわそわしだしてきた。


ん?そろそろ奇襲の時間ですか?

そわそわ具合からして、『毒はまだ、効かないのかなぁ』とか『盗賊団の奇襲はまだかなぁ』ってところか……


なんか僕も楽しみになってきた……ソワソワ。


それから少したち、茂みの奥から人の気配を察知した、冒険者や真達も、少し遅れて気が付く。


「なんか……茂みの奥から 何か来るみたいです……」


僕も頷きながら「真、ブライアン、警戒してね」

僕は冒険者を警戒しないといけないから……


ガサガサッ!


茂みの中から出てきたのは、涙、鼻水、涎で濡れまくった 男2人組だった。


「た、助けてくれぇ」

「虎の化け物に喰われるぅ」


確かに尋常じゃない、気配を探るのが苦手な奴でもわかるほどだ……


猛スピードでこちらに……来る!


やって来たのは全長2mを超えた 虎だった。


「危なかったたぬ、居眠りしてたら逃がしてしまう所だったたぬ……」


あまりの巨躯(きょく)に驚く冒険者たち。

僕は虎が喋る事に驚く、しかもその語尾に。

「た、たぬ?」


名も無き虎もこちらに気付く「たぬ? …… おぉ 運が良いたぬ、2人を追いかけていたら……いち、にい、さん、しい、…………20人近くも増えたぬよ」


村長 及び村人たちは、腰を抜かして、動けないでいる、


そして、僕は冒険者を警戒するのを忘れた。

いや、冒険者の存在自体を忘れた。


「お、おい!」


「ん、自分に話しかけているたぬか? めずらしいたぬな、なんたぬ?」


「ぷっ……たぬ、たぬ…… ぷっ、ぷぷっ……ぎゃぁはははははははははははははははははははっ げほっげほっ ちょっと笑わせ過ぎだろ? なあ 『たぬ吉』、お前今から『たぬ吉』な。お前、『メンタム』って言ってみろよ『メンタム』ほれっ」



突然人が変わったようなランディに皆驚く、


「な、なんたぬか この食糧は、『めんたぬ』くらい言えるたぬよ バカにするなたぬ」


ガルもやって来て大笑い

「ぶはははははははははっ この虎 最高だな!」


「虎じゃない、『たぬ吉』だよ」


「そっか、おい! たぬ吉!『田村 ゆ◯り』っていえるか?」


「うぬぬ…… この食糧も失礼たぬ、『たぬら ゆかり』ほら言えるたぬ」


「ぎゃぁははははは おいおい たぬ吉 『ゆかぽん』のファンに殺されんよ?」


「こ、この2匹はなんて、失礼たぬね 真の実力を見せつけて 命乞いをさせるたぬ」


ガルが短剣を抜き、「ほほう、真の実力を見せると? なら見せてもらおう」


「短い武器たぬな、そんなおもちゃ効かないたぬよ 」



ガルは何も言わず 適当(直径30cm)の幹を2本斬り倒し猿の腰掛けを作って座る……続いてランディも座る。



ガルの目がキラリとひかる。

「問題① 神仏や死者の霊に供える花はなんと言う?」


「たぬ!」


「はい、たぬ吉」


「たぬけ花」


「ブー! では、ランディ」


「はい、たむけ花」


「ピンポン! ピンポン!」


「くっ 卑怯たぬ ちゃんと 答えたたぬよ」


「問題② 一つ所に大勢の人が集まる事を?」


「たぬ!」


「はい、たぬ吉」


「たぬろする」


「ぷっ ブーー! ぷぷっ、ら、ランディ」


「はい、ふふっ たむろする」


「ピンポン! ピンポン!」


「おかしいたぬ ちゃんと答えたたぬ!」


「問題③ アルジェリア北東部にある都市遺跡『ティムガッド』の古代名は?」


「真の実力を見せるたぬよ」


「はい、たぬ吉」


「たぬガディ」


「ぷっ ぶはははははははは…… はぁはぁ もう正解で良いや、これからは たむ……たぬガディにしよう ピ、ピンポン!」


ランディが涙目で、たぬ吉にはなしかける。

「なぁたぬ吉、僕のペットにならないか?」


「たぬ?」


「待て、待て、ランディ あの心癒される 馬鹿っぷりは俺のペットに相応しい たぬ吉 俺を選べ」


「なんたぬと……」


「むっ たぬ吉、僕のペットになるなら カ◯リーメイト食べ放題だぞ、美味しいぞ」


「た、食べ放題たぬか?」


「くっランディ 卑怯な……」





今、この森の中の時間は ランディ、ガル、たぬ吉の 3人?だけで 構成されていた。




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