157# 迷宮探索~香織、マーニャ~
香織とマーニャは、モブライアン、スリウス、ギャルロット、ミナシロ・キョチンホと、パーティを組んで、地下迷宮に潜った。
香織達は、スリウスから9階層にいる『コブリンソルジャー』と『スケルトンファイター』からドロップするアイテム『ゴブリンの耳』と『強骨』を探すと言われていた。
6階層にはゴブリン、7階層にはスケルトンがいるのだが、アイテム回収の効率がかなり悪いため、効率の良いとされる9階層を目指す。
既にパーティは6階層まで到達していた。
5階層入口のレイドモンスター、ガルガンスライム4体は、別のパーティに倒されていて、素通りする事が出来た。
「ラッキーだったな、モブライ。レイドボスをスルー出来た」
「ああ、魔力も温存出来たし、カオリさんも思った以上にやる」
今進んでいる迷宮は、幅員が広いため、前衛3名、後衛3名で進んでいた。
「思った以上にやるって、どう見てもスリウスより上じゃん、超ヤバイ、モブライアン当たり引いちゃったよ」
香織は、前衛中央にいるモブライアンとの連携を除けば、一番活躍していた。
(私だって、それくらいの香織さんと同じ事出来るっての! でも今回は魔法士として来たから我慢我慢)
マーニャは出番を心待ちにしている。
7階層を目指して進んでいると、スケルトン5体と遭遇した。
~敵プロフィール~
スケルトン×5
HP 200*200*200*200*200
モンスターランク3
備考
弓・突き攻撃4分の1
剣撃半減
光魔法攻撃倍化
装備
棍棒
「スリ、ギャル、スイッチ」
モブライアンは、ロングソードからハンマーに持ち替えながら、ギャルロットとスリウスの位置を交換する指示を出した。
スケルトンは『斬る』『突く』の攻撃が通り難い。
よってメイスを持ったギャルロットが、前衛に替わった。
結果スケルトンは2、3回攻撃を当てれば倒すことが出来た。
そして香織も4回の攻撃でスケルトンを倒した。
「おおっ! ドロップアイテムが2つも出た」
驚くスリウスに、ギャルロットが話しかける。
「スリウス、超ヤバイじゃん。もう狩り場ここでいんじゃね?」
「まてまて、ギャル。なかなかスケルトンが出ないから、9階層を目指してるんじゃないか。それにゴブリンは7階層にしか出現しないから効率が悪い」
モブライアンはギャルロットにこの日、何度目かの説明をした。
結局、7階層に降りる階段を見つけるまで、スケルトンからドロップアイテムは出なかった。
7階層では、ジャイアントアント、キャリオンクローラー、コブリンが出現する階層だったが、防御の堅いジャイアントアントに、マーニャとミナシロが1回だけ魔法を使っただけで、無事にこの階層を突破した。
「思ったより、早く進んでるね」
「マーニャさん、この迷宮は定期的に内部構造が変わるんだけど、階段の位置と其を繋ぐ主回廊は変わらないんだ」
「ふぅん、たしか階段の位置は変わらないってのは聞いたね」
スリウスの説明に感心するマーニャ。
ミナシロがここに来て、初めて会話に参加する。
「問題はここからだ。次の8階層はガルガンスライムとコボルトキングだ、本気を出せば余裕で勝てるけど、MPをかなり消費する」
8階層で最初に出てきたのは、ガルガンスライム1体だ。
~敵プロフィール~
ガルガンスライム
HP 400
モンスターランク4
備考
物理攻撃半減
魔法攻撃倍化
「ラッキーだ、よしMPを温存するぞ」
巨大なスライムに攻撃を当てるには、スライムの射程内深く入り込む必要がある。
スライムが3本の触手で攻撃してくる。
「くっ」
モブライアンは触手の攻撃を受けたが、怯まず攻撃をたたみ込む。
ドシャ!
スリウスは触手を避けることに集中したせいか、攻撃が当たらない。
「あっ」
香織はギリギリ避けながら、攻撃を与えた。
ガルガンスライムとの幾度かの攻防で、待てなくなったマーニャがダガーを突き刺して止めを刺した。
「マーニャさん、もしかして肉弾戦も行けるのかな?」
「うーん、技術は微妙だけど、ステータスは香織さんより高いから」
スリウスの、質問に正直に答えるマーニャ。
マーニャは、オリジナルの火魔法と、自分のレベルを言わなければ、ある程度の力は出して良いと思っていた。
「ミナシロ、もしかしたらお前より凄いかもな、よし、これらなら『魔の8階層』も、温存して切り抜けられる。行くぞ、スリウス、ギャル」
「わかったわ、言っとくケド、私の回復(小)を20回使ったら、終わりだから」
ギャルロットの回復スキルは、レベル1で使用するなら、34回使用可能だ。
なので、帰りの分を想定して伝えていた。
そして、次は2体のコボルトキングに出会ってしまう。
「あっちゃ、よりによってキング2体かよ」
「9階層のモンスターより面倒だからな」
スリウスとモブライアンは愚痴る。
マーニャと香織抜きでも勝てる相手だが、確実に消耗してしまう。
それは、キングシリーズの使うスキルはやっかいだからだ。
だが、所詮コボルトなので、数や力業で押しきれば、わりと簡単に倒せる。
~敵プロフィール~
ゾンビナイト×2
HP 400*400
モンスターランク 4
スキル
……二連撃、高速剣、真空波
……壁
……防御膜
……闇撃LV1
装備
……上質な胸当て、上質な腰当て、上質な腕当て、上質な盾
……上質な剣
「ねぇ、1体は私と香織さんで始末を付けるわ。あとヨロシク。火球LV2」
本来、LV2の攻撃魔法は、コボルトキングを一撃で仕留められる威力を持っているが、それをまともに受けるキングシリーズではない。
防御動作をして、火球のダメージを半減させた。
次は香織の攻撃で、見事に命中する。
「ギグギゴ……」
コボルトは魔法防御のスキルを使ったらようで、赤色の壁がコボルトの前に浮き上がる。
「やっぱり、感情とか臨機応変とかないんだね。後手なのに、魔法防御を使ったよ」
第2ラウンドは、マーニャと香織がダガーで攻撃してコボルトキングは消滅して、魔石が出現した。
マーニャと香織は、モブライアン達の戦いを見る。
コボルトは剣技スキルの二連撃を使用し、その内の1回が命中して、モブライアンがダメージを受ける。
その後、囲むようにして、3人で袋叩きにする。
「ギゲギゴ」
コボルトが使ったスキルは闇魔法の闇撃LV1だった。
闇撃はギャルロットに命中するが、上手くダメージを半減させていた。
「ここで、倒すぞ!」
「おお!」
「リョーカイ」
モブライラン達が気合いを入れたのは、次のコボルトの攻撃は剣技スキルレベル3の『真空波』で、敵1グループに回避困難な攻撃を発動する。
1回や2回の攻撃で死ぬ事は絶対にないが、今後の事を考えると、戦闘終了後には回復しなければならないのは常識だった。
「はぁぁっ!」
「ふんっっ」
「トリャッ」
スリウス、モブライアン、ギャルロットの順で攻撃したが、ギャルロットの攻撃は空振りしてしまった。
モブライアンの一撃がとどめとなり、霧散したからだ。
コボルトキングが消えた場所には、大量の極小サイズの魔石が落ち、さらにドロップアイテム『コボルトスパイス』が10個落ちていた。
「よし!」
「やった」
「超ラッキーじゃん」
「スリ、モブ、ギャル、速やかに回収して、下を目指すよ」
ミナシロの言葉に、冷静になった3人は急いで魔石をかき集め、下の階層目指して進行した。
「思ったより順調だ。マーニャさんはまだまだMPに余裕はある?」
「えっ? まだ一回しか使ってないよ。撃ちたりないって」
「ははっ、頼もしいなマーニャさんは。でも、出来るだけ9階層のために温存してくれ。それまではオイラが頑張るから……あっ」
スリウスの言葉が止まった理由は、視界の先に3体の影を見つけたからだ。
はっきりとは確認できていないが、大きさ1mそこそこの人影はこの階層では一種類しかない。
流石にこの8階層で人間の子供が彷徨くことなんて、あり得ないからだ。
「3体……恐らく、コボルトキング」
「あっちゃぁ、スリウスが変なフラグ立てるから」
「僕が1体やろう」
そこでマーニャが提案する。
「ねぇみんな、スキルを使うのは3ラウンド目からにしない? こっからは香織さんが本気だすって」
「ちょっ、マーニャ!?」
慌てる香織に、平常運転のマーニャ。
「平気、平気、得意の投げ技を2回当てるだけでいいんだから。あとは任せてっ」
「う、ん、それなら……」
「って事で、みんなは右側の1体をお願い」
パーティは広がった場所で、3体のコボルトキングと戦う事となった。
「よし、3体しかいない。ダッシュ!」
マーニャはコボルトキングの側面に向かって走り出す。
「ふっ」
その瞬間、香織の投げたダガーがコボルトキングの胸に吸い込れる。
「火球レベル1、いけっ」
火魔法を受けたコボルトキングは、消滅した。
「なっ!」
「はっ?」
「えっ?」
「マジで!?」
4人は驚きつつも、右側のゴブリンキングに向かって集中攻撃に入った。
2ラウンド目に入り、モブライアンの方に攻撃していたゴブリンキングを、またもダガーをど真ん中に命中させる。
「さすがっ香織さん。火球LV1、そりゃ」
またしても、ゴブリンキングは香織、マーニャのコンボで消滅する。
「連続クリティカル!?」
「それにしたって、2発で倒れるのか? LV1
の魔法だぜ?」
「超不思議なんですけど?」
「……そうか、やっ!」
香織とマーニャの攻撃を見ながらも、なんとかコボルトキングを闇撃を使う前にたおした。
3体合わせて、100個を余裕で超える魔石を広い集めながら、ミナシロがコボルトキングを2ラウンドで倒せたネタばらしをした。
「まず、マーニャさんが動いてコボルトキングの視線をマーニャさん向ける。そのタイミングで、香織さんがダガーを投げてクリティカルヒットを誘発させる。クリティカルヒットにぐらついた敵に、魔法攻撃。すると相手は防御のタイミングを失ってまともにダメージを受ける。そうだろ?」
「うん、そうだよ」
(まあ、最初の牽制がなくても、香織さんなら百発百でクリティカル出すと思うけど)
「でもでも、2体目の相手は『壁』を使った後よ、いくらなんでも……」
「ギャルさん、それで生き残っても3ラウンド目はまず先制攻撃ができるから、そこで止めを刺せるの。完璧でしょ?」
「ま、まあMPの温存が出来たから、良しとしようじゃないか。なっ、ほら9階層は目の前だ」
9階層は、『スケルトンファイター』『ゴブリンソルジャー』『ラージトレント』が出現するエリア。
目的のアイテムをドロップするモンスターは二種類もいる。
スケルトンファイターが出現するとスリウスとモブライアンの牽制後、ミナシロが氷礫のLV2を使って瞬殺し、ラージトレントは弱点が火魔法なので、マーニャが無双する一方的な展開になった。
ゴブリンソルジャー相手には、攻撃魔法を温存して、スリウスとモブライアンな2名の『二連撃』で早めに倒す。
そして、ギャルロットが回復魔法10回程度使ったあたりで、ドロップアイテムの目標数が集まった。
「凄い、今日だけでなんと集まったぞ」
「ヤバイ、ヤバイ。超ヤバイ」
「まだ、若干余力があるから、10階層から帰らないか?」
「この先は、ガルガンチュアキャリオンクローラー3体だ」
「そう、略してGCCね。アタシ超冴えてる!?」
モブライアン、ギャルロット、スリウス、ミナシロ、ギャルロットの順で喋りまくる。
「ロッテは冴えてるね。でね、10階層のレイドモンスターは、他はゴブリンエンペラー2体なんだ。どう考えても、こっちが難易度低いから、大概はこっちのレイドモンスターを倒して10階層に降りる」
「つまり、10階層のレイドモンスターは、既に倒されている可能性があるって事なの」
このミナシロとギャルロットの説明を聞いて、マーニャはガルガンチュアキャリオンクローラーと対戦出来ますようにと祈った。
しかし、マーニャの祈りは通じなかった。
よし、早速『帰還石』で帰ろう。
そうして、モブライアンのパーティは都市に帰り、無事に報酬を受け取った。
香織とマーニャは、Fランククエスト2つと、Gランククエスト1つをクリアして、7得点を手に入れて、報酬は六等分を超える金貨3枚を貰った。
「良いの? こんなに貰って」
香織が思った以上の報酬を貰って、再確認している。
ギャルロットが前に出てきて。
「良いの、良いの。クエストを失敗する事を考えれば、これでも超ラッキーなんだから、行こっシン」
「えっシン!?」
「そう言えば、ギャルロットさんとミナシロさんだけはお互いの呼び方が違いますね」
すると、ギャルロットは少し照れたようにして話す。
「へへっ、アタシとシンは幼馴染みなんだ。小さい時は『シロちゃん』って呼ばれていたんだけど、嫌だったらしく『シン』と呼べって言ってたのよ。そんな昔の名残で今も『シン』なんだ。またね、マーニャにカオリ」
「また、暇になったら誘ってくれ。オイラたちは、3日に1回は必ずここで飯を食ってるから」
去り行くパーティを見送りながらマーニャはブツブツと呟く。
「シン……シン……真! まこと、まこと、真だ」
「あっ……ちゃんと、名前の繋がりがあったんだ。ますますこの世界は不思議だね、マーニャ」
「まあ、お兄ちゃんのリュートリアル補正より、ましだけどねっ、香織さん。さっお兄ちゃんの居るとこまで帰ろっ」
こうして、香織とマーニャの『ランディがいない1日』か終わった。
次回は12月31日の予定です。




