33#不穏な空気……
もう少し1章 つづきます。
とある 密林……
密林の中で一匹の巨大な名も無き虎が歩いていた。
「……こ、ここはどこたぬ?」
少し考えてみる……
「たしか自分は死んだはずたぬ」
いや、ならばこうして、歩いているはずはないか……
「自分は何者たぬ……」
考えても考えても解らない、思い出せない。
「腹が減ったたぬ……」
わかっていることは、自分が空腹であることだけ……
すると、遠くから自分と同じくらい大きな グリズリーベアがこちらに歩いているのを見つけた。
「とりあえず あいつを食べるたぬ」
グリズリーベアも虎の存在に気付く、自分の縄張りに浸入してきた虎に対し、2本足で立ち上がって威嚇する。
「ぐるる……ぐおぉぉぉ!」
「威嚇しても無駄たぬ」
グリズリーベアの先制攻撃、15cmもある頑丈な鋭い爪が、1トン近い重さで 炸裂する……
しかし、名も無き虎は10cm程ずれただけで、殆どダメージが無い……
「ふふ、かゆいたぬ、仕返したぬ」
名も無き虎も グリズリーベアと同じパターンで攻撃する……
名も無き虎の攻撃は 針金の様な体毛を突き破り グリズリーベアを2mほど 転がす。
「ふふ 強いたぬ 自分は強いたぬ」
それでも怯む事の無いグリズリーベアは、自分の体重を生かし 全力で突進してくる。
ゴルル……
「ふふ遅いたぬ、スローに見えるたぬ」
グリズリーベアの頭部めがけ、猫パンチ いや、虎パンチをお見舞いする。
ゴキリ!
なんとグリズリーベアの頭はありえない方向に折れ曲がり 命を落とした。
この時に自分は、絶対強者だと思い出した。
名も無き虎は、倒したグリズリーベアを食べている。
「不味いたぬ、この生き物は物凄く不味いたぬ。
もっと美味しい生き物が食べたいたぬ、そう……もっと小さく、弱く、悲鳴をあげながら逃げたり、小さい鉄屑を持って向かって来たり、座り込んで命乞いをしたり、そんな2本足で歩く生き物が食べたいたぬ……」
以前、たくさんの食べた生き物……あれをまた食べたいと思うのであった。
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地下迷宮攻略完了から10日余りたった シラネの町……
ランディ、真パーティは 村長以外数名をつれて 戦利品の換金を終わらせたところだった。
「ブライアン殿、本当に良いのですかな? 2割も戦利品を頂いて……」
「はい、みんなで話し合いをして決めたことです。それに、割りの良い換金所まで教えてもらって……」
沢山の財宝を手にした為、換金してそれを10等分にして、1人1割を分け前として、貰って 残りの2割を村に寄付すると言う形で収まった。
多少の誤差は出たが、均等に整理して1人約500万ドラルお金を手にした。
里美とマーニャは、戸惑う香織を引っ張って、主に下着関係を含めた貴族や豪族の通う店に買い物に出掛けていた。
ガルとランディは、別の世界でも使えるように、金の棒にお互い400万ドラル分、金の棒に変換していた。
村長達は、豪華な馬車、高級食材、様々な野菜の苗などを大量に買い込んでいた。
ブライアンは、ガルとランディの持っていたバックパック(便宜上ディメンションバックと名付けよう)
を売っていないか歩き回ったが、そんな常識はずれなマジックアイテムは王国に2つあれば良い方だと言われ、古の技術で現在は生産不可能な『アーティファクト』と呼ばれている代物だった。
そういえば、僕ら以外に便利に出せるところを見せいない気もする。
たしかにばれたら、商人や盗賊などが、挙って襲ってくるだろう。
襲ってくるといえば、僕らの約5000万ドラルの換金でちょっとした事件になっていて、見物客、換金所が用意した警備員で、混雑していた。
これだけ、有名になったら村を出た後が恐いな……
村長は警戒とかしないのかな、最近緩みきった顔しか見ていない。
バラバラになって買い物などをしていた 皆だったが、一段落して町1番の武具店を見に行ってみようと、ランディ・ガル・香織・ブライアン・ユリウス 、5人で 出掛けることになった。
武具店の中……
ガルが開口一番に話しかける
「最低でも、ランディとブライアンは武器を新調した方が良い。 出来ればマジックウエポンな」
「魔力のある剣ですね?」
「そうだ、地下迷宮の戦いで、ブライアンの剣と、ランディのメイスは完全に金属疲労をおこしてる、出来れば、自己修復機能とかあると便利だぞ、でも、あるかな~この世界でマジックアイテムすら未だ見てないからなぁ」
「魔法の武器って珍しいんですか?」
「まぁ世界によるな……」
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この店には 1000を超える武器があり、物凄い賑わいを見せている……
剣だけでも、『シャムシール』『エストック』『剣斧』『タルワール』『ククリ』『カットラス』『ソードブレイカー』
覚えきれない程 豊富に取り揃えてある。
商品の一覧に 一際目立つ剣を納めている、透明なケースを見つけた。
伝説の名剣『ランスロットの剣』
1本 80万ドラル
国賓の名工カジヤーダの作品、『名剣カジヤーダ』
1本 50万ドラル
聖剣の複製『聖剣キャリバン』廉価版
1本 70万ドラル
「ブライ、あの剣なんてどうかな? ガルさん どうでしょう?」
「うん、良いんじゃないか、俺じゃハッキリ解らないが、どちらも特別な力が籠ってるようだ」
「そうか、ガルさんが言うなら……」
ブライアンはユリウスに言われるまま、『名剣カジヤーダ』の方を買っていった。
ランディも 今のメイスの代わりになる武器を探す……
なかなか見つからないみだ……
装飾品などで飾ってある メイスはチラホラ見つかっているが、実用性のあるメイスは、剣と違い なかなか見つから無い様だ。
結果、この店で1番頑丈そうなメイスを、2万ドラルで購入した。
ここで、殆どの人間は気づくことが無かったが、ガルが、異様な行動を取った……
その行動とは……長さ2mの棍棒を買ってきて、店の出口で、小さなディメンションバックに、長さ2mの棍棒を、しまい込んだ
このガルの行動に疑問を感じたランディが、ガルに話しかけようとするが、ニタリと微笑むガルに口止めをされた様だ。
この後、パーティは豪華な食事を食べて、高級な宿で寝ていた。
2人を除いて…………
村長達の泊まっている宿は、出入口が、2名の警備員で護られている…… その、警備を掻い潜り、
2人の人間が、外に出る……
その人間とは ランディとガルだった。
「初日じゃ、ヤッパリ監視だけか……」
「でも、思ったより監視の目があるな」
「ああ、餌を撒いたから、襲ってくるのは、盗賊だけじゃないぞ」
「ヤッパリあの行動には、意味が有ったんだな……
しかし餌撒きとは、物好きだなぁガル……そんなに戦いたい?」
「ほら、俺、盗賊や物取りから金品かっぱらうのが大好きでさ、ついでに傭兵なんかも呼んでみたりして……」
「ほっほっほっ、お主も悪よの~」
「いいえランディ悪代官様こそ、香織ちゃんがいるのに、マーニャちゃんも狙っているのでは?」
「いやいや、マーニャはBcupだし、家族や仲間がいるから、お持ち帰りはしないよ」
「そうなの? 香織ちゃんは特別なんだ」
チラリとよそ見をするガル……
「まあ、あの可念盤だっけ? あれのせいで、俺も見過ごせない存在になった……」
「どういう事だ?」
不思議そうにガルに問いかけるランディ。
「あのまま、彼女を鍛えて行けば、ランディの第6レベルの呪文をストック出来る日が来る、そうなれば、俺達はもう少し無茶が出来る……」
「もしかして、第6レベルにレイズデットの上位呪文が有るのか?」
「そうだ、しかも、あの『スペルボックス』から出る呪文は劣化しない……ほぼ100%成功する……だから香織ちゃんを大切になっ…………うむ、これ以上監視の目は増えないみたいだ、宿に戻ろう」
「『宿に戻ろう』の言葉だけ、はっきりと聞こえたのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
再びガルはよそ見をする。
ガルのよそ見していた方向には、特殊能力"闇衣"を使った 香織が脂汗を流していた。
どうやら、特殊能力"闇衣"でも、ランディの目はごまかせる様だが、ガルには気付かれてしまった様だ。
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実はランディ達には、換金・買い物騒ぎ等で、いくつかの危険が生まれ、潜んでいた。
それは……
盗賊グループが、2つ
悪徳商人が、3チームの傭兵団を雇う事、
そこそこ強い、D級冒険者のパーティ。
そんな人間達に、狙われているのだった。
そして、名も無き虎……
不穏な空気は確実にランディ達のパーティに忍び寄っていた。




